活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

430年前の古書と天正遣欧少年使節の話

2011-04-18 11:35:30 | 活版印刷のふるさと紀行
 3回ほど前に神田川大曲塾の講演会として小佐々 学さんの『中浦ジュリアンと
私』をご案内したところ、当日、会場の印刷博物館に足を運んで下さった方がいら
っしゃったのは感激でした。ありがとうございました。

 小佐々さんのお話の中で、中浦ジュリアンたち天正遣欧少年使節ゆかりの
古書が紹介されました。どういう「ゆかり」なのかといいますと、スペイン
の南東部に「ムルシア」という市があります。420年前、ローマへ行く途
中、使節たちはこの町に1ヶ月ほど滞在したのですが、そのとき、彼らが恐
らく自習に使ったであろう本だということでした。

 小佐々さんに寄贈されたこの本はイエズス会聖エステバン学院の図書館に
保存されていたもので、ラテン語の書名を日本語に直すと『旧約・新約聖書
語彙辞典』というタイトルになるでしょうか。
 1581年アントワープのプランタン印刷所で印刷されたもので、彼らが手に
したのが1585年ですから発行4年後になる勘定です。
 新・旧いずれでも聖書に出てくることばなら容易に索引できるわけですか
ら滞在中にジュリアンたちが利用したことは十分想像できます。

 それにしても「さぞかし組版が大変だったろう」と思われる本で、ラテン
語の単一のタイプフェースがびっしりと整然と並んでいる紙面と膨大なペー
ジ数には思わず目を奪われました。グーテンベルクの活版印刷の発明から120
年後に、これほど精緻な印刷が出来たのかと驚いたしだいです。写真は講演
する小佐々 学さん。



 
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする