昨年の暮れは激しく降り積もる大雪に見舞われ、田舎の山林でも被害は免れなかった。杉の枝に降り積もった雪は次第に重さを増し、落下する量より積もる量が上回るとやがて限界点に達し、杉の大木でも大きな悲鳴を上げて倒れてしまう。いわゆる「雪折れ」と言うやつだが、これには幹の上部で折れる場合と根元から倒れる2つのパターンが有る。
今回は20本くらい折れているのが見られたが、その中には年輪を数えてみると樹齢130年と言う、幹に節も殆どないきわめて良質な木があった。この木は130年前に植林した木で、古くなった木に見られるようなひび割れとか腐食が見られず、年輪の詰まったきわめて良質な物だった。
すっかり作業道を塞いで車の通行が出来ない為、いつも頼んでいる木材業者に頼んで伐採・搬出を依頼し売却した。しかしこの「雪折れ材」と言うやつはいつも買い叩かれるのが常で、根元から倒れて殆ど傷が付いていないにも関わらず値段は安く、3分の1以下の値段で引き取られてゆく。つまり商品価値が低いと見られると共に、伐採・搬出費用を差し引くと、素材生産者には殆ど賭けが残らないと言う構図なのだ。物によっては引取りを拒否される事も有り、ここに林業が産業として成り立たなくなった現実が有る。
しかし130年前の人がどんな苦労をして、またどのような未来を夢見て手入れを続けたかを考えると、実に考え深い思いが有る。今や現地まで車で10分、歩いて5mで済むものが、かつては山道の往復だけでも2時間あまりはかかる。植林してから杉立て、下刈り、除伐、間伐、枝打ちを繰り返し、気の遠くなる様な努力と忍耐を経てここまでたどり着く事が出来る。当然こういう木は高値で取引されるはずだったが・・・・。しかしこうして市場に流通するのは恵まれた杉の木で、4~50年くらい前に拡大造林された林は手入れも殆どされず、過密で細々とやせ細ったモヤシのような木が多い。