アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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尖閣諸島は沖縄人のものだ

2010年09月26日 19時07分03秒 | 戦争・改憲よりも平和・人権
■まずはじめに

 ちょうど前号の沖縄エイサー祭りの記事を書いている時に、尖閣諸島での中国漁船による領海侵犯事件が起き、やれ「中国では反日世論が盛り上がっている」だの「日本も対抗して軍備増強に着手しなければならない」なぞという意見が、マスコミを通して盛んに流されました。私はすぐにピンと来ましたね。「今、沖縄で盛り上がっている普天間基地撤去の運動に冷水を浴びせかける為の情報操作だな」と。
 だって冷静に考えたらそうじゃないですか。尖閣諸島の領有権を巡り日本と中国・台湾が対立しているのは事実ですが、それで本当に戦争にでもなってしまったら、三国とも元も子もなくなってしまうだけではないですか。第二次大戦前のブロック経済の時代ならいざ知らず、これだけ経済の国際化や資本の多国籍化が進んだ現代の東アジアでは、戦争で得する国なんてどこもありません。だから尖閣諸島に関しては日中間では領土問題は棚上げ・継続協議でガス田共同開発の話も進んでいたし、今回の事件でも米国が介入して船長釈放という曖昧な形での決着となったのでしょう。
 しかし、それでは日米の軍需産業や防衛族議員は収まらないし、中国の方でも一旦火がついた反日世論を鎮めるのは難しい。だから船長釈放後も中国は虚勢を張り続け、「死の商人や政治家たち」も今回の事態を軍拡や憲法改正に向けての世論作りにしきりに利用しようとしているのでしょう。

 勿論、中国とて完璧な国家ではありません。全面戦争は流石に避けるでしょうが、日本みたいな属国には高飛車に出てきます。それは何も中国だけではありません、台湾・ロシア・米国とてみな同じです。その中で日本は戦後ずっと米国の属国としてやって来た。せっかく平和憲法で高邁な理想を掲げながら、それを北欧諸国のように実際に実行に移すだけの意欲もノウハウも全然積んで来なかった。これは米国がそれを許さなかったからですが、それに甘んじてきた日本自身の問題でもあります。
 これでは足元を見透かされて当然です。では平和国家として今からでも遅まきながらその意欲やノウハウを積んでいこうとしているかというと、さにあらず。前世紀の日清・日露戦争や戦前の大日本帝国の頃からちっとも進歩していない政治家が、「今は心ならずも米国の属国として中国に対抗しながら、最後には中国も米国もやっつけるのだ」と、息巻いているだけではないですか。私はそんなものに巻き込まれるのはゴメンです。

■尖閣諸島についての基礎知識

 では本論に入る前に、一旦頭の中を整理しておきましょう。まずは「尖閣諸島って一体どこにあるねん?一体どんな所やねん?」という話から入ります。
 下記がその位置関係図です。尖閣諸島は、沖縄本島からはかなり西方の、ちょうど台湾からも石垣島からも等距離の所にある、3つの島と5つの岩礁からなる島々です。主島の魚釣島(中国名:釣魚嶼)こそ海抜300mほどの山があり水場もあるものの、それでも東西3キロ半、南北2キロほどの小島にしか過ぎません。その他はもう島というよりは岩場です。尖閣諸島という名称の由来も、幕末・明治維新の頃に日本にやってきた英国海軍の海図にピナクル・アイランズ(直訳すれば尖った岩の島々)とあったのを、そのまま日本名に置き換えたものです。
  
