アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

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 アフガン・イラク戦争も金正日もNO!!搾取・抑圧のない世界を目指して、万国のプレカリアート団結せよ!

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 詳しくは→こちらを参照の事。
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ビルマとネパールの革命

2007年09月29日 08時57分18秒 | その他の国際問題
 かつて80年代から90年代にかけて、アジアの軍事独裁政権が相次いで崩壊していきました。フィリピンのマルコス政権、インドネシアのスハルト政権、韓国の朴正煕・全斗煥・虜泰愚歴代軍事政権、台湾の蒋介石政権、等々。そのアジア民主化の波が、今度はビルマとネパールに及んでいます。

 ビルマ(現国名はミャンマーだが、民主化勢力はこの国名を認めていない)では、この8月からの生活必需品の大幅値上げをキッカケに、僧侶らがまず反政府ボイコットに決起し、それに学生・市民や民主化勢力が合流していき、大規模な反政府デモが旧首都ラングーン(ヤンゴン)を始めビルマ各地で始まりました。軍事政権はそれに対して武力鎮圧で臨み、その過程で日本人記者(APF通信の長井健司氏)が取材中に殺害される事件も起こりました。

 この記者殺害の件で日本政府はビルマ側の対応を非難していますが、私に言わせれば「その前にやるべき事がいくらでもあるのでは、それをさておいて、何を自分だけ良い子ぶって」と思いますね。何故なら、日本も他の大国(中国・ロシア・英国・米国)と同様に、それまでビルマの軍事政権をODAやら何やらで支えてきた当事国の一つであるからです。
 それに歴史上の関係もあります。今のビルマ国軍そのものが、元はと言えば戦時中に日本が育成した反英義勇軍に由来するものなのです(日本の軍艦マーチがビルマでも馴染み深いのはその為)。もっと言えば、ビルマの独立運動そのものが、インドネシアの場合と同様に、最初は日本の力を借りて西欧の植民地支配に抗し、その後は日本の帝国主義的本質も見抜いて反帝・反ファシズムに転ずる中から発展してきたものなのです。しかしビルマが独立後も内紛や少数民族の反乱に悩まされる中で、やがて軍部が政治の実権を握るようになり、それで今に至っているのですから。

 ネパールの場合はもう少し事情は複雑です。この国では60年代の国王クーデターで専制体制が復活して、それが90年代まで続きました。90年代に国民の決起によって一応の民主化が達成されますが、21世紀に入って再び国王側による揺り戻しがあり、それへの抵抗という形で反政府運動が広がり、今や王制廃止・共和制樹立にまで突き進んでいるのです。
 その今回の反政府運動を主導しているのが、90年代の最初の民主化の時期には傍流にしか過ぎなかった毛沢東主義ゲリラ(マオイスト)なのです。但しこのマオイストは今の中国とは無関係で(中国は逆に専制王制に加担してきた)、寧ろ中南米の農民ゲリラの系譜を引くものだと言われています。ネパール共産党の多数派と袂を分った少数派で、当初は国土の一部を支配しているに過ぎませんでした。それが21世紀に入っての国王反動を機に、被差別カーストや今まで虐げられてきた女性の権利を代弁する形で急速に勢力を伸ばし、既成二大政党のネパール会議派や多数派共産党をも凌駕し、今や反独裁運動の主導勢力となっているのです。
 マオイストが真に人民を代弁しているのであれば、それを単なる極左ゲリラとしてしか看做して来なかった私の評価は見直さなければなりません。ただネットなどで民衆集会の運営の仕方を見る限りでは、ポルポト派とも似通ったものをそこに感じてしまうのも事実です。マオイストの詳細については現在調べている所です。
 そして、その中で日本はと言うと、ここでもまた他の大国と同様、国益の名の下に、積極的に国王専制を支えてきました。ODAを供与し、その利益をまた日本に還流させ、日本企業と当事国の独裁政権で利益を山分けし、民衆にはホンの僅かの恩恵しか与えずに。

 どちらにしろ、ビルマとネパールで今起こっている政変劇から明らかな事は、今までは東西冷戦のクビキの下で独裁政権に抑えつけられてきたアジアの民衆が、急速に立ち上がってきている、という事です。今、中南米諸国で席巻している冷戦体制・軍事独裁・寡頭政治・新自由主義に抗する波が、同時にアジアでも起こっているのです。それがやがては、今はテロリストの跳梁跋扈や大国(特に米国・イスラエル)の侵略に抑えつけられているアフガン・イラク・パレスチナや、専制体制や多民族支配を余儀なくされている北朝鮮・東トルキスタンにも波及していく事になるでしょう。上辺だけは「民主国家」を取り繕い、その実デタラメ政治や弱者搾取をし放題の日本の自民党支配も、勿論例外ではありません。 

(参考記事)

※ビルマ(ミャンマー)関連
・ビルマ(ミャンマー)でいま何が起こっているのか?(ビルマ情報ネットワーク)
 http://www.burmainfo.org/essay/tanabe20070927.html
・ビルマの人権と日本のかかわり(同上)
 http://www.burmainfo.org/essay/tanabe20060312.html
・特集 ビルマ(ミャンマー)民主化(JANJAN)
 http://www.news.janjan.jp/world/0709/0709260008/1.php
・アウンサンスーチーとビルマのすべての良心の囚人の釈放のための署名(アムネスティ・インターナショナル)
 http://www.amnesty.org/actnow/myanmar/myanmar_jpn.htm
・長井さん死亡事件、ミャンマー政府に真相究明要求へ(読売新聞)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070929i101.htm

※ネパール関連
・ネパール:王室廃止へ 最大与党が方針転換、共和制に11月移行(毎日新聞)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/news/20070927dde007030071000c.html
・カトマンズ・ジャーナル(小倉清子・アジアプレス)
 http://blogs.yahoo.co.jp/nepal_journal
・ ヒマラヤの毛沢東主義派ゲリラ闘争 小倉 清子『ネパール王制解体』NHKブックス(書評日記 パペッティア通信)
 http://plaza.rakuten.co.jp/boushiyak/diary/20070414/ (前編)
 http://plaza.rakuten.co.jp/boushiyak/diary/20070417/ (後編)
・ネパール政変:「4月革命」と和平協定(拙稿抜粋)(Halkhabar:カトマンドゥの日々 )
 http://blogs.yahoo.co.jp/aaii_jee/11705701.html

※南米左派の動向については下記サイトの各記事を参照。
・ラテンアメリカから見ると
 http://la-news.cocolog-nifty.com/lanews/
・中南米新聞
 http://www.chunambei.co.jp/
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沖縄戦・集団自決の史実隠蔽を許すな 9.29県民大会の成功を!

