先日行われた米国大統領選挙で、共和党のトランプ氏が大統領に返り咲きました。保守派のトランプ氏が大統領に返り咲いた事で、マスコミはあたかも保守回帰の風潮が米国の民意であるかのように報じています。しかし、私に言わせれば、この「民意」は必ずしも実際の民意を正確に反映したものではありません。はっきり言って、今回の選挙そのものも「茶番劇」でしかないと思っています。
何故なら、大統領選挙の仕組み自体が極めて非民主的だからです。米国の選挙は間接選挙制です。有権者は大統領を選ぶ「選挙人」を各州ごとに選出します。「選挙人」は誰に投票するか予め決めており、それを有権者にも事前に公表しています。「私はトランプに入れる」「私はハリスに入れる」という具合に。いわば「選挙人」は候補者の分身です。有権者はその分身に投票するだけです。
その「選挙人」も、必ずしも得票に応じて選出される訳ではありません。各州で一番数の多かった選挙人が、その州の定数を全て独占してしまう仕組みになっています。この「勝者総取り」方式の為に、最多得票者が実際以上の「議席」を得る事になってしまうのです。それを定数の多いテキサス州とカリフォルニア州の例で説明します。(上記NHKニュースの添付画像参照)
テキサス州の選挙人定数は40です。ここは長年、共和党が選挙人の定数を独占して来ました。今回も共和党トランプ候補の選挙人で40人全てが埋まりました。しかし実際の得票は共和党トランプ候補が約56%、民主党ハリス候補が約43%と接戦でした。得票に応じて選挙人を決めるならトランプ24人、ハリス16人となるはずです。
カリフォルニア州の選挙人定数は54です。ここは逆に、民主党が選挙人の定数を長年独占して来ました。今回も民主党ハリス候補の選挙人で54人全てが埋まりました。しかし実際の得票は共和党トランプ候補が約38%、民主党ハリス候補が58%でした。得票に応じて選挙人を決めるならトランプ20人、ハリス34人となるはずです。
選挙の結果、テキサス州ではトランプ氏が40人の選挙人を獲得。カリフォルニア州ではハリス氏が54人の選挙人を獲得。ハリス氏の方がトランプ氏を14も上回っています。ところが得票に応じて決めるなら、テキサスではトランプ24:ハリス16、カリフォルニアではトランプ20:ハリス34。両方足すとトランプ44:ハリス50と、その差は6に縮まります。
選挙人の多い2州だけで比べても、「44:50」が「40:54」に化けてしまうような選挙が、果たして民意を公平に反映していると言えるでしょうか?何故、シンプルに直接選挙だけで大統領を選ばないのでしょうか?それは、米国建国当時の18世紀には、長距離の移動手段は馬車しかなかったから、地元で選挙人をまず選んでから、選挙人を首都のワシントンまで移動させて、首都の議会で大統領を選ぶようにしたのです。
でも今はもう21世紀です。鉄道・バス・航空機と様々な手段で移動できます。インターネットもあります。別に選挙人なんか選ばなくても、有権者の直接選挙でいくらでも大統領を選ぶ事が出来ます。そうであるにも関わらず、何故いまだにこんな数百年も前の仕組みで選挙を行っているのか?それは、旧態依然たるこの制度の方が、大政党や強い候補者にとっては有利だからです。
民主主義は形だけで、いつも大政党や強い候補者だけが勝つ仕組みになっている。仮に負けたとしても、共和党か民主党の候補者しか当選できない。しかも、投票するには事前に有権者登録をしなければならない。投票日も11月第1月曜日の次の火曜日(平日)にしか行われない。不在者投票の仕組みも煩雑で、専用の投票用紙を自分で印刷して郵送しなければならない。
これでは平日休めないシフト勤務の労働者は投票にも行けません。共和党も民主党も似たり寄ったりの政党で、どちらもスポンサーは大企業なので、どちらが勝っても、大企業に有利な政治しか行われません。だから、貧しい人たちほど投票に行かなくなってしまったのです。本来なら、貧しい人たちにこそ、政治家が手を差し伸べなければならないのに。米国では大統領選挙も上下両院議員選挙も投票率は5割あるかないかです。
