少し遅くなりましたが、下記のニュースについても。いずれも、是非記事に取り上げなければ、と思っていた事です。
・第17代大統領に李明博氏、10年ぶりの政権交代(YONHAP NEWS)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/pe/2007/12/19/9200000000AJP20071219005500882.HTML
・大統領選:李明博氏、531万票差で圧勝(朝鮮日報)
http://www.chosunonline.com/article/20071220000007
・保守への政権交代か 韓国大統領選挙まで1週間(上)(JANJAN)
http://www.news.janjan.jp/world/0712/0712127145/1.php
・左右イデオロギー対立の終焉 韓国大統領選挙(下)(同上)
http://www.news.janjan.jp/world/0712/0712130164/1.php
・疑惑よりも経済手腕 新大統領は保守ハンナラ党(半島浪人レポ)
http://blog.livedoor.jp/yorogadi/archives/51043090.html
まず最初は韓国大統領選挙の話題から。然る19日に行われた第17代韓国大統領選挙で、保守野党ハンナラ党のイ・ミョンバク(李明博)候補が、中道左派連立与党・大統合民主新党のチョン・ドンヨン(鄭東泳)候補に圧勝しました。民主化後の90年代後半に野党に転落したハンナラ党が、これで再び与党に返り咲く事になりました。
このニュースは日本でも多くのマスコミが取り上げました。その中でも、とりわけ産経・読売などの右派メディアは「国民の保守回帰」という論評を早速流していますが、私はこの見方は余りにも皮相的過ぎると思っています。
何故ならば、今の韓国与党は確かに反軍政・民主化運動の流れを引継いだ人たちで構成されていますが、これは単に反軍政というだけであって、その中には保守から中道左派までいます。韓国左翼は寧ろ、民主労働党に代表されるように、与党を左から批判しつつも、さりとて旧軍政勢力(ハンナラ党)に組するような真似だけはしない、という立場に立っています。
つまり、今の韓国与党は保守穏健派、せいぜい中道左派といった所で、決して左翼革新政権なんかではありません。北朝鮮に対して宥和的だとも言われていますが、これも与党に限った事ではありません。ハンナラ党も、程度の差こそあれ、今や同じ立場に立っています。そういう意味ではハンナラ党も、かつての軍政色は陰を潜め、今や中道右派政党に衣替えしたといって良いでしょう。
イラク参戦・米軍再編協力についても、与野党のどちらも韓米同盟維持の立場に違いはありません。今の韓国与党を敢えて日本の例に準えるならば、かつての細川政権時代の非自民連立与党や今の小沢民主党の様なものでしかありません。
今回の韓国大統領選挙の争点になったのは、イ・ミョンバク(李明博)候補の株価操作関与疑惑などもありましたが、基本的には格差社会問題でしょう。
韓国では日本以上に経済格差が広がっています。彼の国の全労働人口に占める非正規雇用の割合は、今や日本の3割台をも遥かに凌ぎ、5割台にも達しようとしています。その上、民主化されてまだまだ日の浅い韓国では、日本以上に前近代的労使関係が蔓延り、それに今の経済グローバル化・新自由主義化の影響も加わり、あちこちで露骨な搾取や不当解雇がまかり通っているのが現状です。
先日のNHKスペシャル・ワーキングプア特集第3弾の「海外のワーキングプア特集」番組でも取り上げられていた、ヒュンダイ(現代)百貨店のパート解雇問題一つとっても、それがよく分かります。せっかく非正規雇用規制法案が成立しても、その施行前に非正規職の大量解雇を断行し、経営者はそれがさも当然であるかのように、「日本の企業家も同じ事をするだろう」などと言い放っているのですから。これはもうホリエモンやグッドウィル会長の折口と同じで、会社の経営責任や従業員の生存権の事など、全然眼中に無いのです。片や政府も政府で、基本路線が新自由主義に賛成なものですから、それ以上は何も言わないし、しない。
そんな中で、現実の格差拡大には何ら有効な手が打てず、相変わらず「民主化継続か軍政復活か」の旧来の枠組みにしがみついていた政府与党が、今回とうとう有権者から見放されたという事でしょう。大統領選挙の投票率が史上最低だったのも、今まで民主化を支持し、キム・デジュン(金大中)やノ・ムヒョン(盧武鉉)に投票してきた層が、今回はかなり棄権に回ったからでしょう。
それで「保守派」のイ・ミョンバク(李明博)に今回お鉢が回ってきたのですが、この人は元々ヒュンダイ(現代)財閥の会長だった人です。それが、ソウル市長時代にドブ川の暗渠だったチョンゲチョン(清渓川)を親水遊歩道として復活するなどして、目に見える部分で人気を博してきた事もあって、「この人の企業家としての手腕に期待しよう」という事で当選したのです。先述のパート解雇断行の親玉でありながら。敢えて日本の政治家に例えるならば、「韓国の小泉純一郎」ともいうべき人物でしょう。
そして、その「韓国の小泉純一郎」圧勝の呷りを受けて、かつての保守本流たる「韓国の安倍晋三」イ・フェチャン(李会昌、旧ハンナラ党総裁)候補は、今回は僅か15%ほどしか得票出来ずに惨敗しました。だから、今回の大統領選の結果は、決して<保守回帰>なんて復古的なものではなくて、それよりも寧ろ<格差社会批判を逆手にとってのネオリベ(新自由主義)勢力の巻き返し>とも言うべきものです。
ここで誰しも疑問に思うであろう事は、<格差社会批判が争点になりながら、なぜ新自由主義者が大統領に当選したのか?>という事でしょう。更に言えば、その経済格差拡大をもたらした90年代後半のアジア通貨危機と韓国のIMF傘下入りの時に与党だったのが、何を隠そう当のハンナラ党自身であり、その時の危機に有効に対処し得なかったが為に、その後の選挙で民主化勢力(今の韓国政権与党)の後塵を拝する破目に陥ってしまったのでしょう。それなのになぜ新自由主義者が当選したのか?
