今回は、荻原規子さんの最新作!
『風神秘抄』(ふうじんひしょう)のご紹介です☆
荻原規子さんの作品では、「西の善き魔女」シリーズや、今月ご紹介した「勾玉シリーズ三部作」などが有名ですね♪
私は特に、古代の日本を舞台にした「勾玉シリーズ」の中の一冊、『空色勾玉』という本が大のお気に入りで、影響されて日本の神さまについてあれこれと調べたりしていました☆
富士山に祭られている、木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ)なんて、名前だけでいいなぁ~と感動してしまったりして。
「勾玉シリーズ」が三部作で完結。
日本を舞台にしたファンタジーも、もうこれで読めないのかと思いきや、今回のこの『風神秘抄』、勾玉こそ登場しませんが、なんと純然たる勾玉シリーズの直系!
そう、勾玉シリーズがまた読める♪
時代は平安時代の末期。
いま大河ドラマで話題の源義経が、幼くして鞍馬寺に預けられるきっかけとなった、「平治の乱」の真っ最中!!
源氏方として、兄と共に戦いに身を投じた十六歳の草十郎は、身が軽く、腕は立つものの、人目をさけた場所で、母の形見の笛を吹く、どこか孤独な少年。
自分がどこか他人と違うことを感じつつも、初めて自分を認めてくれた源氏の武将、源義平のために、自らの命を投げ出して戦います。
しかし…
笛を吹いている時だけ、自分のありのままでいられる草十郎。
彼の笛の音は、鳥や獣たちを呼び集め、自然の木々や草花たちのリズムを感じ取り、風に乗って流れていく。
そして、ついには、天の門が開き、天界の華が舞い落ちる~♪
泣くことを学ぶためにやってきたという、言葉を話すカラス、鳥彦王☆
草十郎が出会うことになる運命の少女、糸世御前。
その糸世を菩薩だと慕い、行動を共にする法師、日満。
そして、この国のすべての上に君臨する、上皇、のちの後白河法皇。
様々な登場人物が、混乱の平安末期を駆け抜ける!
糸世の舞う舞は、草十郎の笛の音と調和し、重なり、互いに一つになって天にとどく…
孤独な中でも、笛を友として生きてきた少年と、遊君として売られながらも、舞を舞うために生まれてきたような少女。
この二人に襲いかかる運命という過酷な試練。
「わたしを見つけて…」
もう、なんて切ないラブストーリーなんだ~
天の門に消えた糸世を追い、豊葦原を旅する草十郎と鳥彦王に、権力者の魔の手が伸びる!
はたして草十郎は糸世を見つけ出すことができるのか?
そして執拗に二人を狙う上皇の思惑とは?
糸世の足取りをたどり、様々な人と出会うことで、草十郎はそれまでの自分というもの、糸世という生き方、そして、二人の未来を見つけていきます☆
ところで、ことばを話すカラスって何者?
そうです、このカラスの鳥彦王がイイんです♪
自分を豊葦原の真の支配者だと名乗り、配下のカラスを従え、全国に鳥ネットワークを持つ頼もしい草十郎の相棒。おしゃべりなのと、鳥目なのが玉にキズだけど、物語全編で大活躍☆
また、「虎のヒゲをひっぱることでも、平気でする」と形容される、糸世の性格もイイ♪
彼女が出てくると、場面がパッと明るくなる感じ☆
さすがは遊君の間で育ってきただけあって、年上の草十郎もタジタジの口達者。
しかも、自分や草十郎の持つ力の意味を感じ取っていて、自分ひとりでそれを背負おうとするとっても健気な一面も!
荻原さんの描くキャラクターは、ほんといつも魅力的でまいってしまいます。
「勾玉シリーズ」と同じ時間軸のお話ですが、物語自体は、前のシリーズを知らなくても全然平気です。
草十郎の笛の音や、糸世の舞う時の空気みたいな、目に見えない描写がすごく新鮮で、読んでいて新しい感動をおぼえました♪
荻原ファンの方はもちろん、新しいファンタジーに興味のある方、歴史ドラマに興味のある方、そしてしゃべるカラスにとっても興味のある方(笑)
オススメです☆
荻原 規子 著
徳間書店