◎『日本会議の研究』と『日本会議の正体』
青木理〈オサム〉さんの『日本会議の正体』(平凡社新書、二〇一六年七月八日)が発売になったので、購入してみた。参議院議員選挙の数日前に、発刊されたようだが、地元の書店の店頭にはなく、昨一一日になって、都内の書店で入手した。
ザッと読んでみた感想だが、菅野完〈スガノ・タモツ〉さんの『日本会議の研究』(扶桑社新書、二〇一六年五月一日)とは、きわめて対照的な本だと思った。
菅野さんの本では、各種の資料を博捜しながら、日本会議の実像に迫って行くという手法が用いられている。一方、青木さんの本は、関係者へのインタビューを重ねながら、日本会議という組織の本質に迫ろうとしている。もちろん、菅野さんも関係者へのインタビューをおこなっており、青木さんも、資料の紹介をおこなっている。しかし、あくまでも、菅野さんの本では、各種資料の発掘と分析が「主」であり、青木さんの本では、関係者へのインタビューが「主」である。
菅野さんが採った手法は、在野研究者が、しばしば用いる手法であり、青木さんが採った手法は、ジャーナリストが得意とする手法である。
どちらも、興味深く魅力的な本だが、私にとっては、『日本会議の研究』のほうがインパクトがあって、おもしろかった。『日本会議の研究』のほうが先行したからという理由もあるが、それだけではない。「日本会議」の問題性を指摘する切れ味において、『日本会議の研究』のほうに鋭いものを感じたからである。
周知のように、『日本会議の研究』に対しては、四月二八日の日付で、扶桑社宛に、「直ちに出版の差し止めを求める」旨の「申し入れ書」が届いたという。申し入れ書の名義は、「日本会議/事務総長 椛島有三」である。
菅野さんは、この「申し入れ」に対して、次のようにツイートされた(四月二八日)。
かかる上は、もはや、拙著『日本会議の研究』は、本丸をつきまくっていたと断ぜざるをえず、「出版差し止め」まで版元に要求された以上、今後は当方としても全方位に対して、戦闘状態に入らざるをえず、日本会議をしばき倒す勢いで臨むしかない
なかなか戦闘的である。
もともと、この『日本会議の研究』という本には、随所に、こうした「戦闘性」が見られ、それが、ひとつの魅力になっている。一方、『日本会議の正体』という本は、それに比べれば、きわめて穏健な感じに仕上がっている。読者諸氏には、是非、両者を読み比べてみることをおすすめしたい。
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