それに対しては、私は次の様に見ています。韓国は軍政時代から外資を導入して高度経済成長を続けてきた。遅れていた民主化への歩みも80年代後半からは本格的に始まり、今もその実現過程にある。その後90年代後半のIMF危機などで一頓挫あったが、それもどうやら乗り越えた。今後も経済の上昇と民主化は続くだろう。丁度、昭和30年代・40年代の日本がそうであった様に。そういう中で、日本の例に準えるならば、60年安保闘争後の池田内閣の登場と、橋本不況や森KY政権の後の小泉政権の出現という、らせん状の社会変化が、韓国社会で同時に進行しているのではないか、と。
つまり韓国では、日本が戦後60年余りかけて経験した政治の民主化、経済の高度成長、経済のグローバル化、新自由主義への流れが、同時並行で進んでいるのです。だから、88ウォン世代と総称される韓国ワーキングプアのうちの、少なくない人々が「コリアン・ドリーム」実現の夢を託してイ・ミョンバク(李明博)を支持し、残りの人たちも経済無策で「民主化支持」一辺倒のチョン・ドンヨン(鄭東泳)には愛想を尽かしたのでしょう。
もとより、新自由主義者で規制緩和論者のイ・ミョンバク(李明博)では、経済格差は広がりこそすれ縮まる事はありません。韓国民衆も早晩それに気付く筈です。日本でも、高度経済成長や細川政治改革、小泉改革の化けの皮が次第に剥れていったのと、同様に。
以上俯瞰してみて気付く事は、韓国政治と日本政治のある種の相似性とともに、韓国政治の意外な健全さです。確かに韓国は、日本以上に縁故社会で賄賂が蔓延り、儒教社会特有の封建制もそこかしこに残存しています。しかし、その一方でイ・ミョンバクはソウル市長時代にチョンゲチョンを実際に復活させました。それだけでも、ウソとハッタリの道路公団民営化・郵政民営化や「美しい国」の謳い文句だけで票を掠め取った小泉や安倍よりは、まだよっぽどマシでマトモに見えます。
「歴史はらせん状に発展する」というのは、元々はドイツの哲学者ヘーゲルや英国の歴史家トインビーの言葉だそうで、社会発展史(史的唯物論)の重要な命題の一つでもあります。その言葉の意味する所は、「歴史は単なる同じ事の繰り返しではない」「一見そう見える事柄でも、実はらせん階段を上るように、確実に変化発展しているのだ」という事ですが、今回の韓国大統領選挙の流れを見るにつけても、今更ながらその事を強く感じました。
同様の「歴史のらせん状発展、社会発展史」は、そのお隣の北朝鮮でも、下記のニュースから垣間見る事が出来ます。情報鎖国社会で官製報道一色だった北朝鮮にも、脱北者が触媒となって、北朝鮮の民衆自身が参加・情報発信する独立系メディア「リムジンガン」が、遂に誕生したのですから。この動きが、芽吹く事無くしぼんでしまうのか、はたまた北朝鮮人民自身の手によるジャーナリズムとして広がっていくのかは、全て今後の活動・支援如何にかかっています。
・韓国大統領選挙と『リムジンガン』(朝民研)
http://www.asiavoice.net/nkorea/2007/12/post_223.html
・北朝鮮からの通信 リムジンガン
http://www.asiapress.org/rimjingang/
このニュースは、先の韓国大統領選挙の陰に隠れて余り目立ちませんでしたが、社会の根本的変革を促すものとして、ある意味では、所詮は為政者交代劇でしか無い大統領選挙よりも、もっと重要なニュースであるとも言えるのではないでしょうか。既にケソン工業団地を舞台とした南北の経済交流が実際に始まっています。この「リムジンガン」創刊については、その流れとも相まって、南北朝鮮それぞれの政治支配者の思惑をも乗り越え、真に民衆と社会の自由化・民主化に繋がる動きにしていかなければなりません。映画「パッチギ」の中で歌われた同名の曲の様に。
・第17代大統領に李明博氏、10年ぶりの政権交代(YONHAP NEWS)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/pe/2007/12/19/9200000000AJP20071219005500882.HTML
・大統領選:李明博氏、531万票差で圧勝(朝鮮日報)
http://www.chosunonline.com/article/20071220000007
・保守への政権交代か 韓国大統領選挙まで1週間(上)(JANJAN)
http://www.news.janjan.jp/world/0712/0712127145/1.php
・左右イデオロギー対立の終焉 韓国大統領選挙(下)(同上)
http://www.news.janjan.jp/world/0712/0712130164/1.php
・疑惑よりも経済手腕 新大統領は保守ハンナラ党(半島浪人レポ)
http://blog.livedoor.jp/yorogadi/archives/51043090.html
まず最初は韓国大統領選挙の話題から。然る19日に行われた第17代韓国大統領選挙で、保守野党ハンナラ党のイ・ミョンバク(李明博)候補が、中道左派連立与党・大統合民主新党のチョン・ドンヨン(鄭東泳)候補に圧勝しました。民主化後の90年代後半に野党に転落したハンナラ党が、これで再び与党に返り咲く事になりました。
このニュースは日本でも多くのマスコミが取り上げました。その中でも、とりわけ産経・読売などの右派メディアは「国民の保守回帰」という論評を早速流していますが、私はこの見方は余りにも皮相的過ぎると思っています。
何故ならば、今の韓国与党は確かに反軍政・民主化運動の流れを引継いだ人たちで構成されていますが、これは単に反軍政というだけであって、その中には保守から中道左派までいます。韓国左翼は寧ろ、民主労働党に代表されるように、与党を左から批判しつつも、さりとて旧軍政勢力(ハンナラ党)に組するような真似だけはしない、という立場に立っています。
つまり、今の韓国与党は保守穏健派、せいぜい中道左派といった所で、決して左翼革新政権なんかではありません。北朝鮮に対して宥和的だとも言われていますが、これも与党に限った事ではありません。ハンナラ党も、程度の差こそあれ、今や同じ立場に立っています。そういう意味ではハンナラ党も、かつての軍政色は陰を潜め、今や中道右派政党に衣替えしたといって良いでしょう。
イラク参戦・米軍再編協力についても、与野党のどちらも韓米同盟維持の立場に違いはありません。今の韓国与党を敢えて日本の例に準えるならば、かつての細川政権時代の非自民連立与党や今の小沢民主党の様なものでしかありません。
今回の韓国大統領選挙の争点になったのは、イ・ミョンバク(李明博)候補の株価操作関与疑惑などもありましたが、基本的には格差社会問題でしょう。
韓国では日本以上に経済格差が広がっています。彼の国の全労働人口に占める非正規雇用の割合は、今や日本の3割台をも遥かに凌ぎ、5割台にも達しようとしています。その上、民主化されてまだまだ日の浅い韓国では、日本以上に前近代的労使関係が蔓延り、それに今の経済グローバル化・新自由主義化の影響も加わり、あちこちで露骨な搾取や不当解雇がまかり通っているのが現状です。
先日のNHKスペシャル・ワーキングプア特集第3弾の「海外のワーキングプア特集」番組でも取り上げられていた、ヒュンダイ(現代)百貨店のパート解雇問題一つとっても、それがよく分かります。せっかく非正規雇用規制法案が成立しても、その施行前に非正規職の大量解雇を断行し、経営者はそれがさも当然であるかのように、「日本の企業家も同じ事をするだろう」などと言い放っているのですから。これはもうホリエモンやグッドウィル会長の折口と同じで、会社の経営責任や従業員の生存権の事など、全然眼中に無いのです。片や政府も政府で、基本路線が新自由主義に賛成なものですから、それ以上は何も言わないし、しない。