大統領選挙で移民問題や中絶の是非が一大争点になったのも、「それしか違いが打ち出せない」からです。共和党のトランプも、民主党のハリスも、バックについているのは財界・大企業です。大企業優遇の政治が長年行われてきた為に、他の先進国ではとっくに実現できている公的医療保険制度も、この国では製薬メーカーの反対で実施できずにいる。「大企業の営業の自由を侵す者は全て共産主義だ、アカだ」と呼ばれて。その為に、民間の高い保険料を支払えない人は、盲腸の手術も受けられずに死ぬしかない。金の切れ目が命の切れ目。まさに資本主義の究極の姿です。
でも、共和党も民主党も、大企業優遇の政党なので、目先のバラマキだけでお茶を濁し、根本的な格差是正策には手を付けようとしない。その中で、トランプが大規模減税を公約に掲げた。貧困層にとっては、中絶の是非なんかよりも、こちらの方がよっぽど切実な問題だ。他方でトランプは移民排斥も唱えているが、合法的に市民権を得て米国で何世代も生き抜いてきた移民一世にとっては、不法移民を取り締まってくれた方が商売もやりやすい。だから、貧困層の中にはハリスを見限りトランプに投票する人たちも出てきたのです。
トランプの主張する大規模減税も、所詮は所得税減税が中心で、富裕層がより肥え太るものでしかないのに。本来なら、貧乏人は盲腸の手術も受けられないような、そんな大企業優遇の政治こそ変えなければならないのに。「どうせ変わらない政治なら、少しでもおこぼれにあやかれる方が良い」と、ハリスではなくトランプを選んでしまうのです。これが「保守回帰」現象の正体です。
しかし、今回のトランプ勝利を単純に「保守回帰」とのみ断定してしまうのも、私は違うのではないかと思います。何故なら、トランプ氏には、故・安倍晋三や高市早苗に見られるような保守イデオロギー志向は、余り感じられないからです。ただ単に「保守回帰」なだけなら、ロシアのプーチンと仲が良かったり、北朝鮮の金正恩と首脳会談したりはしないはずです。今のイラン封じ込め政策のような、徹底した対抗措置で臨むはずです。
米国の中東政策にとってイスラエルは不可欠です。何故なら、イスラエルは中東において常に米国の露払いのような役割を果たしてくれますから。イスラエルのガザ虐殺も中東の原油確保の為なら容認する。そのイスラエルを叩き潰そうとするイランは徹底的に封じ込めなければならない。しかしウクライナはそうではない。米国にとってはお荷物にしか過ぎない。戦費負担を減らすためにはロシアのプーチンとはこの際、手打ちした方が得だ。
トランプ政治の真髄は、このような徹底した「損得勘定」です。だから、自国の権益を侵しかねない不法移民やイランに対しては強硬策で臨む一方で、一文の得にもならないウクライナ戦争にはロシアと妥協する道を選ぶ。台湾有事も同じです。日本にとっては死活問題かも知れないが、米国にとっては所詮、極東の島国に過ぎない。人口2千万に過ぎない台湾よりも、14億の中国の方がはるかに経済的魅力が大きい。もし中国が台湾に侵攻しても、昔は中国の領土だったのだから、ウクライナと同じように元の鞘に収まるだけではないか…そう考える可能性もゼロではありません。
もし、そうなったら、日本のネトウヨ(ネット右翼)は完全にトランプに梯子を外されるでしょう。左右のイデオロギーでしか物事を見れず、「保守派=善」「米国=善」の硬直した思考から抜け出せない日本の保守派にとっても、それは同様です。私はもちろんトランプなぞ大嫌いです。同様にプーチンや習近平も嫌いです。でも、そのトランプですら、日本の保守派やネトウヨと比べたら、はるかに有能に思えます。本当は有能であるだけでなく、思いやりや正義感のある人が政治家として一番相応しいのですが。
約10年前と6年前の2回、ヨルダン川西岸地区に行ったことがあります。その時私が見聞きした事実です。 まず、私はヘブロンという街に行きました。世界遺産の宗教的聖地。普通なら観光客で賑わう明るい街です。でも、そこは街全体がシャッター街になってしまった寂しい街でした。
理由は、イスラエルの入植です。軍事力で圧倒的に勝るイスラエルが街を空爆を含む手段で制圧し、パレスチナ人を追い出しました。それでも抵抗して街を離れなかったパレスチナ人は、入植者からひどい嫌がらせを受けているそうです。