2007年09月27日 09時10分19秒 | ヘイトもパワハラもない世の中を
 日本本土の大手商業マスコミは福田内閣誕生のニュースで持ちきりですが、沖縄では、この9月29日の午後3時から宜野湾海浜公園で行われる「沖縄戦・集団自決削除の教科書検定意見に抗議する県民集会」に向けて、全県挙げての取組みが進められています。
 沖縄本島のこの集会へは最寄停留所への片道バス運賃を無料とする措置が既に地元バス会社の協力で取られる事になりましたし、本島から遠く離れた宮古島や石垣島でもそれぞれ数千人規模の全島挙げての郡民大会が行われる事になっています。
 福田内閣の渡海・新文科相もこの県民大会の動向には神経を尖らせている様です。ここは是が非でもこの集会を成功させて、沖縄戦・集団自決の史実隠蔽を狙う教科書検定意見の撤回を勝ち取らなければなりません。

・県民大会注視し対応/検定撤回で渡海文科相(沖縄タイムス)
 http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261700_04.html
・嘘のない教科書を 沖国大生・参加呼び掛ける(琉球新報)
 http://ryukyushimpo.jp/modules/news/article.php?storyid=27523
・県内40首長参加へ/9・29県民大会 30自治体で実行委/「軍命明白」続々と(沖縄タイムス)
 http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261700_04.html
・9.29沖縄県民大会特集記事一覧(琉球新報)
 http://ryukyushimpo.jp/news/storytopic-46.html
・バス運賃 片道無料/会場まで県バス協会決定(沖縄タイムス)
 http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709151300_02.html
・緊急講演会 「集団自決」の責任は誰に?/9・29沖縄県民大会 プレ集会@首都圏 開催(沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育を進める会)
 http://susumerukai.web.fc2.com/
・教科書検定に関する意見書(沖縄県議会)
 http://www3.pref.okinawa.jp/site/view/contview.jsp?cateid=194&id=14566&page=1#1
コメント (3)
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東大阪市議選 自公の「不遜な態度」に最初の審判下る

2007年09月25日 22時08分27秒 | 都構想・IRカジノ反対!
 私にとっては、自民党総裁選の茶番劇なんかよりも、こちらの方が遥かに重要なニュースです。9月24日に投開票された東大阪市議選で、長尾市長与党の共産党が全員当選を果たし、前回の議席後退から見事に失地回復を成し遂げ、他党派・無所属も含め、道理の無い市長不信任反対に反対した議員が上位当選する結果となりました。

 選挙で選ばれた市長でありながら、以前にも自民・公明を中心とする市議会野党から嫌がらせ同然の不信任動議を突きつけられ、直後の選挙では落選の憂き目に遭いながらも、その後再び市長に返り咲き、市民本位の施策や公正・民主の同和行政を貫いてきた長尾民主市政。それに対して自公と一部民主の野党議員は、市長提案の予算案にも直前まで殆ど賛成しておきながら、今回もまた、市長不信任動議をドサクサ紛れに出してきて多数の暴力で有無を言わさず通してしまうという暴挙を行いました。直ぐ後に任期満了に伴う通常の市議選が控えているので、いくら市長が議会を解散しても自分たちの腹は痛まず、議員年金も満額貰える事まで計算づくの上での、あくまで党利党略と嫌がらせだけが全ての市長不信任の茶番劇でした。

 それに対する最初の回答が今回の市議選の結果でした。長尾市政と共産党を誹謗する出所不明の怪文書が投票日前日の深夜に市内全域で撒かれるという事態の中でも、民主市政支持派の前進を勝ち取る事が出来ました。この前進をバネにして、本番の出直し市長選挙(10月21日告示、同28日投票)でも見事長尾市長の再選を勝ち取るべく、私も引き続き出来る範囲で応援していきたいと思っています。

(参考資料)
東大阪市議選開票結果(2007年9月23日執行、定数46、立候補52、投票率45.48%)

当 5409 秋月秀夫  57 共元 ○
当 5133 浜正幸   55 共現 ○
当 4930 上野欽示  56 自現   
当 4821 塩田清人  51 共元 ○
当 4726 嶋倉久美子 52 共現 ○
当 4549 大野一博  63 自現  
当 4535 上原賢作  42 共現 ○ 
当 4357 木村正治  34 民現 ○
当 4178 鳴戸鉄哉  54 民現 ○
当 4173 冨山勝成  42 自現
当 4166 内海公仁  51 共元 ○
当 4159 松尾武   44 公現
当 4057 長岡嘉一  38 共現 ○
当 3986 平田正造  57 公現
当 3955 三輪秀一  52 共新 ○
当 3923 浅野耕世  28 共新 ○
当 3910 東口まち子 59 公現
当 3908 広岡賀代子 51 公現
当 3882 田中康升  59 公現
当 3807 山崎毅海  48 公現
当 3739 飯田芳春  57 無現 ○
当 3603 織田誠   63 自現
当 3597 寺田広昭  57 民現
当 3564 江越正一  53 公現
当 3520 横山純児  54 自現
当 3500 藤本卓司  57 自現
当 3498 菱田英継  47 公現
当 3471 新留みつえ 59 公現
当 3438 江田輝樹  53 公現
当 3437 西田和彦  50 公現
当 3427 川光英士  54 公現
当 3308 浅川健造  64 自現
当 3308 笹谷勇介  43 民現
当 3113 田口義明  57 自現
当 2945 天野高夫  61 自現
当 2942 大辻二三一 71 自現
当 2941 松平要   49 新社現 ○ 
当 2862 樽本丞史  39 無新
当 2800 松嶋晃   41 無現
当 2730 鳥居善太郎 52 自現
当 2717 中西進泰  55 無新
当 2706 藤木光裕  50 自現
当 2641 松井保博  49 自現
当 2623 河野啓一  60 自現
当 2514 岡修一郎  32 自現
当 2507 佐野寛   63 自現
  2502 稲田晃祥  41 無新
  2281 阪口克己  46 無現 ○ 
  2048 田崎加奈子 40 無新
  1780 東野勝紀  48 無新
  1219 米田英教  39 無新
   194 西田郁雄  45 無新

※注:
(1) 左から順に当落、確定得票数、候補者名、年齢、所属党派・新旧の別、○=長尾市長不信任案に反対した議員。
(2) 所属党派名:自=自民党、民=民主党(会派名はリベラル東大阪)、公=公明党、共=共産党、新社=新社会党、無=無所属。
(3) ○印(長尾市長不信任案に反対した議員)について:引退議員は除く。反長尾市長だが反自公の立場から今回の市長不信任案には反対した議員も含む。

http://shima-spirits-jcp.cocolog-nifty.com/taiki/2007/09/post_36be.html
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/osaka/news/20070924ddlk27010012000c.html

