私的図書館

本好き人の365日

『春のオルガン』

2010-05-04 22:32:00 | 本と日常
天気が良かったので車を洗車に持って行って来ました。

以前は自分で洗っていたのですが、歳を重ねるごとにぐうたらになってきたのか、最近はもっぱらガソリンスタンドでお願いしています。

その待ち時間に読んでいたのは、湯本香樹実さんの、

*(キラキラ)*『春のオルガン』*(キラキラ)*(新潮文庫)

小学校を卒業した春休み。

主人公の少女トモミは体が弱くて家族の心配を一身に集める弟と、忙しく働く母親、無口な祖父と暮らしています。

隣人とのトラブルでギクシャクする家族。
家に寄りつかない父親。

すべての元凶は隣の住人だと思い込む弟は、猫の死体を隣家の庭に置いて来ます。

全体にただよう不安と暗闇。

無邪気に夢を描くことに困難を感じるようになったトモミの、子供から大人に成長する不安が描かれます。

私はどんな大人になるのだろう…

お母さんは私のことをちっともわかってくれない…

ある日、通りすがりの男に胸をつかまれ、ショックで声も出せないトモミ。

母親にも言えず、自分が悪いかのような姿の見えない罪悪感にさいなまれる…

思春期といえばそれまでですが、こうした心の葛藤をどう受け止め、どうやって前に進んでいくか。
作者の描く子供たちや大人の姿に引き込まれて、ガソリンスタンドで夢中になって読んでしまいました☆

これが古本屋で100円なんて安すぎるなぁ。

物置の片隅から壊れて音の出なくなったオルガルを引っ張り出し、もくもくと修理する祖父の背中。

現実は物語のように美しくもキラびやかでもないけれど…

弟はウンチをもらすし、猫は汚く死体は冷たいし、大人たちは子供を傷つけるばかりだけれど…

トモミは自分が怪物になってみんなに追いかけられている夢を見ます。

バラバラに崩れていく世界。

それでも人って生きて行くんですよね。

この世界で、いろんな人に囲まれて。

それぞれの人生を抱え、大人だけれど答えなんて持っていない人々と共に。

車を洗車してもらって、ワックスもかけてもらって、お金を払って家に帰ってみると、車の洗い残しを二ヶ所発見しました。

…アルバイトくんもいろいろあるよね。

と一瞬、他人を許す心の広さをみせようかとも思ったのですが、次からは別のお店にしよう、ともう心に決めている自分がいました(苦笑)

それはそれ、これはこれ。
商売は商売だからね。

現実は厳しいんです。

いい読書ができました☆




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