写真は屋台通りであっただろう寂れた路地から空を見上げて撮った写真です。入植者たちが、買い物客を狙ってゴミや瓶などを投げつけたそうです。その対策として金網が張られていますが、それでもゴミが投げ込まれていました。
パレスチナは日本のように水に恵まれた地域ではありません。また、貧しい地域なので水道管などのインフラも整っていません。 では、日常生活で使う水はどうしてるか。それは、各家庭の屋上に水タンクで貯水し、そこから都度都度水を使っているそうです。
イスラエル軍はその水タンクに銃で穴を開けて回ったそうです。当然、水がなくなれば生活もできません。タンクを修理しようにも、武力制圧された街です。至る所に監視櫓があり、そこでは自動小銃を持ったイスラエル兵が目を光らせていました。
当然修理なんて不可能。どんどん住人が減っていったそうです。 最初にヘブロンを訪れた際は、まだ耐えている住人は残っていました。でも2回目は街全体が廃墟となっていました。 このヘブロンより、ガザは酷いと聞きます。退避することすらままならないでしょうから。だから『天井のない牢獄』なんです
私を案内してくれたタクシードライバーはこう言ってました。「俺も家族を殺された。でも抵抗する手段すらないんだ。イスラエル兵の自動小銃は何発でも打てる。でもパレスチナの自動小銃はコピー品。1,2,3発。それで壊れる。俺達にはなにもできない」
パレスチナにはインティファーダという抵抗運動があります。体の小さな少年が、イスラエルの巨大な戦車に石を投げつけてる写真が有名ですね。何も知らない方は「何故そんな無茶を?」と思うかもしれません。でも、彼らにはハマスのような武装組織に参加する以外、それしか選択肢がないんです。
家族を殺されて、住居を奪われ故郷を追われ、イスラエルに殺されるという可能性を身近に感じながらも、それ以外に選択肢がないんです。 だから、自殺まがいのテロが頻発する。全てを奪われてもなお、自分の命だけは最後に使えるから。
他のパレスチナ人はこう言いました。「壁の向こう側には俺達にとって大切な場所があるんだ。一度だけでも、どうしても行ってみたくてね、超えれないか試してみたことがある。捕まって拷問されたよ。電流を流された」
パレスチナは巨大な壁に囲まれています。その壁は、イスラエルが軍事力によって押し付けたもの。パレスチナ人のことは考慮されていません。国連の資料には、壁の向こう側にある学校へ、地下トンネルを通って登校しようとした子供が落盤により命を落とす事例もあるとありました。
ただでさえ絶望的な貧困の中、通学すらできない子供の将来はどうなるか。残念ながら、そんな将来すら閉ざされた。 なお、当然地下トンネルはイスラエルに見つり次第潰されてるとのことです。 ガザの地下トンネルも、ハマスのものだけではないでしょう。分離壁がなければそもそもなかったものですが
別のパレスチナ人はこう言いました「イスラエル人にもいい人がいるのは知っている。可能であれば仲良くしたいんだ。でも、俺達の声は壁の向こうに届かないんだ」
私が会ったパレスチナ人は親切な人ばかりでした。私が道に迷っていたら、通りすがりの人が声をかけてくれました。貧しいにも関わらず、私に晩御飯をご馳走してくれました。同じことで笑い、同じことで悲しめる人達でした。イスラエル人にも同じように優しい人がいました。
そんな人たちが、今、殺し合っています。イスラエルを恨む人も殺されています。そして、恨みを飲み込んででも平和を選ぶ人もまた、殺されています。命令を受けてガザに踏み込んだイスラエル人もまた、一定数殺されるでしょう。戦力が違うので、パレスチナ人の犠牲が圧倒的に多いでしょうが。
今回のハマスの攻撃及び誘拐に賛同するつもりはありません。言うまでもなく人道からは逸れていますし、汚職も指摘されていた組織です。イスラエル人の民間人だって人生があった。それを奪っていいとは決して思いません。
それでも、パレスチナに実際行ってみた率直な感想は「これでテロが起きないはずがない」でした。だってイスラエルが武力で制圧して抑圧して殺してるんです。恨まれないはずがない。 今回の事件は、本当にハマスを悪と断罪すれば終わるものでしょうか?ガザの人達は殺されても仕方ないでしょうか?