・1万票増 全員上位当選/東大阪市議選/“市長選も頑張って”(しんぶん赤旗)
 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-09-25/2007092501_01_0.html
・東大阪市議選、日本共産党が9人全員当選!(再追加)(さるのつぶやき)
 http://saru.txt-nifty.com/blog/2007/09/9_231b.html

(関連過去ログ)
・「態度が不遜」なのは一体どちらか?
 http://blog.goo.ne.jp/afghan_iraq_nk/e/173f27e2213cbdf40c2aea62bb800bc4
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なにわB級グルメ探訪8 かしみん焼き

2007年09月23日 16時14分40秒 | なにわB級グルメ探訪
 岸和田だんじり祭りの記事をアップしているうちに、「かしみん焼き」という、地元・岸和田にしかないお好み焼きがある事を知りました。何でも、このお好み焼きは、岸和田市の旧城下町の、その中でも俗に浜手と呼ばれる海側一帯(狭義には府道堺・阪南線より西側)の町内でしか食されていないものなのだそうです。それで早速食べに行ってきました。

 実は、最初は横着して、大阪市内の繁華街・道頓堀の、極楽商店街というネーミングの屋台村にある「かしみん焼き」のお店で済まそうと思ったのですが、そこのメニューにはそれも含めて3種類のお好み焼きしかなく、全然腹の足しにもならなかったので昼食は他の店で済ます事になり、しかも屋台村の入場料も別に取られるわで、はっきり言って「ボッタクられた」様な感じしか残りませんでした。

 それでまた日を改めて出かけたのが、「かしみん焼き」発祥の地と目される本場・岸和田のお好み焼き屋さんです。浜手の旧漁師町の、店の裏には昔の海岸線の防波堤の跡がずっと続いてその先は埋立地の公園・グラウンドという、そういう奥まった所にそのお店がありました。それで入って注文したのが写真の「かしみん焼き」。大(500円)・中(400円)・小(350円)の3つのサイズがあって、私はその小サイズのものと焼きそば(450円)を頼みました。

 「かしみん焼き」の名称は、通常のお好み焼きが豚玉や牛玉を使うのに対して、かしわ(鶏肉)と牛脂のミンチを使う所に由来しています。つまり、「かしわ」+「ミンチ」から転じて「かしみん焼き」となったのです。そして、そのお好み焼きの生地も、大阪でよく食べられる通常のお好み焼きみたいな、ボテッとしてモッチャリしてソースやマヨネーズでギトギト・コテコテのシツコイやつではなく、寧ろ広島焼きに近い感じの、クレープ感覚で食べられるものでした。

 このお店のお好み焼きはみんなそんな感じです。他にも「粉から焼き」という肉玉無しの素のお好み焼き(130円)や、それに玉子を混ぜた「玉子から焼き」(240円)というものもありました。物珍しさもあって、私はその玉子の方も追加注文してしまいました。

 お好み焼きは、大阪の「粉もん」文化を代表する食べ物としてよく引合いに出されますが、私はそのボテッ・モッチャリ感がどうしても好きになれず、今までは余り食べる事はありませんでした。しかし、今回の「かしみん焼き」は、それまでの既成概念を打ち破るもので、なかなか美味で食べやすいものでした。どちらかといえば小食で間食も余りしない私ですら、焼きそばにお好み焼きを2種類も食べても全然胃にもたれませんでしたから。

・道頓堀の屋台村にある「かしみん焼き」屋のHP
 http://www.doutonbori-gokuraku.com/floor/5f/5_9.html
・岸和田の発祥の地と目されるお店のルポ
 http://d.hatena.ne.jp/TouchOut/20070529 
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「シッコ」も過ぎれば嫌味になる?

2007年09月21日 23時49分35秒 | 映画・文化批評
 先週の休みに、マイケル・ムーア監督の映画「シッコ」を観てきました。
 実は当初私は、ムーアの映画は以前の「華氏911」で充分堪能したので、この映画は「別に強いて観なくても良いや」という気でいました。そんな私の気が変わったのが、この8月29日に奈良県で起きた下記の妊産婦救急たらい回し事件のニュースを聞いてからです。いざ産気づいた時に20箇所近くの病院をたらい回しにされた挙句に死産という、このニュースを聞いて思ったのは、これは決して米国の医療保険の問題だけに限ったことではない、日本の医療の現実をも鋭く告発した映画ではないのか、という事です。私も、産科のお世話になる事こそ無いものの、今までも腎臓結石で救急搬送された事もあり、また腰痛を抱えていたりもするので、これは自分にとっても決して他人事ではないぞと、次第にそういう思いが頭をもたげてきました。それでこの映画を観る事にしました。

・救急搬送中に妊婦死産/医師不足、揺らぐ産科医療(東奥日報)
 http://www.toonippo.co.jp/tokushuu/danmen/danmen2007/0830.html

 それで映画を観た感想ですが、やはり頭の中でうろ覚えで知っていた事と、実際に映画で観た事は大違いでした。米国には日本や西欧諸国の様な公的医療保険制度は基本的には無く(低所得者・高齢者向けの限られたものは一応あるがその内容は貧弱)、数千万人単位の無保険者がいる事や、残りの被保険者も営利本位の民間医療保険によるものが大半を占める事など、一応それなりの知識は持ってはいたものの、正直言って下記ほど劣悪な環境にあるとは思ってもみませんでした。

・仕事中の事故で薬指と中指を切断したが、その治療費が薬指は1.2万ドルで、中指が6万ドル。高額な中指の方はくっつけるのを諦めざるを得なかった(上記写真参照)。
・80歳近い老人になってもスーパーの清掃夫として死ぬまで仕事に追われる。会社の健康保険に入っていなければ薬代すら払えないから。
・支払能力の無い無保険者は、金の切れ目が命の切れ目。救急車で病院から外に出され、点滴を付けたまま車椅子ごと路上に放り出される。
・骨髄移植でドナーが現れても、保険会社があれこれ難癖を付けて保険金を支払わかったばかりに手術を受ける事が出来ず、助かる命も助からなかった。

 その中でも圧巻だったのが、2001年911テロで救援活動に携わり現場の塵埃で気管支や肺をやられた救急士や市民ボランティアが、対テロ戦争の英雄として当初こそ祭上げられたものの、その後は一切の公的救済の埒外に置かれ苦しんでいる姿です。そんな犠牲者たちをムーアが引率して、はるばるキューバのグアンタナモ米軍基地にまで押しかけて、拘束中のテロ容疑者と同じ治療を受けさせろと強訴に及ぶ。しかしその願いも空しく追い返されるものの、キューバの医師から手厚い看護を受けて、見事快方に向かう場面です。

