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自力で勝ち取ったクリスマスプレゼント

2021年12月29日 11時00分32秒 | 職場人権レポートVol.3

今年の秋、私は職場の安全点検アンケート(いわゆるヒヤリハット調査)用紙に、「関連会社社員の危険行為を止めさせて欲しい」と書いて会社に出しました。私たちは、スーパーの物流センターの中で、隣の加工室でカットされ、ケースに詰められ台車に積まれて持って来た野菜を、店別に仕分けして待機場所まで運ぶ作業に従事しています。ところが、加工室の社員の中に、非常に乱暴な人がいて、野菜の積まれた台車を危うくぶつけられそうになったり、台車がぐちゃぐちゃに置かれたりするので、非常に仕事がやりにくいです。何とかして下さい…と、アンケートに書いて出しました。わざわざ手書きではなく自宅のパソコンに打ち込んで提出したのも、会社に改ざんされるのを防ぐ為です。(参考記事

しかし、いくらアンケートに書いて提出しても、事態は全然改善されませんでした。商品は中途半端に置きっぱなしにされるわ、加工室の出口の所に置きっぱなしにされるわ、午後から出す商品を午前中の商品仕分け場所に持って来られるわ。そんな状態が、その後もずっと続いていました。

私の勤めるスーパーの物流センターでは、私も含めて色々な下請け業者が、商品の検品・仕分け・積み込み・配送業務を行っています。業者の中には迷惑行為や危険行為を行う人たちも少なくありません。しかし、相手が違う会社の社員だと、うちの会社はなかなか注意してくれません。それを放置して、形だけの安全点検なぞやった所で、事故やミスが防げる訳がありません。

相手が違う会社の社員だと、何故こうも及び腰になってしまうのか?その社員とは、雇用関係にない為に、うちの会社の権限が及ばないからです。その為に、注意一つするにも、うちのバイト→うちの社員→うちの責任者→スーパーの責任者→相手の会社の責任者→相手の社員と、何重ものステップを踏まなければなりません。そんな手間のかかる事は誰もしたくはありません。

もし相手に強気に出て、その後でこちらのミスで相手に迷惑かけてしまったら、もう面目丸つぶれです。現実には相手の方が、はるかにこちらに迷惑かけていたとしても、です。こちらが相手に迷惑かける確率がゼロでない以上は、責任者としては、余り相手に強くは出られない。そんな「事なかれ主義」の責任者ばかりなので、こんな無法がまかり通ってしまうのです。

ましてや、その相手が先日起こった西梅田クリニック放火事件の容疑者みたいな人物だったとしたら、もう踏んだり蹴ったりです。実際、その後のマスコミ報道によると、容疑者はコンプレックスの塊のような人物でした。親の後を継いで鉄工所で働いていたのは自分の方なのに、自分は短気なものだから接客には向かないと、兄の方が親の後を継ぐ事になってしまった。そこから世を逆恨みし、次第に周囲に当たり散らすようになり、遂にこんな事件を引き起こすまでになってしまった…。容疑者の生い立ちをかいつまんで言えば、このようにまとめる事が出来るかと思います。

兄弟間で差別された事については同情の余地はあるものの、それも自分の短気な性格ゆえのもの。身から出た錆でしかない。それを逆恨みして、周囲に八つ当たりして、家庭内暴力や殺傷沙汰まで引き起こすとは、もはや言語道断です。翻って、私の勤める物流センターのくだんの社員も、生い立ちの詳細は不明ながらも、すぐに逆ギレしたり、自分はちゃらんぽらんな仕事しか出来ないくせに、他人には偉そうな物言いをする所なぞ、西梅田の放火事件容疑者とも非常によく似ています。(参考記事

しかし、それでは現場の労働者は堪ったものではありません。事は自分の身の安全にかかわる問題です。もし、それで商品を積んだ台車をぶつけられて、ケガさせられてしまったら、一体どうなりますか?痛い上に、仕事を休まなければならなくなるし、日常生活も満足に出来なくなってしまいます。たとえ労災で休業補償が下りたとしても、現役時代の収入より減るのは確実です。

そんな事になってはかなわないので、こちらも一計を案じました。その乱暴な社員が休みの日に、他の社員に聞いて、「ここまでなら大丈夫」という所に床に線を引き、警告書も張り出して、そこより手前には商品を入れさせないようにしました。そして、うちの会社にも、「もう、これでやるから」と言って、半ば強引に了承を取り付けました。

確かに、これは、あまり褒められた方法ではありません。施設の管理権はスーパーにあり、私たちは、そのスーパーから仕事をいただいて収入を得る下請け業者に過ぎません。それに対して、私の取った方法は、下請け業者のバイトが、管理権もないのに、施設の共有スペースに一方的に線を引いて、占有権を主張したようなものですから。

相手の乱暴な社員が、ナイフを持って暴れたりすれば、これはもう刑事事件になります。もう、そうなれば管理権もクソも関係ありません。そんな社員を野放しにしていた相手の会社や、それを黙認していたスーパーやうちの会社も、等しく刑事責任が問われる事になります。でも、「うっかり台車を相手に当ててしまった」程度では、単なる過失で終わってしまい、逆にこちらが過剰防衛に問われる可能性すらあります。

だから、私は相手を見て、この方法を取ったのです。相手は直ぐに逆ギレするモンスター社員ですが、強い者には何も言えず、弱い者に当たり散らすしか能のない内弁慶です。その程度の奴に、こちらがいつまでも下手に出ていたのでは、ますます増長するばかりです。「事なかれ主義」の職場では、このように強気に出た方が、「事なかれ」で意外とすんなり物事が通る事が多いのです。

やってみたら、これが大成功。こちらが何も言わなくても、相手はこの線よりも中には、台車を持ってこようとはしませんでした。左上の写真が以前の状態です。それに対して、右上の写真が線引き後の状態です。境界線からわずかにはみ出てはいますが、以前よりもはるかに作業スペースが確保できるようになりました。

そして、しばらく様子を見ていたら、その乱暴な社員は、もう堪らず「もうこれ以上は置けないので、台車をそちらに入れて良いですか?」と、泣き言を言うようになりました。他の社員は全然そんな事言わないので、台車が置けなくなったのも、そいつの段取りが悪いからですが。それでも、今までの「そこのけ、そこのけ、俺様の台車が通る」状態とは大違いです。

それに対して、私は「じゃあ、ここまでなら良いよ」という事で、境界線を少し左側にずらしてやる事にしました。主導権はあくまでこちらが握った上で、少し譲歩してやったのです。

モンスター社員は、強い奴には何も言えない。弱い奴に当たり散らすしか能がない。それは「事なかれ主義」の上司も同じです。そんな相手に対しては、こちらも強気に出るに限ります。へたに下手に出ていても、余計に増長するだけです。それでは、いつまで経っても改善出来ません。施設管理権よりも、従業員の身の安全を図る方が優先です。モノよりも人命が優先。

下請け労働者は年末年始も仕事で、盆も正月も関係なく、クリスマスイブとも無縁ですが、この「自力で勝ち取ったクリスマスプレゼント」の方が、誰かから与えられたクリスマスケーキよりも、はるかに良い思い出になりました。

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