イニシアティブをとれるのは、軍事力でパレスチナを圧倒しているイスラエルです。そのイスラエルが変わらなければ、復讐に駆られた生き残りのパレスチナ人がハマスに参加し、またテロを起こす。それの繰り返しでしょう。
でもイスラエルの世論は容易には変わりません。パレスチナと融和政策をとった政治家を暗殺する極右もいますし、既に大勢殺してるのも自覚してる以上、今更後戻りもできない。本当に活路が見えないのがパレスチナ問題です。
それでも、国際世論が少しでも多くパレスチナに目を向ければなにか変わるかもしれない。そう思い、当ツイートを作成しました。 両国の間に、ほんのわずかでも平和の可能性が育ちますように。少しでも両国の犠牲が減りますように。僅かでも理不尽が減りますように。心からそう願います。
ヘブロンの穴を開けられた水タンクの写真と、分離壁、現地で出会った子供の写真を載せておきます。 水タンクは、私が見た限り全ての家屋に穴が開いていました。
1点訂正です。 6個目のツイートで「ヘブロンの街全体が廃墟になっていました」と書きましたが、正確にはヘブロンの街のH2と呼ばれる、世界遺産になったアブラハムの墓や旧市街を含む地域でした。
※太郎太郎(ねんねん)さんのツイートはここまで。ツイートの原文と写真はX(旧ツイッター)の投稿を参照。
※上記の「H2」について補足すると、そもそも、1993年のオスロ合意で創設されたパレスチナ自治区で実施されているのは、あくまで「暫定自治」に過ぎない。当初は5年後に恒久自治に移行するはずだったが、当時のイスラエル首相ラビンの暗殺、その後に首相に就任した極右政治家シャロンの挑発行為(イスラム教の聖地「岩のドーム」を訪問して「ここはイスラエルのものだ」と挑発)によって完全に暗礁に乗り上げ、現在では全く形骸化。あくまで不完全な暫定自治なので、自治政府の行使できる権限は限られている。
自治区内はエリアA(自治政府が行政権も警察権も行使)、エリアB(自治政府が行使出来るのは行政権のみ)、エリアC(自治政府の権限は全く及ばない)に分けられる。2000年においてもエリアAは自治区全体の17.2%に過ぎず、6割以上がエリアC(つまりイスラエルの軍政下)に留められている。(ウィキペディア参照)
その中で、ヘブロン市では1997年の合意により、市内の8割を自治政府が治め(H1)、2割がイスラエルの軍政下に置かれる事になった。(ウィキペディア参照)。後者の軍政下に置かれた地域がH2である。
※それ以前に、「そもそもパレスチナ問題とは何ぞや?」という事も知っておかなければならないので、下記の解説も載せておきます。パレスチナ駐日代表部のホームページをそのままスクリーンショットで撮りました。この解説を読み、上記のツイートを読んで、私の補足説明も参考にしていただければ、「ガザやパレスチナで今何が起こっているのか?」大体の所は分かっていただけるのではないかと思います。
プーチン大統領、ただちに戦争をやめてください。
今回の国連憲章と国際法に違反したロシアの侵攻は、平和な世界を希求している私たちにとって許せるものではありません。
私たちが求めているのは、戦争も核兵器もない世界です。私たちは、世界で唯一の戦争被爆国であり平和憲法を持つ国の未来を担う主権者として、平和を求める世界中の人々と連帯し、「戦争反対」を強く訴えます。
〈呼びかけ人〉
沖縄高校生平和ゼミナール 東京高校生平和ゼミナール 広島高校生平和ゼミナール
〔署名集約日〕 2022年3月20日
*私たちは各地で平和について学び交流している高校生の平和学習サークルです。
