アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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国全体がやらせ・格差社会の北朝鮮

2006年12月29日 23時31分57秒 | 北朝鮮・中国人権問題
 昨日18時半から日本テレビ系列で放送された緊急特集番組「お前は誰だ 金正日が怖れる男・・・リ・ジュン」を見ました。

 私、実を言うと、もう最近は「北朝鮮モノ」番組には辟易していました。何故かと言うと、最近のこの手の番組と言うのはもう、視聴率稼ぎのお涙頂戴か、興味本位でヘイトスピーチ・戦争扇動の北朝鮮・在日バッシングか、安倍・ネオコンの提灯持ち番組か、ばかりだったので。特に命令放送以後はNHKのニュースも心持ちそんな報道ばかりがやたらと目に付き出して。その裏で、教育基本法"やらせ改悪"のニュースは大手全国紙でも準三面記事扱いで、Yahoo!ニュースでもトップページに約30分間流しただけで後は直ぐに他の話題と差し替えられていた。この間そういう情報操作を露骨に見せ付けられていたので、最初にこの番組の見出しを見た時も、どうせ安倍官邸筋の息のかかった「やらせ・準国策」番組だろうとタカをくくっていたのです。

 しかし、番組のソースがアジアプレスの石丸次郎氏で、拉致板界隈だけでなく拙ブログ周辺界隈でも話題に上りだしたので、俄然興味が湧いてきて急遽見る事にしました。近頃跋扈しているその手のキワモノ番組とは異なり、非常に良い番組でした。

 妻や娘を飢餓で亡くし決死の想いで国境の豆満江を渡って中国に脱北したリ・ジュン(仮名)が、現地で脱北者取材を続けていた石丸次郎氏と出会い、石丸氏からビデオ撮影の技術を学んで再び北朝鮮に潜入し、北朝鮮の内情をビデオ撮影。ここに、史上初の北朝鮮人国内反体制ジャーナリストが誕生しました。

 北朝鮮の内情については、今までもRENKなどが撮影したビデオがあるのですが、如何せん、それらは脱北の様子や国内反体制ビラの隠し撮りまでが精一杯で、その反体制ビラにしても、それがどれだけの裾野を持って北朝鮮国内で流通しているのかが、イマイチよく分りませんでした。

 それに対してリ・ジュンのビデオは、名も無き民衆の実際の生活の様子を、克明にしかも広範囲に捉えていて、非常に説得力がありました。移動中の鉄道車内で通行許可証を持たない親子が乗務員につまみ出されている様子、電力供給が滞り度々臨時停車を余儀なくされた車内の乗客が外に出て女性も化粧直しに余念が無い様子、金目のものと交換する為に肥料の積み込み現場で貨物列車に群がり落ちこぼれた肥料をかき集めている群衆の様子などが撮影されていました。

 また、それを統制強化で乗り切ろうとしている様子や、その統制が全然機能しなくなっている様子も。糾察隊の腕章をつけた女性が街中を練り歩いたりしているのですが、民衆はもうそんな奴らの言う事など馬耳東風で好き勝手な事をしています。
 清津(チョンチン)では、製鉄所の職員がもうずっと給料が支払われないので職場全体で工場をホッポリ出して屑拾いに専念していたり、コッチェビ(ホームレスの孤児)の存在を尻目に真昼間から川原でバーベキュー大会をしている男女が大勢いて派手な歌舞音曲に興じて糾察隊もお手上げの状況だったり。その横で先軍政治で優遇されている筈の人民軍兵士が腹をすかせて寝そべっていた。鉄道車内でも、帰郷中の若者兵士が栄養失調の余り食べ物を一切受け付けなくなって横たわっていた。
 