  
※上記下段の写真は左が魚釣島、右が南小島と北小島。上段の地図も含め、いずれも「尖閣諸島の領有権問題」というサイト様からの出典です。

 元来いずれの島々もずっと無人島でしたが、明治末期に福岡県出身の古賀辰四郎という人が開発に乗り出して、一時は200名ほどの人々が移住してアホウドリの羽毛採取や鰹節工場の作業に従事していました。しかし絶海の孤島の不便さ故にか、第二次大戦が始まる頃にはまた無人島に戻ってしまいました。
 第二次大戦後は沖縄付属の島々として、一部は米軍の射爆場にされてしまいましたが、1972年の沖縄返還と同時に日本領土に復帰しました。しかし、それと前後して行われた資源探索によって石油・天然ガスの豊富な埋蔵量が明るみになるにつれて、周辺国の中国や台湾も尖閣諸島の領有権を主張し始めました。そして、それに対抗して暴力団住吉会系の日本青年社という右翼団体が、勝手に島に私設灯台を作ったり(後に国に譲渡)ヤギを放し飼いにして自然の生態系を狂わせたり、それにまた対抗して台湾や香港の住民が勝手に上陸したり、といった事が繰り返されるようになりました。

■日中両国の主張対比

 中国側の主張は、井上清・京大教授の「尖閣」列島--釣魚諸島の史的解明という論文に依拠したものです。上記リンクをクリックすれば論文の全文が読めますが、その論拠を簡単にまとめると凡そ下記のような内容になります。

(1)中国側の古文書には尖閣諸島の名がたびたび登場するのに対して、日本・琉球側の古文書にはその名が殆ど出てこない。それは尖閣諸島が沖縄から見て逆風の位置にあり、順風で比較的容易にたどり着ける中国・台湾とのつながりのほうが強かったからだ。
(2)唯一日本側の記録で登場するのが江戸時代の兵学者・林子平が書いた「三国遊覧図説」だが、その添付地図には尖閣諸島は中国領として分類されている。下図がその添付地図で、下の赤色の土地が中国大陸、中央の黄色が沖縄本島。その間にある飛び石状の島々が今の尖閣諸島で、中国と同じ赤色に彩られている。
 
(3)明治時代に入り、初めて日本人の手で尖閣諸島への移住と開発が行われるようになったのは事実だが、明治政府は当初清国の目を気にして領有には消極的だった。それが日清戦争の勝利で台湾を植民地にしたのに乗じて、尖閣諸島もこっそり沖縄県に編入したのだ。それが再び無人島となった今も既成事実として引き継がれている。

 それに対する日本側の反論は、主に奥原敏雄・国士舘大学教授の説を参考にしています。前述の「尖閣諸島の領有権問題」サイトのページにも収められています。下記がその要旨です。

(1)中国側古文書の記載はいずれも航海上の目印として記されたものでしかなく、それを以って領有の証とする事は出来ない。
(2)「三国遊覧図説」添付地図の色分けの件も、当時中国から沖縄の琉球王朝にやってきた冊封使が書いた「中山傳信録」という書物の地図をそのまま転載したからに過ぎない。
(3)当時は帝国主義の時代であり、たとえ相手の隙に乗じて領有を主張したとしても、それが当時の国際法である「無住地先占の法理」(所有者のいない土地は先に取ったモン勝ち)に則ったものである限り、誰もそれを咎める事は出来ない。だから第二次大戦の敗戦で日本が台湾・朝鮮の植民地支配を放棄した際も、尖閣諸島については沖縄帰属の日本固有の領土として、米国から沖縄と一緒に返還されたのだ。(下記写真は有人島だった頃のもので、アサヒグラフ'78年5月5日号からの出典)
 
(4)中国も台湾も60年代末までは尖閣諸島の日本領有には何ら異を唱えなかった。中国・台湾が尖閣諸島の領有権を主張するようになったのは60年代末に石油・天然ガスの埋蔵が確認されてからであり、いわば「後出しジャンケン」の理屈でしかない。

■この問題では与野党間に大きな意見の違いはない

 この尖閣諸島の領有権問題については、与野党間で大きな認識の違いはありません。下記にその代表例として政府見解と共産党の見解を載せておきましたが、その他の主要政党についても基本的な立場は同じです。「中国に対抗して尖閣諸島に軍事基地を」とかいう右翼や、「尖閣諸島も台湾・朝鮮と同様に日本帝国主義が簒奪した領土だ」という一部新左翼の主張もあるにはありますが、それはあくまでも少数派です。

