活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

印刷とアートの世界-遠藤享さん①

2011-02-20 16:35:30 | 活版印刷のふるさと紀行
 昨晩、印刷博物館で神田川大曲塾の第21回印刷文化研究会がありました。
 定刻の1時間以上前に講師の遠藤享(すすむ)さんが自らハンドルをにぎってオフセットリソグラフなど作品資料のかずかずをのせて会場に来ていただけました。

 ご承知の方が多いのであらためてご紹介するまでもありませんが、遠藤さんはグラフィックデザイナーであり、コンピュータを駆使したデジタル版画家として、日本を代表するアーティストであります。ドイツ、ユーゴ、ブルガリア、フィンランドなど世界各国で受賞され、その作品が収蔵されているのは大英博物館、サンパウロ美術館をはじめ、インド、ノルウェー、ロシアなどであり、国内では文化庁、京都国立美術館はじめ各地の県立美術館で数は数えきれません。1999年には紫綬褒章も受けておられます。

 その遠藤さんが最初に私たちに示してくださったのは、武蔵美や桑沢時代に自分で写真を撮り、自分で多重露光をさせたり、大変な時間と労力をかけて制作された作品でした。おそらく版画アートと印刷は切り離せない、作品上でのイメージ追求には印刷の知識、製版技術が欠かせないという思いが若い遠藤さんを駆り立てたのでしょう。「私にとって、アナログが出発点になったし、基本になっていることはよかったと思う」と述懐されたのも当時を想起してのこととおもわれました。

 また、よく知られ世界各国から注目されている自然の茂みを原テーマにした一連のオフセットリソ作品が東京生まれでありながら、山梨や北海道で育った環境がおのずと森や林に自分が惹きこまれ、おのずとエコの作品につながったと笑っておられました。
 どっこい、遠藤さんはカメラを担いで素材探しにかけまわり、撮影して、ご自分でコンピュータで処理加工されていることは百も承知です。「コンピュータに強い息子がいてしあわせでした」その辺のさりげない話もいかにもお人柄そのままで聞いていてうれしくなりました。

 
コメント
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