そんな中で、現実の格差拡大には何ら有効な手が打てず、相変わらず「民主化継続か軍政復活か」の旧来の枠組みにしがみついていた政府与党が、今回とうとう有権者から見放されたという事でしょう。大統領選挙の投票率が史上最低だったのも、今まで民主化を支持し、キム・デジュン(金大中)やノ・ムヒョン(盧武鉉)に投票してきた層が、今回はかなり棄権に回ったからでしょう。
それで「保守派」のイ・ミョンバク(李明博)に今回お鉢が回ってきたのですが、この人は元々ヒュンダイ(現代)財閥の会長だった人です。それが、ソウル市長時代にドブ川の暗渠だったチョンゲチョン(清渓川)を親水遊歩道として復活するなどして、目に見える部分で人気を博してきた事もあって、「この人の企業家としての手腕に期待しよう」という事で当選したのです。先述のパート解雇断行の親玉でありながら。敢えて日本の政治家に例えるならば、「韓国の小泉純一郎」ともいうべき人物でしょう。
そして、その「韓国の小泉純一郎」圧勝の呷りを受けて、かつての保守本流たる「韓国の安倍晋三」イ・フェチャン(李会昌、旧ハンナラ党総裁)候補は、今回は僅か15%ほどしか得票出来ずに惨敗しました。だから、今回の大統領選の結果は、決して<保守回帰>なんて復古的なものではなくて、それよりも寧ろ<格差社会批判を逆手にとってのネオリベ(新自由主義)勢力の巻き返し>とも言うべきものです。
ここで誰しも疑問に思うであろう事は、<格差社会批判が争点になりながら、なぜ新自由主義者が大統領に当選したのか?>という事でしょう。更に言えば、その経済格差拡大をもたらした90年代後半のアジア通貨危機と韓国のIMF傘下入りの時に与党だったのが、何を隠そう当のハンナラ党自身であり、その時の危機に有効に対処し得なかったが為に、その後の選挙で民主化勢力(今の韓国政権与党)の後塵を拝する破目に陥ってしまったのでしょう。それなのになぜ新自由主義者が当選したのか?
それに対しては、私は次の様に見ています。韓国は軍政時代から外資を導入して高度経済成長を続けてきた。遅れていた民主化への歩みも80年代後半からは本格的に始まり、今もその実現過程にある。その後90年代後半のIMF危機などで一頓挫あったが、それもどうやら乗り越えた。今後も経済の上昇と民主化は続くだろう。丁度、昭和30年代・40年代の日本がそうであった様に。そういう中で、日本の例に準えるならば、60年安保闘争後の池田内閣の登場と、橋本不況や森KY政権の後の小泉政権の出現という、らせん状の社会変化が、韓国社会で同時に進行しているのではないか、と。
つまり韓国では、日本が戦後60年余りかけて経験した政治の民主化、経済の高度成長、経済のグローバル化、新自由主義への流れが、同時並行で進んでいるのです。だから、88ウォン世代と総称される韓国ワーキングプアのうちの、少なくない人々が「コリアン・ドリーム」実現の夢を託してイ・ミョンバク(李明博)を支持し、残りの人たちも経済無策で「民主化支持」一辺倒のチョン・ドンヨン(鄭東泳)には愛想を尽かしたのでしょう。
もとより、新自由主義者で規制緩和論者のイ・ミョンバク(李明博)では、経済格差は広がりこそすれ縮まる事はありません。韓国民衆も早晩それに気付く筈です。日本でも、高度経済成長や細川政治改革、小泉改革の化けの皮が次第に剥れていったのと、同様に。
以上俯瞰してみて気付く事は、韓国政治と日本政治のある種の相似性とともに、韓国政治の意外な健全さです。確かに韓国は、日本以上に縁故社会で賄賂が蔓延り、儒教社会特有の封建制もそこかしこに残存しています。しかし、その一方でイ・ミョンバクはソウル市長時代にチョンゲチョンを実際に復活させました。それだけでも、ウソとハッタリの道路公団民営化・郵政民営化や「美しい国」の謳い文句だけで票を掠め取った小泉や安倍よりは、まだよっぽどマシでマトモに見えます。
「歴史はらせん状に発展する」というのは、元々はドイツの哲学者ヘーゲルや英国の歴史家トインビーの言葉だそうで、社会発展史(史的唯物論)の重要な命題の一つでもあります。その言葉の意味する所は、「歴史は単なる同じ事の繰り返しではない」「一見そう見える事柄でも、実はらせん階段を上るように、確実に変化発展しているのだ」という事ですが、今回の韓国大統領選挙の流れを見るにつけても、今更ながらその事を強く感じました。
同様の「歴史のらせん状発展、社会発展史」は、そのお隣の北朝鮮でも、下記のニュースから垣間見る事が出来ます。情報鎖国社会で官製報道一色だった北朝鮮にも、脱北者が触媒となって、北朝鮮の民衆自身が参加・情報発信する独立系メディア「リムジンガン」が、遂に誕生したのですから。この動きが、芽吹く事無くしぼんでしまうのか、はたまた北朝鮮人民自身の手によるジャーナリズムとして広がっていくのかは、全て今後の活動・支援如何にかかっています。
・韓国大統領選挙と『リムジンガン』(朝民研)
http://www.asiavoice.net/nkorea/2007/12/post_223.html
・北朝鮮からの通信 リムジンガン
http://www.asiapress.org/rimjingang/
このニュースは、先の韓国大統領選挙の陰に隠れて余り目立ちませんでしたが、社会の根本的変革を促すものとして、ある意味では、所詮は為政者交代劇でしか無い大統領選挙よりも、もっと重要なニュースであるとも言えるのではないでしょうか。既にケソン工業団地を舞台とした南北の経済交流が実際に始まっています。この「リムジンガン」創刊については、その流れとも相まって、南北朝鮮それぞれの政治支配者の思惑をも乗り越え、真に民衆と社会の自由化・民主化に繋がる動きにしていかなければなりません。映画「パッチギ」の中で歌われた同名の曲の様に。
当方は、ようやく今日大晦日と正月2日までは休みとなり、投稿をする時間が取れました(年賀状は、職場の休み時間などの寸暇に必要最小限をチビチビと書いて出しています)。
表題に関してですが、盧武鉉左翼政権下の韓国社会の矛盾に関して、2005年に出版され、翌年には文庫化もされた下記の面白い本があります。
「反日・親北 韓国の暴走」(呉善花、小学館)
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9979290676
「韓国の暴走―「反日・親北」をやめられない」(呉善花、小学館文庫)
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9980947292
こちらの皆さんだと、書名と著者名だけでドン引きだと思いますが(汗)、読んでいただければ、これがなかなか軽視できない内容(呉善花の著作に対しては、保守派の渡辺利夫らのゴーストライター説が流されていますが、さもありなんという記述)です。
私は2006年の夏に、同書の書評&推薦の私信を救う会の知人たちに送っていたので、自身の活動の紹介を兼ねて、個人名及び不適切表現以外の全文を紹介します。
*******(以下、私信の転載)***********************************
件名:呉善花「反日・親北 親北韓国の暴走」の紹介
RENK東京&救う会の原です。
昨日、○○さん、◎◎さんには、守る会の学習会にご参加いただきありがとうございます。
その時の懇親会の話しの中で、私が呉善花氏の
「反日・親北 韓国の暴走」(呉善花、小学館)
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9979290676
を紹介していたので、参加していない皆様にも紹介し、お勧めします。
なお、本文執筆のために検索していたら、同書は最近文庫にもなっていたので、さっそく、本日購入しました。
「韓国の暴走―「反日・親北」をやめられない」(呉善花、小学館文庫)
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9980947292
私にとって同書は、
>韓国人、韓国世論がなぜ親北一辺倒になっているのか?