・尖閣諸島の領有権についての基本見解(外務省)
 尖閣諸島は、1885年以降政府が沖縄県当局を通ずる等の方法により再三にわたり現地調査を行ない、単にこれが無人島であるのみならず、清国の支配が及んでいる痕跡がないことを慎重確認の上、1895年1月14日に現地に標杭を建設する旨の閣議決定を行なって正式にわが国の領土に編入することとしたものです。
 同諸島は爾来歴史的に一貫してわが国の領土たる南西諸島の一部を構成しており、1895年5月発効の下関条約第2条に基づきわが国が清国より割譲を受けた台湾及び澎湖諸島には含まれていません。
 従って、サン・フランシスコ平和条約においても、尖閣諸島は、同条約第2条に基づきわが国が放棄した領土のうちには含まれず、第3条に基づき南西諸島の一部としてアメリカ合衆国の施政下に置かれ、1971年6月17日署名の琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定(沖縄返還協定)によりわが国に施政権が返還された地域の中に含まれています。以上の事実は、わが国の領土としての尖閣諸島の地位を何よりも明瞭に示すものです。(以下略)
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/index.html

・日本の領有は正当/尖閣諸島 問題解決の方向を考える(しんぶん赤旗)
 所有者のいない無主(むしゅ)の地にたいしては国際法上、最初に占有した「先占(せんせん)」にもとづく取得および実効支配が認められています。日本の領有にたいし、1970年代にいたる75年間、外国から異議がとなえられたことは一度もありません。日本の領有は、「主権の継続的で平和的な発現」という「先占」の要件に十分に合致しており、国際法上も正当なものです。(中略)
 同時に、紛争は領土をめぐるものを含め「平和的手段により国際の平和、安全、正義を危うくしないように解決しなければならない」のが、国連憲章や国連海洋法の大原則です。その精神に立って日本外交には、第一に、日本の尖閣諸島の領有権には明確な国際法上の根拠があることを国際舞台で明らかにする積極的活動が必要です。・・・中国側も、事実にもとづき、緊張を高めない冷静な言動や対応が必要でしょう。 
 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-09-20/2010092001_03_1.html

■「無住地先占の法理」は果たして万能か?

 以上今まで長々と説明してきましたが、さてここからが私の問題意識です。それが冒頭でも少し述べた、この問題に対する「平和国家としての意欲やノウハウ」も踏まえた上での「21世紀の今の時代に相応しい解決の仕方」です。前号記事からブログ更新に大分間が空いたのも、一つにはこの問題についてずっと考えてきたからでした。
 私にはどうもこの「無住地先占の法理」(所有者のいない土地は先に取ったモン勝ち)がひっかかるのです。一見常識的な内容であり、主要政党間では与野党・左右を問わず大差がないこの論理ですが、これでは19世紀の帝国主義の考え方とさほど違わないのではないでしょうか。確かに字面だけを捉えれば対象はあくまで「無住地」に限定されており、そういう意味では西欧のアジア・アフリカ侵略、日本のアジア侵略などの「有住地」に対するものではないかも知れません。しかし、コロンブスによる新大陸発見以来の数百年に渡る南北アメリカ大陸征服の歴史や、南アフリカにおけるアパルトヘイト(人種差別政策)の源流になったボーア人によるアフリカ進出も、最初はこんな西部開拓物語のような「無住地先占の法理」から始まったのではないですか。19世紀のアラスカで起こったゴールドラッシュなんてその典型ではないですか。中国のチベット・ウイグル侵略も、無人で未開の処女地を切り拓くという大義名分の下に行われているではないですか。