*この署名はロシア大使館に提出します。個人情報はこの要請目的以外には使用しません。
*これはネット署名です。賛同していただける方は、下の欄に入力して「送信」してください。重複をさけるため紙の署名用紙に署名した方は、このネット署名には署名しないでください。
ウクライナ一帯では8~13世紀にキエフ大公国(キエフ・ルーシ)が栄えた。「ルーシ」とは東スラブ人の総称でもあり、今のロシアの国名も、このルーシが訛ったものである。
ウクライナの首都キエフにある聖ソフィア大聖堂。世界遺産に認定されている。(図・写真はいずれも「世界の歴史まっぷ」から引用)
新年早々1月3日に、米国のトランプ政権が、イラクのバクダッド空港で、イラン革命防衛隊の精鋭部隊コッズ部隊を指揮するソレイマニ司令官らをロケット砲で爆撃、殺傷した。これに対し、イラン政府は米国に報復を宣言、米国トランプ政権も「報復されたら更に文化施設を含むイラン国内の標的52ヶ所を攻撃する」と宣言した。文化施設まで攻撃するとは、もはや中東のテロリストと何ら変わらない。事件現場となったバグダッド空港を抱えるイラク政府も、これにはさすがに黙っていられなかったようだ。今まで散々アルカイダ、IS(イスラム国)掃討作戦で米国のお世話になったにも関わらず、今回の米国の攻撃をイラクの主権侵害と捉え、非難声明を出すに至った。
トランプは今回の攻撃を「予想されるテロ攻撃への予防措置」「戦争の為ではなく戦争防止の為に行った」と強弁しているが、そんな詭弁は成り立たない。何故なら、先に戦争を仕掛けたのは、常にイランではなくアメリカだったからだ。
ちなみに、この時イランのモサデク首相を助けたのが当時の出光興産社長・出光佐三だ。禁輸網をかいくぐってイラン原油を日本に輸出し、百田尚樹の小説「海賊と呼ばれた男」のモデルにもなった。しかし百田は出光を日本人美談に利用するだけで、自衛隊派兵にも大賛成。安倍信者のネトウヨ作家にとってはイランも商売のネタでしかない。
やがて、国民の不満が高まり、1979年のイラン革命で国王は亡命を余儀なくされる。この革命で、イランは王国からイスラム共和国に移行するが、政治の実権を握ったのは国民ではなく宗教指導者のホメイニやハメネイだった。野党や労働組合が抑えつけられる中で、政府にまともに対抗できるのは宗教勢力しかなかった。それが革命後の国づくりにも影響を及ぼす事になる。
他方で、米国は革命以後も、国王の亡命を受け入れ石油国有化を拒否する事で、イラン国民に敵対を続ける。反米学生が首都テヘランの米国大使館を占拠したのに対し、イランに対し初の経済制裁を発動。その裏では、二股をかけ制裁対象であるはずのイランに武器を売りつけ、その金で中米ニカラグアの反共ゲリラを支援する芸当までやってのけた(イラン・コントラゲート事件)。
1980年代のイラン・イラク戦争でも米国はイラクに一方的に肩入れ。1988年にはイランの旅客機を米軍が撃墜している。2002年には当時の米国ブッシュ大統領が、イランをイラク・北朝鮮と並んで「悪の枢軸」と名指し批判。その米国の姿勢がイランを軍拡と核開発に追いやった。今や、イランはトルコ、サウジアラビアと並ぶ中東有数の軍事大国にのし上がるまでになった。
しかし、やがて転機が訪れる。米国オバマ政権主導下に、2015年にイランが「経済制裁解除と引き換えに国際原子力機関(IAEA)による核査察を受け入れる」と表明。この核合意で中東にも一時は平和が訪れるかに思えた。ところが、2019年に米国トランプ政権が核合意からの離脱を一方的に表明し、2020年に入った途端にイランの国民的英雄であるソレイマニ司令官を殺害。