 北朝鮮では職場の出勤状況を逐一警察に報告しなければならないのだそうですが、その一方で食う為、生きる為の職場放棄があちこちで広がっている。この様子では警察の方も、適当な報告をでっち上げて後は自分たちも屑拾いに出掛けていっているのではないか、そういう気がします。国内統制という点では戦時中の日本も同じ様なものでしたが、北朝鮮の場合はもう配給網自体が完全に崩壊してしまっています。この様な状況では、如何に軍国青年・乙女と言えども、生き抜く為には職場を放棄するしか他に方法がない。
 その中でもとりわけ興味を引いたのが朝鮮労働党地方幹部へのインタビュー。党・政府が掲げている「強盛大国」のスローガンが、豊かな国を意味するのではなく、ただただ核保有だけを意味していた事を上の方から初めて聞かされて、「俺は今まで騙されていた」と地方幹部が思わず漏らしてしまうくだりです。先の飢えた人民軍兵士の映像と言いこの幹部の発言と言い、金正日体制は既に中間支配層からも見捨てられつつあるのではないか。

 ただ一つ疑問に思うのは、リ・ジュンが何故こんなにビデオ取材やインタビューまでやってのける事が出来るのか、という事です。「決死の覚悟で取材敢行」という割には、余りにも手際が良すぎるというか。番組では「最近北朝鮮では結婚式をビデオに録画しておく事が流行している」という話が紹介されていたので、ビデオ取材も別段物珍しいものではなくなってきているという事なのでしょうか。ビデオ自体も、庶民にとっては相変わらず高嶺の花ではあっても、一昔みたいに「見た事も触った事も無い」状況では無くなってきているのかも。事実、平壌の上層市民の間では携帯電話も使われ始めていると言うし。仮にも石丸次郎プロデュース・アジアプレス責任編集の特集番組と銘打つ以上は、他のヤラセ紛いの興味本位なワイドショー番組とは一線を画しているとは思っていますが。

 この番組が他の北朝鮮モノと決定的に違うのは、北朝鮮国内現地の住民生活や民衆の息吹が直に伝えられている点です。他の北朝鮮モノ番組が、やれ金ファミリーの後継者がどうたら「喜び組」がこうたら、金正日やブッシュや安倍がどう言ったこう言ったとかいう事ばかりを興味本位に垂れ流しているだけなのに対して、この番組はそうではなく、「国内現地の民衆がどう考えているか、情報をどう受け止めているか」という一番肝心な事を伝えてくれている点です。それも「民衆の解放」という立場にしっかり視点を据えて。金正日批判ビラが国内で蒔かれたとか、そういう情報も従来から在るには在りましたが、今までは断片的な情報に止まり、それが国内で実際にどれだけ大衆的な広がりを有しているかという一番肝心な事がよく分りませんでした。そういう情報は全て「脱北者の伝言」という形でしか得られませんでした。ところが今回、それがこういう形で伝えられました。

 勿論、今回伝えられた「民衆の息吹」も、敢えて穿った見方をすれば、確かに北朝鮮国内の一断面にしか過ぎないのかも知れません。また、革命情勢(民衆生活の困窮)が自動的に革命に結びつく訳でも勿論ありません。当該番組の中でもコメンテーターの一人が、「民衆は強かだが、動物的な生存要求のレベルに止まっている(そのままでは政治変革には直結しない)」という意味の事を言っていました。但しそれは日本でも同じ事です。日本にもワーキング・プアだけでなくヒルズ族や安倍・小泉・石原支持者もゴマンと居ます。
 問題は、そのどちらかより本質的・根源的で、取り上げられなければならない事柄かという事です。NHKのワーキング・プア特集番組の編集者に対して「ド貧民が、必死だな」というメールを送りつけて来るような"人間のクズ"と心性を同じくする輩が、さも尤もらしく北朝鮮の格差・階級社会を批判しても、そんなモノが人の心に響く事はありません。それに対して、「民衆の解放」を視座に据え、その息吹を伝えた取材こそが、真に人の心に迫ってくるのです。今回はそういう意味では、稀に見る良質の取材番組でした。リ・ジュンが起爆剤となって、更に多くの北朝鮮国内反体制ジャーナリストが後に続く事を祈って。

・緊急生SP「お前は誰だ」公式HP(日本テレビ)
 http://www.ntv.co.jp/sunday/scoop/
・同上番組の案内ページ(アジアプレス)
 http://asiapress.org/

(番外編)
・しょこたん☆ぶろぐ
 確か中川翔子も上記番組にコメンテーターの一人として出ていて、ブログに番組の感想を載せるとかいう話も出てなかったっけ・・・(半分・怒)。
 http://yaplog.jp/strawberry2/
コメント (13)
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