 政府から共産党まで一致して錦の御旗のように掲げている「古賀辰四郎による開発」という既成事実にしても、これは裏返せば県外の人間(古賀は福岡県人)による「ゴールドラッシュ」ではないですか。
 何故ここまで書くかというと、実際、同じ沖縄県の大東諸島の開発が「ゴールドラッシュ」そのものだったからです。大東諸島は沖縄東方約350キロの海上にあり、南・北・沖の3つの大東島から構成されています。そのうちの南北両島は、今でこそそれぞれ南大東村と北大東村に属し航空路も開かれていますが、そこは戦前は島全体が玉置商会という個人企業の私有地で、そこに進出した本土資本の製糖会社によって「蟹工船」さながらの原始的な搾取が行われていました。そして戦後にやっと住民からの陳情によって村政施行・地方自治の運びとなったのです。
 そして今はもう21世紀です。数百年に渡り白人支配下にあったカナダの原住民イヌイット(旧名エスキモー)も、今やヌナブト準州自治政府の下で広汎な自治権を獲得しました(ヌナブトとは現地語で我々の土地という意味)。沖縄も薩摩藩によって侵略されるまでは琉球王国として独自の歴史をたどって来ました。このグローバル化の時代にかつての大日本帝国や戦後の東西冷戦時代の論理なぞもはや通用する筈がありません。徒に中国と軍拡を競うよりも、沖縄を自治州にして、尖閣諸島の石油・天然ガスを財源に充てれば、基地依存なぞ完全に断ち切ることが出来る筈です。沖縄と同規模の面積・人口の独立国も世界には決して少なくありません。例えばインド洋の島国モーリシャスもその一つですが、元英領植民地だったこの国も、今や観光立国として立派にやっていけています。

 元々、沖縄の米軍基地は沖縄や日本を守るためにあるのではなく、米国が世界のどこにでも自分の好き勝手に殴りこむためにあるのです。そして基地収入の県財政に占める割合もたった5%にしか過ぎません。今や基地は犯罪の温床であり開発の足かせでしかありません。そんな基地に依存するぐらいなら、沖縄をヌナブトのような自治州にして天然資源も自分たちで使えるようにしてこそ初めて、中国の軍拡やチベット・ウイグル侵略に対しても武力ではなく道義で圧倒出来るのではないでしょうか(チベットもウイグルも自治は形のみなのだから)。それでこそ21世紀の現代に相応しい平和創造のモデルといえるのではないでしょうか。
 今や経済がますます国境の枠を超えて拡大し、カナダ極北民族も立ち上がりつつあるこの脱帝国主義の時代に、日本も中国も何を下らない意地の突っ張りあいをしているのかと思いますね。未だにそんなレベルに止まっているのは、後は北朝鮮かタリバン・アルカイダぐらいのものです。
   
※写真は左が南大東島の製糖工場(出典:南大東島HP)、右地図の赤色部分がヌナブト準州(出典:ウィキペディア)。

【参考記事】

・悪化する日中関係、尖閣諸島漁船衝突事件をブロガーたちはどう見た?(ブログ・ウォッチ)
 http://blog.livedoor.jp/blogwatching/archives/51683907.html
・釣魚島(尖閣諸島)問題と過激化する海上保安庁の領海警備:領土主義の危険~労働者人民の国際連帯のために(虹とモンスーン)
 http://solidarity.blog.shinobi.jp/Entry/777/
・シュクシュクボーシが啼く民主党「害交」 (つぶやき:尖閣諸島問題編)(大脇道場)
 http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-1896.html
・日本は外交的弱点を克服できるんでしょうか? (「尖閣諸島中国漁船衝突事件」をめぐって)(村野瀬玲奈の秘書課広報室)
 http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-2007.html
・(追記)転載:尖閣諸島問題を利用した国家主義、排外主義に反対する!(立川テント村声明)
 http://blog.goo.ne.jp/afghan_iraq_nk/e/740fc332119cc95c965b1b4cfb6ada5e
コメント (17)
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