 これをキューバのプロパガンダと決め付けるのは簡単ですが、自国民の愛国戦士すら利用するだけ利用した後は平気で見殺しにする米国に、それを非難する資格はありません。米国では、公的保険や社会保障・社会福祉を要求する運動は、今までも全て医薬品業界や保険業界の圧力によって、悉く潰されて来ました。業界団体はロビー活動や政治献金によって政治を支配し、社会保障や生存権を要求する者を悉く「社会主義者・アカ」呼ばわりしてきました。そういうマッカーシズム(アカ攻撃)が、一攫千金を夢見る征服者による先住民侵略の米国建国の歴史とも相まって、この国を途方も無い資本家天国に仕立てあげてきたのです。

・「シッコ」で描く医療の現実(上)(関係性)
 http://green.ap.teacup.com/passionnante/121.html
・マイケル・ムーア作品「シッコ」公開へ;米医療制度を批判(花・髪切と思考の浮游空間)
 http://blog.goo.ne.jp/longicorn/e/b401f0e7ba1543e7a83e1a209dd61fb3

 但し、ムーアは別に共産主義者でもないし、この映画も別に社会主義を賛美したものではありません。それは、ムーアが米国医療に対するアンチテーゼとして提示したのがソ連ではなく、米国と同じ資本主義国である仏・独・カナダの公的医療や社会福祉や市民社会の在り様である事からも伺えます。キューバの医療・福祉が肯定的に描かれているのも、別にキューバが社会主義国だからではなくて、西欧市民社会と同じ連帯の精神をそこに見出したからに過ぎません。映画の中に挿入されたフランスでの解雇自由化法案反対デモのシーンと「米国では国民は政府を恐れるがフランスでは政府が国民を恐れる」という小噺の紹介や、下記に示された数々の現場取材記録が、それを象徴的に物語っています。

・カナダでは、先の米国の例の様な「薬指と中指の縫合の一体どちらを切り捨てるか」などという悪魔の選択を強いられるような事は無い。患者をきちんと健康体に戻すのが医師としての当然の責務であって、米国で行われているような治療を行うと逆に刑事責任に問われる。
・カナダ国境近くに住む米国人の中には、カナダ人と偽装養子縁組までしてカナダの保険証を手に入れ、取締りの目を欺きながら国境を越えてカナダに通院する人もいる。
・英国の公的医療にはそもそも「治療費を請求する」という概念が存在しない。病院には確かに会計窓口はあるが、それは治療費請求の為のものではなく、通院にかかった交通費を逆に患者に支払う為のものだ。

 上記が、これでもサッチャーの新自由主義改革で相当ダメージを受けたと言われる英国の公的医療制度の、これが現実なのだそうです。これを見せつけられて今更ながら、米国や日本の市民が如何に「途方も無いお人好し」であるかを、つくづく痛感させられました。誰が見ても低福祉・低人権の状況を「これが当たり前」と思い込まされているのですから。

 但し、この欧州の例も手放しで賛美は出来ません。欧州の社会福祉が日本や米国よりは相対的に恵まれた状況にあるのは、市民革命以来の相互扶助の伝統も勿論ありますが、それ以上に、過去の帝国主義時代に植民地からの搾取によってもたらされたものである、という一面もあるからです。そして、昨今のグローバリゼーションの進展によって、これらの福祉制度が、実は先進国の中産階級以上だけに限られたものでしかなかった事も、次第に白日の下に晒されるようになってきました。翻って日本の現実はどうか。折角国民皆保険を実現したのもつかの間、それが歳月とともに突き崩され、高齢者や低所得者が保険の網から締め出され、今や米国の後を追う様にして大量の医療・介護・お産難民が生まれるような状況が広がっています。

・「シッコ」で描く医療の現実(下)(関係性)
 http://green.ap.teacup.com/passionnante/122.html
・後期高齢者医療制度のポイント(くらた共子HP)
 http://www.tomoko-kurata.jp/hibijoho07/0707ihoken75.html
・NHKスペシャル取材班・佐々木とく子著「ひとり誰にも看取られず 激増する孤独死とその防止策」(阪急コミュニケーションズ)
 http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000031928553&Action_id=121&Sza_id=G1&Rec_id=1008&Rec_lg=100812
・アフラック宮崎あおい、アリコ国仲涼子に惑わされない医療保険加入のポイント(My News Japan)
 http://www.mynewsjapan.com/kobetsu.jsp?sn=614
・民間医療保険は公的保険に代われるか、その特徴と問題点(全国保険医団体連合会)
 http://hodanren.doc-net.or.jp/kenkou/minnkann-hokenn.pdf

 ・・・とまあ、以上がこの映画を観た感想なのですが、これには後日談がありまして、この映画を観た数日後に、職場の休憩時間の雑談で何かの折に、(どういう経緯でそうなったのかはもう忘れましたが)確か私がこの映画の事を喋った時です。その時に相方のバイトが言った言葉が何と「××(私の本名)さん、そんな映画を観るのが好きですねえ」だった・・・。この相方のバイト君は確かに何の変哲も無いゲーム好きの青年なのですが(実は旧掲示板で登場した「亡国のイージス」ゲーム好きの青年が彼)、他のB層封建親父とは違ってムーアや井筒和孝の映画もそれなりに観る人でもあったので、この反応には正直言って、少しガッカリした覚えがあります。
 その時に彼が言ったのが「反体制宣伝も過ぎると嫌味になる」という理屈です。曰く、マイケル・ムーアも、映画「ボウリング・フォー・コロンバイン」で米国の銃社会を告発したのまでは良かったが、その後も「華氏911」や今回の「シッコ」と、告発モノばかり制作して、これを金儲けの道具にしているだけだ、と。

 確かに、ムーア作品にはそういう「ある種のプロパガンダ臭が感じられる」という批評が、実際に映画界の一部にもある事は事実でしょう。ムーアの映画は、ドキュメンタリーにエンターテイメントの手法も取り入れているので(アポ無し突撃取材の多用など)、観る人によってはかつての写真週刊誌「フライデー」「フォーカス」と同じセンセーショナリズムを其処に感じる場合もあるでしょう。それならそれで、誇張されたと思う部分を割り引いて観ればそれで済む話だと、私は思うのですが。
 それをも通り越して、徒に反体制に「節度」や「自制」や「行儀の良さ」を求められてもねえ(勿論これは暴力肯定とかとは別の意味合いです)。そんな事になればもうその時点で、ムーア映画は一介の退屈な勧善懲悪ドラマに堕してしまいます。また、そんな「行儀良さ」を求める人に限って、体制側の「節度・自制の無さ」「行儀の悪さ」には事の外寛大であったりするのですが。

 何でこんな、イラク日本人人質・拉致家族会バッシングにも通じる、「節度」や「自制」や「自己責任」論に安易に流れていくような論理が絶えず出てくるのか。日本社会特有の「お上と長いものには巻かれろ」「みんな横並び・没個性・過剰適応」「下見て暮らせ傘の下」の風潮から来ているのかもしれません。また私の話の持って行き方にも問題があったのかも知れません。

