今回は、モンゴメリ作品のご紹介です♪
『赤毛のアン』はあまりにも有名ですが、モンゴメリはこの他にも、大人向けのたくさんの短編と、小説を書いているんですよ。
この作品もそうした大人向けの作品の一つ。
でも、きっと、中学生あたりから楽しめると思います。
だって、テーマが、「未婚女性の開き直りサクセスストーリー」なんですから!(ファンの人に怒られるかな?)
では改めて、ルーシー・モード・モンゴメリの『青い城』をご紹介します☆
主人公のヴァランシー・スターリングは29才。
彼女の住むディアウッドの村の人々も、一族であるスターリング家の人々も、彼女のことを結婚の望みのないかわいそうなオールド・ミスと見なしていて、ことあるごとに当てこすったり、おちこぼれの女であると見下したりしています。(この本が出版されたのは一九二六年、この当時では29才の独身女性はそう見られていたんですね。
年老いた母親はヴァランシーの服装や髪型のことにまで口を出し、一緒に暮らすイトコのスティックルズも、ヴァランシーが外に出るだけで風邪を引くと決め付け、いつも「長靴ははいたのか?」と訊いてくる。
決まりきった毎日。
何の変化も、なんの希望も持てない生活。
これで本当に生きているっていえるの?
いつも何かを恐れ、母親に口答えすることもできず、自分の狭い部屋のありとあらゆる物がイヤでしょうがないヴァランシー。
(いっそのこと、本当のことをはっきり言ったらどうかしら。『あたしは結婚できないので泣いているのよ』と。おかあさんは恐れをなすでしょうよ。)
でもこのヴァランシー、お堅いスターリング家の人達が聞いたら、卒倒してしまうような隠し事があったりするのです☆
ヴァランシーが夢見る『青い城』。
そこには、たくさんの恋人を持ち(もちろん一度には一人)、着飾ったヴァランシーの姿がある♪
アンやエミリーなどの、モンゴメリの他のキャラクターと同じように、空想の世界の住人でもあるヴァランシー。
だけど彼女には、親友も、幼友達も、優しい家族さえありません。
誰からも必要とされず、誰にも関心を示してもらえない悲しさ。
自分を押さえつけ、世間と、家族に遠慮して息をひそめる人生。
常識だの、世間体だの、自分をしばりつけるありとあらゆるもの。
そして運命のその日。
ヴァランシーの人生は180°変わることになるのです。
「恐れは原罪である。世の中のほとんどすべての悪には、その根源に、だれかが、何かを恐れているという事実がある。」
心臓に痛みを覚えたヴァランシーは、誰にも内緒で、老医師のもとを訪れます。
そして知るのです、自分があと一年しか生きられないだろうということを!
この、「自分の命はあと一年」と知ってからのヴァランシーの変わりようが魅力的☆
あまりの変わりように、親戚の人々は、気が狂ったのではないか? と心配(自分達一族の)しますが、読者にはヴァランシーがいつも思っていたことを口に出しているだけだとわかっているので、ナンだか痛快!
ここでもモンゴメリの筆は冴え渡ります♪
「あたし、青い城を捜しにいくのよ。」
行動する女性って好きです☆
ただ待っていたって幸せはやってこない。
いきなり変われるわけもなく、時には失敗もするヴァランシーですが、それでもどんどん自分の生きる道を捜して進んで行く。
「生きている」ことを確かめるために。
もちろん、本物のロマンスもあって、美しい自然と湖と、かわいい猫たちも登場します♪
ダンスパーティー。
おんぼろ自動車。
白樺の森。
後半、ヴァランシーの住むことになる本物の『青い城』の描写はさすが!
作者の夢に描く家を現実にしたみたいで、とってもうらやましくって、こんな暮らしがしてみたい♪
登場する人々も、みんな何かしらの欠点があって、こんな親戚のおじさんおばさん「いるいる」と相槌を打ちたくなるほど。
謎の作家ジョン・フォスター。
かわいそうなセシリア・ゲイの身の上。
何にでも効くレッドファーンのパープル丸薬。
舞台こそ、プリンス・エドワード島を離れ、カナダのオンタリオ州(モンゴメリは結婚してこの地に移り住んでいます)ですが、木々や野に咲く花、風の音を愛するモンゴメリの作風はここでも健在♪
きっと、多くの「腹心の友」の人々にも楽しんで頂ける作品だと思います☆
あなたが、もし何かを恐れてなにかを我慢しているようなら、どうぞこの物語をお読み下さい。
真に大切なものは、あなたの心の中に眠っている、「その思い」であることを、きっと思い出させてくれますよ☆
ルーシー・モード・モンゴメリ 著
谷口 由美子 訳
篠崎書林
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