住職のひとりごと

広島県福山市神辺町にある備後國分寺から配信する
住職のひとりごと
幅広く仏教について考える

倍音読経 天界の音楽を聴こう

2007年01月13日 15時47分26秒 | 仏教に関する様々なお話
今日午前中にお寺の本堂で法事があり、法事の後の法話で、読経についてお話した。お経は、一人で唱えるときも多人数で唱えるときも一つのお経を唱えているという気持ちで、周りの声に耳を澄まし、声を合わせて唱えるようになどと話をした。

読経の話をするときには必ず高野山の専修学院での体験を話している。もう20年ばかりの前のことではあるが、高野山の僧侶養成所である専修学院に一年間在籍していた。全寮制で80人からの様々な年齢の得度しただけの僧侶が入学し、白衣の上に黒衣を着て白袈裟を掛けた姿で、朝は本堂、夕方には持仏堂の広間で勤行を行う。

4月に入寮して二三ヶ月の頃、夕勤を広間で40人40人が向かい合わせて坐り、習いたての経を読んでいると、何やら女の人の声のようにとても高い声が聞こえてきた。何事かと思って目を上げても何も変わったことはない。すると暫くして銅鑼や笛や太鼓の音が聞こえてきた。何ともそれが心地よい。まるで天界の音楽を奏でているような昂揚した心地がした。

小一時間のお勤めが終わると季候が良いことはあったが、顔が火照っているような感じがする上に身体の疲れがスッキリ取れたように身が軽い。そんな不思議な感覚を味わった。周りの何人かもそんな法悦を味わったかのようにいい顔でいる。聞いてみると同じように不思議な音を聞いたと言っていた。

これは決して誰かが素っ頓狂に馬鹿高い声を出したわけではない。ご承知のように音は波動であり、低い男の人だけの読経であっても、その声の音がきれいに合うとその波が共振して突如として倍音というそれまでの波形を突き抜けた波となることがある。それは誠に高い音として聞こえては来るけれども決して聞きにくい音ではなくて、きれいな清音である。

昔東京にいる頃、五反田でデバインヨガクラブという教室を開いていた成瀬雅春氏にヨガを習っていたことがある。成瀬氏は空中浮遊で有名だが、気功やイスラムの修行者であるスーフィーなどの研究もされ、ここで言う倍音についてもかなりの研鑽を重ねられ、倍音声明と銘打って、講習会や体験会をされていた。

あるとき神奈川県の田谷の洞窟での体験会に参加したことがある。その洞窟は、田谷山瑜伽(ゆが)洞といい、横浜市栄区田谷町に位置する真言宗定泉寺境内にある。東京近郊の人工洞窟としては比べるもの無い規模と内容を誇り洞窟内の公開されている順路は500メートル弱もある。

そこで何人くらいの参加者がいたであろうか、思い思いに坐り、低く母音を唱えていく。ウー、オー、アー、エー、イー、と順に唱えていく。ウーと唱えると、肛門の少し前の会陰部が振動する。オーと唱えると、臍の少し下丹田が振動する。アーと唱えると心臓が、エーと唱えると甲状腺が、そしてイーと唱えると頭頂が振動する。

私たちのホルモンの分泌する主要な箇所がこうして母音を低く唱えることで活性する。それを大勢ですると音が共振して倍音が深くそれらの箇所、つまりチャクラとインドで言われるエネルギー帯が活発化して誠に心地よく、全身がリフレッシュする。

その田谷の洞窟での体験会では、誠に素晴らしい音の世界、まさに天界の音楽を聴く不思議を体験することができた。仏教音楽である声明も、おそらく、一様に経文の母音を長く抑揚を付けて唱えるところに、この倍音声明と同じ音の不思議を体験させ、唱える者も聞く者も共に仏の世界に誘うことがその深秘としてあるのではないかと思われる。皆さんも是非体験して欲しい。

<定泉寺について>
古墳時代の横穴墓あるいは横穴住居跡だったものを、鎌倉時代、修行僧たちが真言密教の道場としてノミ1本で迷路のように掘り広げたものだという。その後崩落荒廃していたが江戸後期、天保年間に洞窟を整備して数々の彫刻を施し、四国や西国、板東などの観音霊場を彫刻した地底伽藍が完成。

横浜市栄区田谷町1501 tel 045-851-2392 
拝観時間9:00~16:30 拝観料 大人400円。中、高生200円。小学生 100円。所要時間は約30分。JR大船駅西口・観音側からバス(戸塚・バスセンター行き)で「洞窟・ラドン温泉前」下車。

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コメント (2)
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