 この問題は引き続き解明が必要だと思っています。ただ現時点で一つだけ言える事は、「彼は今の日本の状況しか知らないので、それが当たり前だと思っている」「そして、それを基にして、自分や他者が恵まれているかそうでないかを判断している」という事です。
 先の、英国の患者から治療費を受け取らずに逆に患者に通院交通費が支払われている現実や、以前に自分の職場でも仲間内でちょっとした論争になった「最低時給千円の要求は、果たして途方も無いものか否か」(ちなみに、こんな要求は独・仏ではとっくに実現されている)を知っていたら、彼の反応もまた違ったものになるのでは。実際その時も、「そんな映画を観るのが好きですねえ」と言われた後も構わず彼に上記の事例を話していくと、彼の反応がそれまでとは心持ち微妙に変っていった様に思いました。
 勿論先述した様に、この社会保障・医療保険の欧州モデルも必ずしも最善のものだとは言えないかも知れません。しかし、少なくとも米国モデルよりは遥かに人間的で理に適ったものである事だけは確かです。

・映画「シッコ」公式サイト
 http://sicko.gyao.jp/
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自民党総裁選について言及するのはこれが最初で最後

2007年09月21日 08時14分43秒 | 安倍第1次投げ出し政権
 最近、ブログ更新が滞りがちになっています。書きたい事は幾つもあるのですが、生来の邪魔くさがりの気が出るのか、なかなか筆が運びません。それに加えて、数日前の仕事でまた少し腰痛が出てきてしまっています。仕事に差し支えるほどでもないので、出勤の合間に整体・鍼灸治療に通っています。それで、ブログの方もついつい執筆を見送ってしまうという事になっています。
 そういう訳で、長尾民主市政への党利党略・嫌がらせ不信任決議に憤って自分から申し出ていた東大阪市議選・市長選の応援も、今日はひとまずキャンセルして、まずは安静第一で今日の休みを過ごそうと思っています。

 それで記事更新に取り掛かった最初の話題は、まずは何と言っても標題の件ですが、はっきり言って「ウザイ、ウットウシイ」の一言。NHKも民放も、いつまでこんな自民党のCMみたいなニュースばかり垂れ流しているんでしょうか。

 まず以って、如何に与党と言えども所詮は一政党の党首選挙にしか過ぎない「内輪話」に、何で一方的にこんなに延々とつき合わされなければならないのか。それも、党員でも支持者でもなく選挙権も無い「蚊帳の外の話」に。別にそんなニュースなど見なければ良いし勿論見向きもしませんが、こちらがいくらその気でいても向こうから嫌でも目に入ってくる分については避けようが無い、それが実に鬱陶しい。

 それでその党首選挙に二人の候補者が出ている訳ですが、その候補者たち自身ですら「自分たちは所詮は似た者同士でそんなに政策の差は無い」と公言しているにも関わらず、やれ誰それは「タカ派」だの「媚中派」だのと、尤もらしくニセ対立を演出して、無理やり関心や同情を引こうとするマスコミの世論操作や、それに呈よく乗せられたB層の軽薄さが目に付いて仕方が無い。

 そして一番呆れるのは、その二人の候補者のどちらもが小泉・安倍政治をそのまま引継ぐネオコン・ネオリベそのものだと言うこと。なるほど、二人ともこれまでの政策の「影の部分にも光を当てる」とか「手直し、微調整」にも言及していますが、そんなモノは世論の手前そう言っているだけにしか過ぎない事など、ハナから見え見えで。二人とも「これからも米国言いなりを続ける」「消費税も上げる」と、基本的な部分では言っている事は全く一緒じゃないか。
 あれだけ、参院選で小泉・安倍政治に「NO!」を突きつけられて、政権投げ出しの醜態にまで追い込まれても、自民党は全然懲りていない。懲らしめる為には、更に超ド級のモノを、もっと次々とお見舞いしてやらなければならない様です。もうアホくさくて、この件についてはこれ以上書く気にもなれない。以上、これが標記の件に関する私の立場表明。

・国連アフガン決議:「謝意」盛り込み、安倍首相が直談判(毎日新聞)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20070921k0000m010136000c.html

 しかも上記の記事の様に、いくら安倍が退陣しても、こんな「感謝のヤラセ」まで国連にさせて、相変わらず恥を海外にまで晒しているのだから、もはや付ける薬無し。この国連決議の問題にしても、「米軍主導の軍事作戦(OEF)はダメだが国連安保理お墨付きの国際治安部隊(ISAF)なら良い」という形式論ではなくて、あくまでもその内容について議論すべきでしょう。たとえそれが国連主導であったとしても、「テロリストとのイタチゴッコに止まっている限りテロは無くせない」という事が、イラクでもアフガンでも今一番問われている事なのに。まあ、口を開けば事ある毎に「テロとの戦い」を公言していた当の本人自らが、「自爆テロ」で政権を放り投げているのだから、お話にもなりませんが。
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元祖サウンドデモ

2007年09月18日 22時34分40秒 | 身辺雑記・ちょいまじ鉄ネタ
 上記は9月16日(日)に撮った今年の岸和田だんじり祭りの写真。上で舞っているのが大工方(だいくがた)で、団扇でだんじりの進む方向を指図します。だんじりを前で引っ張ったりブレーキをかけたりする集団が前梃子(まえてこ)、後ろでスピードを調節したり舵取りの役目を担っている集団が後梃子(うしろてこ)、だんじりに乗って笛や太鼓をたたいている集団が鳴り物(なりもの)です。当日も私は仕事だったのですが、出勤前の合間を縫って岸和田まで出掛けていって撮ってきました。急いで撮ったので、あまり上手く写せませんでしたが。

 この9月の岸和田のだんじりは、あくまで浜手(南海本線より海側の旧城下町を中心とした地域)の祭りです。山手(それよりも山側の岸和田市域全て)のだんじりは10月にまた別途あります。また、だんじり祭りは岸和田のそれが特に有名ですが、その他の周辺市町村でもそれぞれ別の日にだんじり祭りが行なわれます。但し岸和田ほどの全市挙げての熱狂的なものではありませんが。

 この岸和田(浜手)のだんじり祭りも、今でこそ土曜・日曜に合わせて行なわれるようになりましたが、数年前までは曜日・天候など一切無関係に、それこそ雨が降ろうが槍が降ろうが、とにかく9月14日・15日と、祭礼の期日は決まっていました。勇壮で荒っぽい事で有名なお祭りで、毎年といっていいほど負傷者が(時々死者も)出ていました。軒下にぶつかったり電柱を倒したりも日常茶飯事で、過去にはパトカーがひっくり返されたりした事もあったそうな。ここまでいくと、サウンドデモと言うよりはもうカルチェラタンと言った方が近いかも。

(参考資料)
・だんじり祭り(お祭りチャンネル)
 http://matsuri.yosanet.com/kinki/osaka/danjiri/
・岸和田たんじり祭り 年番公式サイト
 http://www.danjiri-nenban.com/index.html
・岸和田だんじり祭り(岸和田市)
 http://www.city.kishiwada.osaka.jp/danjiri/Index.html
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安倍政権は実は親中国・北朝鮮だった?