今や中東が第三次世界大戦の発源地になろうとしている。米国大統領トランプは、朝鮮半島では米朝首脳会談を実現させ、あたかも平和の使者のように振る舞っているが、これとても米国前大統領オバマの朝鮮半島政策に対する意趣返しに過ぎない。
要するに、このトランプという男は、その時々の都合で、ある時は「平和の使者」、別の時には「強面の強硬派」としての顔を、それぞれ演じ分けているに過ぎない。彼の本質は、あくまでも米国第一主義のワガママなナショナリストだ。
それに対し、日本の安倍政権は、いたずらにトランプに尻尾を振るのみで、全然トランプの無法を諌めようとはしない。その上、歴史的に親日であったイランやイラクにも良い顔をしようと、八方美人を演じる事で、かえって両国からも不信を買う体たらくだ。安倍は、昨年6月にわざわざイランまで行きながら、トランプのメッセンジャーに終始した為に、イランのロウハニ大統領から「気遣い無用」とあしらわれ、スゴスゴと帰る他なかった。
そのくせ、安倍は12月27日に自衛隊の中東派遣を、防衛省設置法に定める「調査・研究」名目で、「アデン湾からオマーン湾に至る日本船舶の航行の安全を確保する為」と称して、法律や国会決議も経ずに一片の閣議決定だけで、年末のドサクサに紛れて強行した。本来なら省庁の役割分担を定めたに過ぎない法律を、無理やり海外派兵正当化に利用したのだ。一応「米国の主導する有志連合には加わらない」とされるものの、戦場となるホルムズ海峡とは目と鼻の先に派兵し、「米軍とも情報共有する」と言う。イランからすれば完全な利敵行為だ。
イランと米国の間で軍事緊張が高まるにつれ、年末までの株価高値が嘘のように、年明け早速、株価が急降下した。年末の株価バブルそのものも、アベノミクスによる官製相場に過ぎず、ボロ儲けしているのは一部の輸出大企業だけだった。庶民は消費税増税のダブルパンチに苦しんでいる。その上、更に、安倍やトランプ、一部の軍需産業の利益の為に、何故我々の自由が制限され、暮らしを破壊されなければならないのか?
戦争に踊らされているという意味では、イランやイラクの民衆も同じだ。せっかく革命で独裁者を追放しながら、その成果を宗教指導者に横取りされ、外国資本や帝国主義者の代わりに、宗教指導者による独裁に苦しめられる事になった。イランやイラクでも、昨年の夏から秋にかけて、失業反対・汚職追放のデモやストが広がった。しかし、その好機も、トランプが戦争の火種を付けた事で、かえってアルカイダやIS等のテロリストが息を吹き返す結果になってしまった。
世界の近現代史をひもとけば、アメリカこそが戦争の火付け役であり、テロの発震源だった。そんなアメリカにテロの被害者ヅラする資格なぞあろうはずがない。その中で、本来なら憲法9条で平和国家を宣言し、イラクやイランとも友好関係を保持して来た日本こそが、非軍事の外交交渉で和平の仲介を果たす事が出来るのに、いたずらにトランプに尻尾を振り続けた結果、両国からも憎まれる事になってしまった。
もはや残された道は唯一つ。一刻も早く安倍政権を退陣させ、自衛隊を中東から撤退させ、非軍事の外交交渉で平和国家本来の役割を果たせるようにするしかない。もはや紅白歌合戦やゴーン脱獄劇に目を奪われている場合ではない。ゴーンの事を取り上げるなら、脱出経路の詮索だけでなく非民主的な「人質司法の闇」も取り上げろ。これ以上、戦争や独裁、格差の犠牲になるのはゴメンだ。アフガニスタンの砂漠を沃野に変えたのも、戦争ではなく灌漑用水路だった。その中村哲医師の偉業に泥を塗るな真似をするな、させるな。自衛隊の中東からの撤退を呼びかける署名に是非ご協力を!戦争反対!