との疑問に対する解説としては、最も腑に落ちるものでした。
内容を一部紹介すると、呉氏は韓国が親北化した理由として四つの要因を挙げています。
(1)冷戦体制の崩壊
(2)北朝鮮情報の公開
(3)自由主義経済への絶望
(4)左翼民族主義政権の誕生
それぞれを私なりに解説していくと
(1)冷戦体制の崩壊
朝鮮戦争、その後の冷戦体制下、韓国民は「北朝鮮の再度の武力南進」に備えるため、人権抑圧など弊害の多い軍事独裁政権~保守派の政権を受容し、在韓米軍の横暴な振舞いにも忍従してきた経緯がある。
ところが冷戦の終結によって、●金一味(北朝鮮)を政治、軍事両面で支えていたソ連、東欧圏が崩壊し、韓国がその中ソと修交したことで、韓国民の多くは、北朝鮮による南進武力統一への可能性、脅威はほぼ完全になくなったと認識するようになった。
このため、保守派や在韓米軍はもはや用済みで、もうこれ以上彼らの横暴に我慢する必要はないと思う国民が多くなり、その結果反米左翼の盧武鉉政権が成立し、在韓米軍出て行けの主張が強まったのである。
いわば両者は、韓国民によって、
>兎狩って走狗煮らる
(原文は「狡兎死して走狗烹らる」出典:史記・越世家
意味:利用価値のある間はこき使われるが、無用となると捨てられてしまうこと)
の立場に追い込まれたのである。
・狡兎死して走狗烹らる(こうとししてそうくにらる)
http://www.d2.dion.ne.jp/~nob_o/kotowaza/k_koutoshishite.html
・飛鳥尽きて良弓仕舞われ、狡兎死して走狗煮らる
http://www2.ocn.ne.jp/~nakahiro/20050725.htm
(2)北朝鮮情報の公開
同書の中で1956年生まれの呉氏は、韓国軍事独裁政権下で受けた反共教育がいかに荒唐無稽なデタラメであったかを、来日して初めて●金親父(金日成)の写真を見た時の「何てハンサムで穏和な顔をしているのか」と感じたことなど体験をもって指摘し、北朝鮮を「国際的視野で、客観的、冷静に批判する」途を閉ざした点で「愚民政策」とまで指弾して批判している。
ところがそういう状況下で、2000年6月に南北首脳会談(以下、同会談の意義を否定する私の見解に基づいて、「悪魔と詐欺師の抱擁」の表現に替える)が開かれ、その前後の金大中の北朝鮮情報の解禁や交流の拡大で、実際の北朝鮮に触れることで北朝鮮への印象が180度転換したと記されている。
特に「悪魔と詐欺師の抱擁」で見せた金正日の立ち居振る舞いは、多くの韓国民の価値観や美意識にマッチし(同じ民族だから当たり前ではあるが…)、金正日に魅了され、その虜(とりこ)になってしまったのである。
言わば呉善花氏が、来日して初めて金日成を見て感じた「カルチャーショック」を韓国民全員が感じている状態である。
日本人である私には、このような韓国民の北朝鮮観、金正日観は、正直理解しがたいものがあるが、韓国民というより朝鮮民族である呉氏には、
>韓国民が北朝鮮に惹かれていく心理・心情はとてもよく理解できる。
のである。
(3)自由主義経済への絶望
結論を先に書いておくと、97年末の経済危機とその後の「経済改革」の「成功」の歪みが、広範な韓国民にグローバリズムどころか資本主義、市場経済そのものへの不信と絶望を招いており、それをもたらした米帝主導の通貨体制、貿易秩序、国際市場への反感と、親北朝鮮、中国接近への大きな動機になっている。
韓国は、97年11月の通貨危機までは、世界のベスト10前後に位置する経済力を手にしており、米帝主導下での建国とそれに追従しての庇護の下、自由主義経済、対外貿易による経済成長を通じての民主化、国力の伸長という国の成り立ちや、日帝の哀れな植民地から先進国の一角にまで到達し得たその成果、統治業績に対しても相応の自信や自負を持っていたと思われる。
ところがその実績は、97年11月に一夜にして崩れ、国家破産の危機にまで追い込まれる。そして米帝主導のIMF(国際通貨基金)の管理下に置かれ、つまり経済政策という国家主権の根幹が制約される形で経済再生が図られた。
その後韓国経済は、IMF主導の新自由主義に基づく一連の「経済改革」=構造調整計画を受け入れることで、急速に経済を立て直し「奇跡のV字回復」「IMF改革の優等生」とまで讃えられるようになる。
このように対外的には極めて評価の高い韓国の「経済改革」であるが、呉善花氏は本書で
>一般庶民の生活現場では、とうてい回復どころではなかった。
とほぼ全否定に近い評価である。同氏は、その根拠を各種の統計数値を挙げて説明する。
その中で、特に私の心胆を寒からしめたのは、生活苦で電気代を払えない世帯が89万余、公共料金を長期滞納した結果、電気、ガス、水道の全てを止められている世帯も14万世帯に達すること(いずれも04年5~6月末の数値)。
ライフラインを止められていては、これら世帯はたとえ自宅があっても廃屋に住んでいるのも同然で、事実上準ホームレス状態と言っていい惨状である。
韓国の「奇跡の経済回復」とは、これらに見られるが如く、庶民層に犠牲を強いた上での「偽りの経済回復」に過ぎず、それまでの経済成長の過程で涵養、育成させてきた都市中間層を崩壊させて、その大部分を貧困層に転落させる二極分化、貧富の格差拡大を招いて、庶民の多くは絶対的な窮乏化に呻吟させられる事態になったのである。
呉善花氏は、新自由主義による構造調整が、庶民層に多大の犠牲を強いた結果、一連の構造調整に対して何らの希望も見出せず、絶望感のみを深める結果になったと結論づける。そしてそれが、広範な韓国民にグローバリズムどころか資本主義、市場経済そのものへの不信と絶望を招いており、それが韓国の日米離れ、親北朝鮮、中国接近にも大きく関わっていると結論づけている(52ページ)。
私は、呉氏の見解に加え97年からの経済危機が、中堅以上の韓国民に深い挫折感や敗北感、喪失感を与え、自信喪失を引き起こし、米帝に追随して、対外開放、貿易立国、資本主義体制の下での発展を目指した韓国の建国理念そのものへの懐疑を生じさせたと考える。
そしてその心の隙間の代替物として、自主自立、外勢排除を訴える北朝鮮の統治理念=死体死相(主体思想)の浸透を許す結果を招いたと見る
さらに勤労者層~底辺層にとっては、米帝や国際資本は、自らに失業や耐え難い生活苦を強いた元凶として、怨嗟の的になっていることは想像に難くない。彼らの存在が、民主労総など親北的な労働運動=草の根護金派を下支えしているというのが私の見解である。
*********(転載終了)*********************************************
こちらの皆さんにとって、特に関心が深いと思われるのが、(3)の記述の中での、韓国経済の貧富の格差の増大、底辺層の絶対的な窮乏化の進行だと思います。人口換算で見れば、廃屋に住む準ホームレス世帯が14万に達するなど尋常な事態ではなく、2007年現在、状況はさらに悪化している可能性が高いと憂慮しています。