2007年09月17日 01時51分32秒 | 北朝鮮・中国人権問題
 安倍政権退陣のニュースは多くの海外メディアも競って取り上げました。余りにも無責任な退陣の仕方も含め、今までが今までだったので、メディア論調の中には辛辣な批評も少なくはありませんでした。その中で私が一際目を引いたのが、中国政府筋による意外なまでの安倍政権に肯定的な評価です。私たちの目から見たら安倍も麻生もゴリゴリの靖国派・改憲派なのですが、中国にとってはまた違うようです。麻生に対しては露骨に警戒心を示す中国が、こと安倍首相に対しては、「右翼政治家」というよりは寧ろ「小泉時代の冷え切った日中関係を立て直した功労者」として見ている様なのです。

 安倍政権が成立後にまずやった事は、中国・韓国訪問による両国との関係正常化でした。だから、「安倍政権は、実は言われているほど『右翼的』な政権ではなく、意外と『親中国・韓国・北朝鮮』なのだ」とか、「『戦後レジームからの脱却』というのは、あくまでもグローバルなレベルでの海外派兵・対米追従志向を指すのであって、ことアジア地域に限っては中国・北朝鮮などの『特定アジア』とも適度に『対話と圧力を使い分けて行こう』としている」という見方も、実は少なからずあります。
 では実際はどうなのか。私も含めてボロクソに貶しまくった安倍政権ですが、本当に「それほど右翼的な政権ではなかった」のかどうか。この事については、左右からそれぞれ特徴的な意見が出されています。

 まず右の方からの一例として、下記の荒木和博ブログの見解を示しておきます。これは特定失踪者調査会代表の荒木氏のブログですが、そこで述べられているのは「安倍政権は、確かに拉致問題への取組みを売りにしてきたが、それは決して『拉致を隠蔽してきた構造』との闘いの中で揉まれてきたものではない、表向きの売りとは裏腹に、その構造にうまく乗る中で誕生してきたのだ」「だから最後に『拉致を隠蔽してきた構造』に足元を掬われたのだ」というものです。
 この『拉致を隠蔽してきた構造』には様々なものが含まれているようです。「戦後レジーム」もそれに含まれるでしょう。「憲法9条が愛国心のない国民を生み北朝鮮の拉致を許してきたのだ」という理屈です。その中では小泉構造改革や格差社会への批判も見られますが、それは「弱肉強食の新自由主義やワーキングプアへの搾取に対する怒り」というよりは寧ろ「古き良き日本をぶっ壊した者への怒り」という形で示されている様な気がします。

 これはこれで面白い見方だと思いますが、私はこの見解には組しません。寧ろその次のブログ「きまぐれな日々」の見解を基本的に支持します。これは、「政治右派の安倍・靖国派は、最後には日本を実質的に支配している経済右派の財界・新自由主義派に飲み込まれたのだ」とする見解です。

 戦後日本の、取り分け80年代以降の日本の保守政治には、大きく分けて二つの流れがあります。一つは、右翼・国家主義的・復古主義的な流れ。今の平和憲法を変えて「戦争の出来る国」にしようという、新保守主義(ネオコン)に近い流れです。もう一つは、アンチ福祉国家で市場万能・弱肉強食・競争至上主義の新自由主義(ネオリベ)の流れです。かつてはこの他に第三の、福祉国家や軍縮を志向する流れも少数ながらありましたが(石橋湛山・宇都宮徳馬・三木武夫など)、残念ながらこの流れは、保守派の中では遂に日の目を見る事はありませんでした。

 後者ネオリベの「民営化・自由化」推進の流れと、前者ネオコンの国家統制を強める流れとは、一見すると互いに対立するように見えます(実際に対立を演出したりもします)が、根本的な所ではネオコン・ネオリベの両者は同じ立場に立ち、相互に補完し合っています。それは、ネオリベの言う「自由」とか「規制緩和」というのが、誰にとっての物であるかを考えれば直ぐに分ります。それはあくまでも一握りの大資本家や国際資本にとっての「自由」でしかありません。それ以外の中産階級やもっと下のワーキングプアからの自由・人権の要求に対しては、ネオコンが説く愛国心や奴隷道徳の力を借りて、それを抑え込もうとするのです。

 ただ、大資本・国際資本・ネオリベの考え方はあくまで「カネ儲けが全て」なので、儲けの為にはどこの国や勢力とも取引をします。基本はあくまで米国とですが、それだけでなく中国・北朝鮮・その他の国とも取引をします。そういう中においては時として、ネオコンや靖国派の余りにも復古的で時代錯誤な路線が自分たちの商売の邪魔になる場合も出てきます。今回の安倍政権崩壊も、自業自得とも言える自身の度重なる失策や選挙での惨敗で力の弱まったネオコン・靖国派に対し、米国・国際資本・ネオリベが仕掛けた内ゲバ・クーデターであるというのが、この見方です。

 この「経済右派に対する政治右派の敗北」という捉え方の方が基本的には正しいと思いますが、但しその中の、「より警戒すべきなのは政治右派であって、それと比べれば、どちらを取るかと迫られたらまだ経済右派の方がマシ」というくだりについては、私はちょっと賛成しかねます。
 確かに言いたい事も分らないではありません。なるほど「ルペンとシラク、石原と浅野、戦前日本と今の米国の、それぞれどちらを選ぶ?」と言われたら(どちらも嫌、もっと別の道があるという正論はここでは一旦度外視する)、私もしぶしぶ後者の方を選ぶかも知れません。しかし、それはあくまで個々の選択肢の内容によります。「日本独自の核武装か日米軍事一体化か、どちらの軍事国家・監視社会を選ぶか?」「ギロチンか電気椅子か、どちらの処刑を望むか?」なんて問いに対しては、「どちらかを選ぶ」なんて事などは出来ません。そんなもの「どちらも嫌」に決まっています。
 
 今のポスト安倍の自民党総裁選レースにしてもそうです。小泉・ネオリベ派の福田か、安倍・靖国・ネオコン派の麻生か、そのどちらを選ぶと言われてもねえ。単純に「しぶしぶ福田を選ぶ」とか「福田の方がまだマシ」とかいう理屈にはなりません。消費税の問題一つ見ても、両者の立場は共に「増税止む無し」で、同じ穴のムジナなのですから。逆に麻生が首相になっても、参院選で示された民意を悉く踏みにじって一瀉千里に改憲へまっしぐらといくら当人が思っても、そう簡単に問屋が卸さないのは福田の場合と同じで、それならば突っ込み所の多い麻生の方が寧ろやり易いとも言える訳で。