フランスと韓国の大統領選の話題については、ブログに記事を書く時間が無かったので、ツイッターの私のつぶやきをそのまま、この下に貼り付けておきます。私がここで言いたかった事も表題の一文に尽きます。
「私を支持しなかった方々にも仕える大統領になる」と文在寅(ムンジェイン)韓国新大統領。仮にも公僕を標榜する以上はこうでなくちゃ。あくまで主権者は国民なんだから。常に「私が総理大臣なんだから」と俺様節全開で、はぐらかし答弁ばかりの安倍晋三とは偉い違いだ。この一言でもう「勝負あった」
プレカリアート (@afghan_iraq_nk1) 2017年5月9日
仏大統領選でも日本との差が歴然。マスコミは極右ルペンの伸長ばかり言うが実際は左派のメランション含め4陣営拮抗。決戦投票でも極右のポピュリズムを拒否。革命やレジスタンスの経験故か、単に保守回帰とはならず。民主がダメでやはり自民と、先祖返りで元の木阿弥に泣く日本とは大違い。
プレカリアート (@afghan_iraq_nk1) 2017年5月10日
今日貰った赤旗見本紙の韓国新大統領就任記事からも日本との違いが歴然。パク前政権の政治私物化を韓国民は拒否。日本では森友疑惑の安倍が未だに一強独裁。韓国民が新大統領に期待する政策1位が貧困解消、2位も青年の雇用推進。格差拡大拒否した韓国、格差容認で慰安婦叩きに走るしか能のない日本
プレカリアート (@afghan_iraq_nk1) 2017年5月10日
米大統領選の選挙人獲得状況。左が2008年、右が2016年。08年には青色(民主党オバマ支持)だった五大湖沿岸の工業地帯が悉(ことごと)く赤色(共和党トランプ支持)に塗り替わった事が分かる。もし民主党大統領候補がクリントンではなくサンダースだったら、この様な事にはならなかったのではないか?
(注)左からクリントン、トランプ、予備選挙で民主党候補の座を最後までクリントンと争ったサンダース。サンダースは、資本主義の牙城アメリカで社会主義者である事を敢えて名乗り、格差是正や給付型奨学金制度の拡充を訴えて若者の心をとらえた。
トランプが弱者の味方だと?NY一の不動産王、新興成金そのもので、経済政策もアベノミクスの引き直し。タックスヘイブンへの税逃れも華麗な節税と居直る。これの一体どこが弱者の味方か?トランプは立派な資本家階級の一員。彼に投票した白人貧困層は騙されて肉屋に投票してしまった豚みたいな物だ。
米大統領選と日本の都知事選。国こそ違えど選挙戦の構図は瓜二つ。米国は、サンダースでは勝てないとクリントンに一本化したのに貧困層の票はトランプに流出。日本も、宇都宮では勝てないと鳥越に一本化したのに小池に流出。格差批判票が左派ではなく極右に流れ、更に弱肉強食が強まる。何という皮肉か
残念ながら左派の中にもトランプ待望論があるのは事実。「トランプも反TPPで米軍撤退を望んでいる」と。でも、彼の根底にあるのはあくまで米国中心主義。だから実際の言動は「移民排斥、女性差別、核武装肯定」と、排外主義のオンパレード。こんな「米国の橋下徹」みたいな奴に何を期待するのか?
靖国参拝反対も米国頼み。憲法擁護も天皇発言頼み。こんな他力本願ではいけない。トランプなんかに期待している暇があるなら、左派リベラルとして「今、一体何が出来るのか?」を、もっと真剣に模索すべきでは?南米やギリシャ、スペインでの左派躍進も、そうやって初めて実現できたのではないか?