盧武鉉政権は、蒙昧な民族感情による無批判な対北朝鮮(正確には悪魔金正日への)追従という見かけとは裏腹に、経済面では農民層に犠牲を強いての米韓FTA(自由貿易協定)の締結、外交面でもアフガニスタンでの米帝の「対テロ戦争」への大量派兵の継続などに見られるように、対米従属いや隷属という二面性を持っていたという事実は、きちんと認識しておく必要があります。
この点に関しては、他にも書きたいことがありますが、年末ということで一旦区切りとします。
プレカリアート様、読者の皆様、良いお年を!
今年の私は正月3日から出勤、4日も出る予定でしたが諸事情で休み、そして5日の土曜から全社で出勤と少し変則な勤務形態です。4日の休みを利用して先日の話しの続きを書いています。
2003年夏、つまり9・17から1年後、盧武鉉政権誕生から半年余り後のことですが、所用で韓国に長期滞在していた救う会会員の知人A氏が一時帰国し、韓国の実情を聞く機会を得ました。私にとっては予想外の発言が多く、当時は驚きましたが、その後の報道や出版でA氏の証言の多くが裏付けられていくのに感心し、いずれは公開したいと思っていたので、今回の機会に紹介します。
開口一番でA氏が言ったのが
「韓国の保守派には心底失望した。腐敗、堕落ぶりがここまでひどいとは思っていなかった。救う会の活動をしていなければ、僕だって大統領選では盧武鉉に投票しただろう」
というものでした。以後、A氏が列挙した韓国保守派の問題点を私の解説付きで紹介します。
A氏の嘆き-1)極端な現行不一致 ― 自分たちさえよければ
A氏がまず憤慨したのは、韓国保守派の面々は、口先だけで実行がまるで伴っていないこと。責任ある地位にある人士が、官民あげて平気で賄賂やリベートを要求するし、「国家に忠誠を尽くせ」と言っているくせに自身は子弟の徴兵逃れに汲々とするなど、公(おおやけ)のために尽くそうという姿勢がまるで感じられないということでした。
原解説-1)
当時は、大統領選でハンナラ党の李会昌候補の重要な敗因の一つとして息子の兵役逃れが挙げられていたこともあり、私も「懲りない連中ですねぇ」と相槌を打っていました。選挙の前後にも、韓国国会議員、それも保守系の議員の子弟が高率で兵役を回避しているデータが公表されており、李会昌家だけの問題ではないことも明らかでした。
ただ現在は、徴兵制のない国の国民が、安易にあげつらってもいいものか? 徴兵制を批判・廃止を求める立場で見た場合、このような「堕落」は、徴兵制の形骸化につながり廃止への一歩として歓迎すべきか、納税義務にも通ずる国民の義務の平等な負担という点から批判すべきか迷っている点があります。
さらにいえば、韓国やイラク戦役下の米帝の現状に鑑みて、徴兵制が戦争につながるという護憲左翼の定説にも、再検討の余地がある(日本に導入しろという意味ではありません:念のため)というのが私の見解です。
A氏の嘆き-2)どうにも止まらない?資産の海外逃避性向
次にA氏が憤慨というより失望したのは、富裕層に限らず広く一般市民にも見られる傾向として、子弟の海外移住など人材面を含めた資産の海外逃避性向の強さでした。
例えば、(1)子供に米帝の国籍取得と韓国での兵役を免れるために妊婦が渡米して出産する。(2)前記で出産後も母子が滞米を続ける、または小学生またはそれ以下の段階で母子が渡米(英語の早期習得のため)して、夫は韓国に残って仕送りをする、という逆単身赴任現象が大規模に起きている、とのことでした。
>彼らから(韓国に)腰を据えて金正日に対峙しようという気概が感じられない
とA氏は嘆きます。
原解説-2)
この問題は、A氏の発言以外にも様々な出版物で取り上げられています。
嫌韓的な言説との区別が難しい分野ですが、私がお勧めできるのは
・病としての韓国ナショナリズム(伊東順子、洋泉社新書、絶版)
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?KEYWORD=%95%61%82%C6%82%B5%82%C4%82%CC%8A%D8%8D%91%83%69%83%56%83%87%83%69%83%8A%83%59%83%80
(アマゾンでの中古情報)
http://www.amazon.co.jp/%E7%97%85%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E9%9F%93%E5%9B%BD%E3%83%8A%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0-%E4%BC%8A%E6%9D%B1-%E9%A0%86%E5%AD%90/dp/4896915739/ref=pd_rhf_p_1
です。
同書の紹介の中で
>国を捨て移民になる者が後を絶たず、世界一の孤児輸出国であるという謎。
という表現がありますが、「孤児輸出国」とは、韓国では儒教的な価値観の下、血縁のない孤児を養子に迎える家庭がごく少数で、養護施設の孤児の多くが海外、主に米帝に送り出されている現状を指しています。
一方A氏も指摘していた1)外国籍取得と兵役逃れのために妊婦が渡米して出産する、2)母子が米国に滞在し、夫は韓国に残って仕送りをする、という現象は、調べてみると1)は、韓国でも「遠征出産」として大問題になっていて、米帝と共に遠征出産の対象国になっていたニュージーランドでは、2006年からこれらの新生児に市民権を認めないという対抗策(国籍の属地主義原則の一部を改廃する訳で、それだけ影響が大きかったことを窺わせる)まで招いていました。
子供の未来のため…「米国行き遠征出産」増加(中央日報、2002.04.04 20:51:00)
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=25780&servcode=400§code=400
海外遠征出産が今年7000件余に(朝鮮日報、2003/09/05 19:28:18)
http://www.chosunonline.com/article/20030905000070
【社説】恥ずかしい「遠征出産」の風潮(中央日報社説、2002.04.05 22:06:42)
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=25821&servcode=100§code=100
【韓国】頭が痛い韓国、兵役逃れの「米国遠征出産」巧妙化 [03/13]
http://news21.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1173766456/