 それで「政治右派vs経済右派」の話に再び戻します。「安倍政権は実は親中国・北朝鮮だったのか?」という最初の問いですが、これは「何を以って親中国(北朝鮮)とするのか」という事が一番肝心なのであって、それ抜きにして抽象的に「親か反か」を議論しても全く意味が無いでしょう。経済右派も政治右派も、本音では中国・北朝鮮の低賃金・無権利労働者は喉から手が出るほど欲しいのです。環境規制も、今と同じ緩々の方が良いのです。その方が自分たち国際資本・財界が彼の地にも進出して勝手放題出来るし、ODAや地球温暖化ガス排出権取引に見られる如く、それを商売や利権山分けの具にしたり出来ますから。それで裏でツーツーの取引をしながら、表向きは相手はあくまでも「人権蹂躙の社会主義国」「悪の枢軸」として、自国民を国内の人権蹂躙から目を逸らせ排外主義を煽り盲目的な政府支持に回らせる事の出来る、そういう存在でなければならない。それは政治右派も経済右派も基本的には同じです。

 つまり、小泉・福田=経済右派・ネオリベも安倍・麻生=政治右派・ネオコン・靖国派も、「中国・北朝鮮の低賃金・無権利労働者は喉から手が出るほど欲しい」場合には「親中国・北朝鮮」であり、「自国民を国内の人権蹂躙から目を逸らせ排外主義を煽り政府支持に回らせる」必要がある場合には「反中国・北朝鮮」と、TPOによって立場を使い分けているだけなのです。

 そうであるならば、それに対する政治左派(反ネオコン、平和・民主主義志向)・経済左派(反ネオリベ、人間尊重・生存権重視)の本来的立場は明快です。例えばこの強制労働紛いの事例に見られるような中国・北朝鮮の人権蹂躙には、平和・人権や社会主義本来の立場からもっと抗議の声をあげつつ、同時に政府・財界の排外主義扇動や搾取合理化の企てをも許さないようにする事。これに尽きます。この見地が、今まではまだまだ言葉倒れで終わり甚だ不十分だった事は否めませんでした。

 しかし、それはまた同時に右派にも跳ね返ってくる言葉でもあります。右派が本心から中国・北朝鮮の人権状況を憂いているのであれば、日本国内での年金問題、政治とカネ、格差社会に対する人間としての当然の怒りに対してまで「おカネ三点セット」として貶めて恥じないような醜い立場には、少なくとも立つべきではないでしょう。北九州市の生活保護遺棄餓死事件やグッドウィルのデータ装備費ピンハネ問題などへの怒りを、単なる我執・欲得話としてしか見れないネットウヨクの戯言など、誰が聞く耳を持ちますか。

(参考記事)
・「甘やかされた子供」=仏ラジオ局-安倍首相辞任で(時事通信)
 http://news.goo.ne.jp/article/jiji/world/jiji-12X916.html
・安倍政権1年、ひどい1年は辞任で幕(フィナンシャル・タイムズ)
 http://news.goo.ne.jp/article/ft/politics/ft-20070913-01.html
・海外メディア+韓国メディアがみるアベシ辞任。(メディアは流石だなぁ、と思っています。今!)(晴天とら日和)
 http://blog.livedoor.jp/hanatora53bann/archives/51054583.html
・安倍退陣を巡る中国マスコミの論調(NNAより)
 関係改善を評価、外交部報道官
 http://nna.asia.ne.jp/free/tokuhou/070912_tyo/07/0912h.html
 関係改善は評価、「次は麻生」
 http://nna.asia.ne.jp/free/tokuhou/070912_tyo/07/0914a.html
・日本の姿勢は「建設的」 北朝鮮の宋日昊大使が会見(共同通信)
 http://www.47news.jp/CN/200709/CN2007090801000611.html
・安倍総理の辞任表明について(荒木和博BLOG)
 http://araki.way-nifty.com/araki/2007/09/post_f21c.html
・「経済右派」が「政治右派」の安倍晋三を征圧した(きまぐれな日々)
 http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-446.html#comment2057
・自民総裁選:消費税率引き上げは検討課題 共同会見(毎日新聞)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070916k0000m010079000c.html
・北、モンゴルに労働力 外貨狙い1000人規模も(産経新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070910-00000900-san-int
・安倍辞任に思ふ(福田 逸の備忘録―独断と偏見)
 http://dokuhen.exblog.jp/m2007-09-01/

(拙ブログの過去の関連記事から)
・安倍政権異聞
 http://blog.goo.ne.jp/afghan_iraq_nk/e/e09e1b859a242847ca7e0a060fa4cb7d
・安倍と御手洗が説く愛国心の反人民的本質
 http://blog.goo.ne.jp/afghan_iraq_nk/e/29ff0419eee71cf4ed589d052b293b47
・酷い言い草
 http://blog.goo.ne.jp/afghan_iraq_nk/e/843f1180b662b2e3f735149640922bef
・北朝鮮問題にどう向き合うか―私なりの結論
 http://blog.goo.ne.jp/afghan_iraq_nk/e/728fd979e94b77924f2727909ff6bfc4
・空気が読めず自分の身に即して考える事の出来ない人たち
 http://blog.goo.ne.jp/afghan_iraq_nk/e/1241212f1f136e43a7f5b3816ab6fa7a
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ジャンクフード de フェアトレード

2007年09月15日 00時39分11秒 | 身辺雑記・ちょいまじ鉄ネタ
 最近ランチを食べに入った「すき家」の店舗で、上記写真の「東ティモール・コーヒー販売」の広告を見つけました。この販売活動は、フェアトレード協賛活動の一環として、NGO団体のピース・ウィンズ・ジャパン(PWJ)と有志企業の手で行われているものです。

 フェアトレードというのは、多国籍資本が第三世界の貧しい農民から農産物を買叩いて暴利を貪るのではなく、農民がきちんと自活していけるだけの適正な生産者価格に基づいて、生産者も消費者も満足のいく公正な取引を広げていこうという、謂わば国際産直とも言うべき運動です。その一環として、独立前後の内戦の傷跡が未だ癒えない東ティモールの農民を応援するために、ご当地原産のコーヒーを販売しているのです。

 これに牛丼チェーンの「すき家」が協力しているのです。私は食事を済ませた後、レジで東ティモールへの募金を申し出たのですが、残念ながら店員の方が何も知らなかったので、何も出来ずじまいでした(`д´)。