以上。ツイッターでの私のつぶやきを、そのままブログに載せたのでは印刷レイアウトが崩れてしまうので、画像の地図とツイートの文章をそれぞれ個別にコピーペーストした。
ついでに、これもコピーペースト。ハフィントンポストからの引用で、「華氏911」で痛烈にブッシュを批判した米国の映画監督マイケル・ムーアが言った「選挙に負けた今やるべき5つの事」。ムーアの「民主党、共和党、オバマ、トランプ、選挙人団」等々の文言を、日本の「民進党、自民党、鳩山、安倍、小選挙区制」等々に置き換えても、そのまま通用する内容だ。彼は米大統領選向けに「マイケル・ムーアのトランプランド」という反トランプの映画まで作ったそうだ。早く日本でも劇場公開してほしい。
(注)選挙人団:米国の大統領選挙は間接選挙制で、有権者は選挙人しか選べない。その選挙人が大統領候補に投票する仕組みになっている。投票場まで何日もかかって歩かなければたどり着けなかった18世紀の名残をまだ引きずっているのだ。おまけに、ほとんどの州で、一人でも多くの選挙人を獲得した候補が、州全体の選挙人を獲得できる「勝者総取り方式」を採用してしまっている為に、実際には得票では負けていながら、選挙人の数では勝っている為に当選してしまう逆転現象が、今までも繰り返されてきた。マスコミが何かともてはやす米国だが、民主主義と言う点では決して先進国ではないという事は、読者も肝に銘じておくべきだろう。
実際に米国市民は、選挙後も意気消沈する事無く、このマイケル・ムーアの言葉通りに、反トランプの抗議デモに続々と立ち上がっている。「アメリカ様のご命令だからTPP批准を」と迫る安倍に対して、「トランプ様も反対だからTPP批准撤回を」としか言えない山本太郎(自由党)や志位和夫(共産党)の他力本願と、何という違いか!勿論、「バスに乗り遅れるな」とばかりに安倍自民になびく奴隷・社畜どもや、棄権という形で安倍のペテンを黙って見過ごす怠け者どもは、もはや論外だが。
「一夜明けた朝のToDoリスト」
1. 民主党を乗っ取ろう。そして人々の手に戻すんだ。民主党の奴らは、我々の期待に情けないほど応えられていない。
2. 評論家や予想屋、世論調査員、その他メディアの中で、自分の考えを変えず、実際に起こっていることに目を向けようとしない奴らを首にしよう。偉そうに話をしていた奴らが今、「分裂した国を癒そう」とか「一つになろう」と俺たちに言うんだ。そんなクソ発言を、奴らはこれからもずっと言い続けるだろう。黙らせよう。
3. この8年間、オバマ大統領と闘い、抵抗し、闘ってきた共和党議員のように、これから闘う気概を持って今朝目覚めなかった民主党の国会議員は出ていけ。そのかわりに、これから始まる野蛮や狂気を止められる術を知っている奴らを、俺たちのリーダーにするんだ。
4. 「驚愕の結果だ」とか「ショックだ」と嘆くのをやめよう。そんな風に言ったって、自分の世界に閉じこもって、他のアメリカ人や彼らの絶望に目を向けていないだけだ。民主党・共和党の両方に無視された人たちの、既存のシステムに対する復讐心や怒りが大きくなっている。そこに現れたのが、両方の党をぶちこわして「お前はクビだ」というテレビスターだ。トランプが勝ったのは驚きじゃない。奴はただのジョークじゃなかったんだ。そして、支持を得て強くなっている。メディアに住む生き物で、メディアが作り上げた生き物だ。メディアは決してそれを認めないだろうが。
5. 今日会う人全員に、こう言わなきゃいけない。「得票数は、ヒラリー・クリントンの方が多かったんだ!」過半数のアメリカ人は、ドナルド・トランプじゃなくてヒラリー・クリントンを選んだ。以上。それが事実だ。今朝目覚めて「自分は最低の国に住んでいる」と思ったのであれば、それは間違いだ。過半数のアメリカ人は、ヒラリーの方が良かったんだ。トランプじゃない。彼が大統領になった、ただ一つの理由は、18世紀に作られた、難解でおかしな「選挙人団」と呼ばれるシステムだ。これを変えない限り、自分が選んでない、望んでもいない奴が大統領になる。この国に住んでいる人の多数が、気候変動を信じ、女性は男性と同じ賃金を払われるべきだと考え、借金をせずに大学に行くこと、他の国に武力侵攻しないこと、最低賃金を上げること、国民皆保険に賛成している。それは何一つ変わっていない。我々は、多数が“リベラル”な考えを支持する国に住んでいる。ただ、それを実現させるリベラルなリーダーがいないのだ(#1に戻って欲しい)。
http://www.huffingtonpost.jp/2016/11/09/michael-moores-5-point-morning-after-to-do-list_n_12891776.html