ニュージーランド遠征出産、元旦から市民権認めぬ(東亜日報、2006.1.02.3:07)
http://japan.donga.com/srv/service.php3?biid=2006010271948
(2)に関しても、一人残された夫の悲哀を現す○○族という言葉があり、嫌韓系メディアで取り上げられていたので休み中ずっと探していたのですが、思い出せず紹介できません。
(続く)
A氏3)土地転がしで広がる貧富の格差
さらにA氏が指摘したのは、韓国社会の極端な貧富の格差でした。同氏が遭遇した例では、ある大都市圏の広大な ―端から端が見えない― 土地が一人の資産家の所有で、彼を含む金持たちの間で投機的な転売が繰り返されているというのです。
>土地転がしで濡れ手で粟ですもん。
A氏は口を尖らせます。また、不当で一方的な解雇や職制の暴言や暴力などの不当労働行為も多数目撃したといいます。
>僕らがいてもお構いなしですもん…。
とそれが日常化している、恥ずべき行為という認識さえなさそうとの心象を持ったといいます。
原解説-3)
不動産投機による地価の高騰が止まらない、止められないというのが盧武鉉の経済面での失政として昨年あたりから大きく取り上げられていましたが、現地では既に2003年の時点で顕在化、深刻化していたのでした。
ここで注意すべきは、不動産投機は盧武鉉が政権に就く前から猖獗を極めていたことで、盧武鉉個人の責任に帰すべきではなく、韓国社会全体の構造的問題として捉える必要があること。また、土地バブルを終息させる過程では、かつての日本がそうだったように(地価の値上がりを前提に資産運用や人生設計をしている)多数の中間層以下の人々にも大きな痛みをもたらすことを覚悟する必要があることです。
貧富の格差拡大による富裕層向けの物価の高騰は、その後生業と運動の双方で訪・滞韓機会の多い守る会の会員たちからも多く聞きました。2005年の段階で、住宅や飲食品を含む高級ブランド店での販売価格が、日本と変わらないかそれ以上になっている事例が多数生じています。
>(韓国の金持ちは)それでも平気で買っていくんですからねえ…。
と彼らは驚き、あるいは呆れていました。
物価の高騰は、その後ウォン高によって輸出品にも反映され、現代の自動車やサムスンの家電品の輸出価格が、トヨタやソニーなど日本の競合他社と同程度以上になってしまい、価格競争力が失われたとの新聞報道も見ました。
これらの話しを聞いて私が連想したのが、日本の植民地統治下の朝鮮で、日系資本による百貨店が多数開店していて、朝鮮人の顧客を相手に繁盛していたという故事でした。一例が下記の著作です。
幻の三中井百貨店(『図書新聞』2004年4月3日号)
http://www.uranus.dti.ne.jp/~ohta/newpage93.htm
幻の三中井百貨店―朝鮮を席巻した近江商人・百貨店王の興亡
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4891883146.html
『幻の三中井百貨店』が韓国人に問いかけるものとは
(朝鮮日報、2007/05/06 10:06:46)
http://www.chosunonline.com/article/20070506000001
上記の著作は、日本の朝鮮統治の功罪を巡って私と論戦した救う会右翼の数人から、
>日本の統治で朝鮮は豊かになった。
>朝鮮の経済は成長し、庶民にもその成果がもたらされていた
を裏づける資料として熱心に購読を勧められていました。
しかし私は、
>困窮化した底辺層が、100万人単位で『自発的に』国外
>(宗主国日本だけでなく、より貧しく戦乱で混乱しているはずの中ソにも)
>に流出している矛盾がある以上、
>富裕層向けビジネスの成功事例を持ち出しても意味がない
と反発し、まだ講読に到っていません。
現代の韓国でも、前回紹介した「廃屋同然の自宅」に住む多数の準ホームレスとの対比からも、富裕層の振る舞いが健全な姿勢とは到底思えません。そういえば、北朝鮮でも、人口当たりのベンツの保有台数が、先進国並みと推定されているという話しも思い出しました。
かつての朝鮮では、底辺層が貧しさ故に国を出たのに対し、現在の韓国では富裕層=親米国際派が、自身と一族の安穏だけを考えて祖国を捨てる、あるいは内外の敵対勢力に逃げ腰で対応している。これでは、本土に根を張って戦っている北朝鮮や、それに同心する反グローバリズムの労働者階級に対して、長期的には勝ち目はありません。
こうして韓国は、精神面、心情面で赤化統一寸前、良くいっても●金体制打倒はほとんど不可能=拉致問題の全面解決は不可能になってしまう。こういう危機感、焦燥感が、A氏や私を含む救う会の会員に広く共有されているのです。
もっともこの点は、韓国民や朝鮮民族がどうのこうのとあげつらうより、植民地支配を経験したすべての途上国に共通して見られる現象と解すべきです。私が対比してすぐに思いつくのがレバノンの例です。
レバノンもフランスの傀儡勢力として「独立」した(交易上の拠点などで繁栄している地域を、歴史的経緯を無視して分離させるという点で、東アジアの香港や、中東のクウェートと共通点がある)後、長期的には支配勢力として登用されたマロン派が衰勢の一途にあり、いずれはヒズボラに率いられたシーア派イスラム勢力に併呑される流れにあります。
その流れの中でマロン派は、人口も資産も海外への流出=逃避傾向が止まらず、衰勢にさらに拍車がかかるという悪循環になっています。一方でレバノンでの衰退とは別に、欧米でのレバノン系住民は、当地で成功を収める事例も多く、あの有名なラルフ・ネーダー氏もレバノン系を知った時は、少々驚いた記憶があります(遠く1980年代のことですが)。
ラルフ・ネーダー - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%AB%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC
個人や家族の幸せと国家や地域の繁栄との利害が一致しないという現象は、近代国家成立後、特にグローバリゼーションの進展で拡大する傾向にありますが、それに対してどのような姿勢で応じるかという点で、いろいろ考えさせられたA氏のお話しでした。
<参考文献>
【韓国】頭が痛い韓国、兵役逃れの「米国遠征出産」巧妙化 [03/13]
http://news21.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1173766456/
1 :依頼655@ちゅら猫φ ★:2007/03/13(火) 15:14:16 ID:???