 まあ「すき家」といえば、大阪ではまだあまり馴染みが無いですが、ジャンクフードではありながらも、全国的にはファミリー牛丼チェーンとして、「吉野家」や「松屋」よりは少しお洒落なコンセプトで店舗展開している企業です。ハンバーガー・チェーンで言えば、マクドに対するモスバーガーみたいな感じで。だから企業イメージアップの為に、こういう事「も」しているのでしょう。

 これはこれで、「安かろう悪かろう」の米国産牛肉の野放図な輸入には組していない点と併せて、「すき家」の評価できる所です。しかし如何せん、グローバル資本の例に漏れず、この企業イメージも、残業代未払いに見られる如く、ワーキングプアの低賃金・違法労働で成り立っているのです。これはいただけません。また、本気でフェアトレードを実践するのなら、自分の所の価格設定や、ジャンクフード供給の業態そのものを見直さなければ、ウソになりますね。フェアトレードを云々するのに自分の所がアンフェアではお話になりません。

 ここは営利企業の「すき家」に対してではなく、あくまでも東ティモールを初めとする第三世界人民の経済的独立と、日本ワーキングプアの権利確立を応援するという意味で、この企画に声援を送ります。これこそ本当の「国際貢献」であり「テロとの戦い」なのです。他にもやれる事は幾らでもあるでしょう。しかしブッシュや安倍がやっている「テロとの戦い」なるものは、それらの取組みに悉く背を向けた、単なる「テロリストとの妄動」であり「帝国主義者によるもう一つのテロ」に他なりません。

(参考記事)
・「すき家」での東ティモールコーヒー販売、850店舗に拡大(PWJ)
 http://www.peace-winds.org/jp/news/archives/070625_1830.html
・東ティモールについて知る(同上)
 http://www.peace-winds.org/jp/labo/timor.html
・フェアトレードとは
 http://www.peopletree.co.jp/fairtrade.html
・「すき家は残業代を法律どおり払え!」
 首都圏青年ユニオンの記事 
 http://www.seinen-u.org/
 レーバーネットの記事
 http://www.labornetjp.org/news/2007/0224/
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ホンマに辞めてまいよった・・・(呆)

2007年09月13日 09時04分00秒 | 福田第2次投げ出し政権
※昨日9月12日に、安倍首相がとうとう辞意を表明しました。参院選で示された「小泉・安倍政治NO!」の声に抗い、APEC首脳会議や国会での所信表明演説で盛んに続投表明して、それを受けての野党の代表質問が始まる当日にいきなりの、無責任極まる政権投げ出し劇です。安倍政権は遅かれ早かれ辞任に追い込まれるだろうとは思っていましたが、正直言って、ここまであっけない展開になるとは予想だにしてませんでした。とりあえずは、拙ブログ記事「どこまで庶民をバカにするつもりか」での自己コメント投稿を、こちらにも転載しておきます。

ホンマに辞めてまいよった・・・(呆)
投稿者:プレカリアート 投稿日:2007-09-13 00:04:01

以下、安倍晋三の首相辞意表明で揺れた本日一日のドキュメントを、地の関西弁で。

 午前10時半頃、職場に出勤。
 11時の始業時間までに休憩室で早めの昼食を済ませておく。この時に、青年社員のKさん(当ブログ読者)に、この「家庭だんらん法」の話題をふる。
 私「Kさん、今度は舛添がホワイトカラー・エグゼンプションでアホみたいな事を言いよったん、知ってる?」
 K「ああ、家庭だんらん法やろ。あれ、お笑いやな。せやけど、あれは絶対、自民党が舛添に言わしてんねんで。」
 私「それって、観測気球を上げてるって事?単なる舛添のポカやないの?」
 K「そうや。自民党は今でも本気でホワイトカラー・エグゼンプション導入を考えているで(私:その通り!)。年金や特措法も大事やけど、マスコミはもっとこの事を取り上げなアカンで。」

 午後2時過ぎの休憩時間に休憩室で。
 私、携帯インターネットで掲示板を閲覧中。
 私「(ボソッと)安倍さんが辞めると言ったらしいで。」
 隣に座っていた同僚バイトのFさん「えっ、ホンマ?」
 私「ほらこれ(と言って、携帯の画面を見せる)」
 後ろのパソコンで配車業務をしていたK課長「何?安倍さんが辞めるって?」
 私「この2時から記者会見やってるらしいですわ。」
 K課長「ほお、TV付けてみ。」
 Fさん、やにわに休憩室のTVをつける。記者会見の場面が流れる。安倍首相、しきりに「テロとの戦い」という言葉を連発。「辞任の直接の引き金は民主党の小沢党首に党首会談を断られたから」とも。
 私「子どもみたいな言い草やな。駄々っ子じゃあるまいし。」
 K課長に、横で座っていたB層親父まで、たった一言吐き捨てるように「早よ辞めさらせ!」
 私「ひょっとしたら、裏でアメリカから、『お前なんかに任せとったんではテロ特措法一つ満足に通らへんやないか』という形で、引導を渡されていたのかも。」「自分が辞めて、それで今までの事を全部ウヤムヤに出来るとでも、思ってんか?甘いわ。それやったら、まるでトカゲの尻尾切りやないか。」「未練たらしく二言目には『テロとの戦い、々々』言うとるけどさあ、このオッサン、イラク戦争は正しかったとか、今でも本気で思とるんやろな。せやなかったら、こんな発言出てきーひんで。」
 Fさん「何かもう、ムチャクチャやなあ。あれだけ選挙で負けても辞めんかったくせに、また何を今頃になって・・・。」「郵政民営化反対で離党した人らを、自分らの都合だけで、また勝手に復党させたりしとったやろ。あれも響いてるん違うか。」
 私「首相指名選挙で今度は誰がなるんやろか?麻生かなあ。それやったら、安倍と何も変らへんやないか。こんなトカゲの尻尾切りばっかり、もうええわ。」

 みんなその場で30分ぐらいTVに釘付け。お陰で休憩時間が余分に取れました。

(参考記事:適宜追記)
・政府与党は「ど~しても給油継続」新法作りを+桝添は「残業代ゼロ」を「家族団らん」法案と呼びかえ(日本がアブナイ!)
 http://mewrun7.exblog.jp/6445021
・安倍首相の辞任表明についての「許すな!憲法改悪・市民連絡会」の声明
 http://www.annie.ne.jp/~kenpou/seimei/seimei99.html
・安部晋三代表質問から逃亡、辞意表明(アッテンボローの雑記帳)
 http://rounin40.cocolog-nifty.com/attenborow/2007/09/post_c37f.html
・「安倍辞任=首のすげ替え=トカゲの尻尾切り」であってはならない!(津久井進の弁護士ノート)
 http://tukui.blog55.fc2.com/blog-entry-492.html
・忌避すべきは「空気が読めない」よりも「空気支配」(ペガサス・ブログ版)
 http://blog.so-net.ne.jp/pegasus/2007-09-12
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