頭が痛い韓国、兵役逃れの「遠征出産」巧妙化
米国の市民権を取得するのを目的に、韓国の妊産婦たちが渡米して、米国で出産する「遠征出産」がなかなか減らず、韓国政府が頭を痛めている。
米市民権の取得目的の遠征出産は、永住以外のための海外での出産による国籍離脱に当たり、韓国の「新国籍法」(2005年5月発効)違反で違法行為だ。しかし、徴兵制の国、韓国では、主に兵役逃れのため、米国で男の子を産もうとする若いママたちがいるのだ。
出産地は米ロサンゼルス。コリアタウンを中心に遠征出産の斡旋ブローカーが活躍、病院や産後の母子が入るケア施設などを紹介する。2006年にロスで誕生した韓国人の赤ちゃんは1万人に達し、今年ロスの大病院で生まれた新生児の約40%にのぼる。
遠征出産が社会問題となり始めたのは5年ほど前から。韓国では妊娠中の性別判定が禁じられているが、米国では可能。これを利用し、男の子なら米国で産み、米市民権を得て兵役を忌避する方法が韓国ママの間で話題となった。2002年には5000人が米で出産、その8割が男児だった。
当初は富裕層や米国に親戚(しんせき)のいる家族などが中心だったが、「遠征出産」がマスコミなどで取り上げられ、問題になるにつれ、かえって韓国内の産婦人科と米国の病院をつなぐブローカーも出現し、手口が巧妙化していった。
政府の「新国籍法」でも歯止めがかからない。ちなみに韓国ママたちの最近の言い分は、兵役忌避に加え「乳幼児期の海外留学」や「戦争に備える財産逃避」なども兼ねる。
南北和解の時代に平和を満喫しているかの韓国だが、若いママたちが息子の未来に
「シビアな現実」を見ている証拠なのかもしれない。
(産経iza、2007.03.13.13:16、元記事URLは既に消失)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/korea/43082/
(続く)
〓 Journal Korea:韓國 〓<http://blog.goo.ne.jp/nhs_001>より
・大統領選挙と韓国の学生たち
http://blog.goo.ne.jp/nhs_001/e/d52383f3e5231ffa3966643e2b08abb3
【韓国】頭が痛い韓国、兵役逃れの「米国遠征出産」巧妙化 [03/13]
http://news21.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1173766456/
1 :依頼655@ちゅら猫φ ★:2007/03/13(火) 15:14:16 ID:???
頭が痛い韓国、兵役逃れの「遠征出産」巧妙化
米国の市民権を取得するのを目的に、韓国の妊産婦たちが渡米して、米国で出産する「遠征出産」がなかなか減らず、韓国政府が頭を痛めている。
米市民権の取得目的の遠征出産は、永住以外のための海外での出産による国籍離脱に当たり、韓国の「新国籍法」(2005年5月発効)違反で違法行為だ。しかし、徴兵制の国、韓国では、主に兵役逃れのため、米国で男の子を産もうとする若いママたちがいるのだ。
出産地は米ロサンゼルス。コリアタウンを中心に遠征出産の斡旋ブローカーが活躍、病院や産後の母子が入るケア施設などを紹介する。2006年にロスで誕生した韓国人の赤ちゃんは1万人に達し、今年ロスの大病院で生まれた新生児の約40%にのぼる。
遠征出産が社会問題となり始めたのは5年ほど前から。韓国では妊娠中の性別判定が禁じられているが、米国では可能。これを利用し、男の子なら米国で産み、米市民権を得て兵役を忌避する方法が韓国ママの間で話題となった。2002年には5000人が米で出産、その8割が男児だった。
当初は富裕層や米国に親戚(しんせき)のいる家族などが中心だったが、「遠征出産」がマスコミなどで取り上げられ、問題になるにつれ、かえって韓国内の産婦人科と米国の病院をつなぐブローカーも出現し、手口が巧妙化していった。
政府の「新国籍法」でも歯止めがかからない。ちなみに韓国ママたちの最近の言い分は、兵役忌避に加え「乳幼児期の海外留学」や「戦争に備える財産逃避」なども兼ねる。
南北和解の時代に平和を満喫しているかの韓国だが、若いママたちが息子の未来に
「シビアな現実」を見ている証拠なのかもしれない。
(産経iza、2007.03.13.13:16、元記事URLは既に消失)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/korea/43082/
(続く)
前回の投稿で、コメント入力をミスしていて<参考文献>の部分が重複しており、今回紹介する予定だったURLが載っています。
不手際をお詫びするとともに、管理人様による訂正が可能なら対処をお願いしたく存じます。
以下、本論
前回は、日本の保守派による韓国保守派への批判の紹介でしたが、今回は逆に日本の左翼による韓国の進歩派批判の紹介です。きっかけは、AMLに載った下記の記事でした。
[AML 17502] 韓国学生の盧武鉉離れ
HARADA, Shinichi 原田 < kj8899@zephyr.dti.ne.jp> 2007年12月21日 3:20
http://list.jca.apc.org/public/aml/2007-December/017022.html
投稿内のリンクを辿っていくと、投稿者による
〓 Journal Korea:韓國 〓
<http://blog.goo.ne.jp/nhs_001>というブログがあり、
・大統領選挙と韓国の学生たち
http://blog.goo.ne.jp/nhs_001/e/d52383f3e5231ffa3966643e2b08abb3
という大統領選挙前後の進歩派志向の若者たちの動向が、詳述されていました。
私が印象に残ったのは、
>オーマイニュースの編集長は(中略、編集長の「自己主張と排他主義」に基づく否定的な言動が記述されている)
─―なるほど、こういうイデオロギッシュな高まりが、「革新・左派ナショナリズム」が盧武鉉大統領を生みだしたのかと、ある意味で納得した。インターネット時代、ネット新聞の新しさの実体は、きわめて古風な「学生運動」思想だったのかと「正体見たり」が実感だった。メディアが新奇でも、結局そこで語られることばが「新しい」か、普遍性を意識し自己チェックできるかどうかなのだ。
盧武鉉の基盤は、こうした熱狂一色に支えられた。そして冷めてみると、出来合いのことばの弱さそのままに、霧消した。<(引用終了)
という記述でした。
プレカリアート様は、韓国の民主化の流れを
>(日本の1960年代の)政治の民主化、経済の高度成長と
>(90年代の)経済のグローバル化、新自由主義への流れが
が同時進行する螺旋(らせん)状発展と表現します。
一方、私を含む北朝鮮を無批判に賛美し、幻想を抱く韓国現状に不満を持つ反北朝鮮(正しくは反金正日体制)人士(救う会≦つくる会=産経-現代コリア枢軸の主流だけでなく、高世仁氏などの救う会左派や守る会系も含めて)の間では、
>金大中-盧武鉉の革新政権を生み出した韓国の現状は、
>中ソなど社会主義陣営への幻想が溢れ、
>革新首長が全国を席巻した70年代の日本
の再現であるという認識が広く共有されています。
産経新聞の黒田勝弘氏は、既に80年代に
>韓国の発展は、明治維新後の日本の現代史をより早く、より大きな振幅で
>再現しながら進行しているように見える
と解説し
>朴正熙のクーデターは、二・二六事件が成功したようなもの
との解釈を示しています。
その後の金大中・盧武鉉の政権獲得の際に同氏の見解を思い出し、同氏の先見性と、自治体の首長レベルに止まった日本の左翼・革新の限界に対する韓国進歩派の力量の差を感じました。
さらに私は上記に加え、かつて流行った「経済の雁行型発展」にならって
>南北朝鮮の発展も雁行型ではないか?
との仮説を立て、
>北朝鮮の現状は、李承晩政権末期の韓国に近いのでは?
との見解を、ある拉致系の集会の質疑応答でしたことがあります。
しかし講師から
>北朝鮮の現状は、李朝末期以下、おそらく朝鮮史上でも最悪!
>韓国民に対して失礼極まる比喩であり、謝罪すべき
と怒られ、赤っ恥をかいてしまいました。
[AML 15673] 生産力の増大のためにも、悪魔金正日体制の打倒が必要です。 Re: by安沢 昌氏
原 良一 roy.hara@k6.dion.ne.jp 2007年9月8日 7:44
http://list.jca.apc.org/public/aml/2007-September/015208.html
日本の学生運動は、安田講堂の陥落とその後の連合赤軍事件などの完敗で終り、全共闘世代とそれに共感した左翼には、ある種の挫折感・敗北感と未達成感が鬱積していると聞きます。
対して韓国の左翼・進歩派・は、軍事政権からの政権奪取(金大中)という高揚感と達成感があり、その成果を継続させたいという意思が盧武鉉政権を誕生させ、軍事政権を支えた米帝、新日帝(戦後の日本の保守政権)への反発が、悪魔金正日へ接近する愚行という形で表出したのだと私は解釈しています。
しかし自信満々だった彼らも、盧武鉉の失政(理念先行で実務能力に欠け、米帝や経済界に有効な対案を提示できない)による生活苦に喘ぎ、格差社会の拡大への処方箋を、格差拡大の張本人、元財閥会長の李明博に託さなければならないという挫折を味わうことになりました。
選挙後私が注目したのは、韓国の真正の左翼政党、日本の共産党に対応する民主労働党内で、今回の敗北(民労党の権永吉-クォン・ヨンギル-候補は得票率2.99%に止まり、前回総選挙などでの得票率を下回った)を受けて、党を牛耳る親北、実態は親金正日一派との訣別が必要であるとの議論が起きているとの報道でした。ネタ元が、民労党と敵対する朝鮮日報なので割り引いてみる必要がありますが、紹介しておきます。
民主労働党、「親北路線」めぐり党内に亀裂(2007/12/27 16:29:59)
http://www.chosunonline.com/article/20071227000069
【社説】民主労働党は親北朝鮮勢力と決別すべき(2007/12/28 12:05:20)
http://www.chosunonline.com/article/20071228000049
民労党内で「親北派」批判相次ぐ(2007/12/31 14:34:21)
http://www.chosunonline.com/article/20071231000040
なんだかかつての社会党の左右の路線対立を彷彿とさせますが、日本社会党の場合、対立の度に組織力に勝る左派(社会主義協会派)が勝利を収め、右派は党を追われて民社党、社民連を新たに作るものの、保守との差別化ができずに埋没していきました。
韓国に限らず、国内の矛盾・不条理が激しいとより過激な主張をするほうが勢力が伸ばしやすく、穏健派は力を得にくい傾向があり、グローバリゼーションへの対抗原理としての北朝鮮いや悪魔金正日への崇拝は、今回の李明博当選を以ってしてもまだまだ賞味期限切れにはなるまいというのが私の見解です。
民労党を含む韓国左翼の実態については、RENK東京の仲間のkazhik氏も自身のブログで解説をしています。
韓国の左翼党派が「現実主義的」な共同戦線を提案(2007年12月 2日)
http://www.asiavoice.net/nkorea/2007/12/post_221.html
これを読んで私がショックを受けたのは、韓国の左翼、彼らのいう労働者民衆陣営内の主流派の親北勢力通称NL派に限らず、階級志向のPD派を含めて
>南北経済協力を反グローバリゼーションのイデオロギーとは
>切り離して認めていく
(開城工業団地などでの、金正日一派の承認の下韓国資本による同胞の労働力の買い叩き=植民地的低賃金を容認するということ)
とのコンセンサス(総意)が形成されつつあり、宥和政策の継続のために独裁体制も強制収容所も黙認、とのコンセンサスも進行しているとのkazhik氏の見解でした。
この点ではプレカリアート様の
>ケソン工業団地を舞台とした南北の経済交流が実際に始まっています。
との肯定的なご見解は、あまりにも能天気であり、賛同はできません。
(一旦終了)