先日、有志のメンバーと共に風力発電反対運動が起きている宮城県丸森町筆甫地区の勉強会に参加してきました。講師は地盤・地質工学、リスク学の専門家で、東北学院大学工学部名誉教授の飛田義雄の講演でしたが、大変興味深い内容で知識が深まり勉強になりました。
筆甫地区では現在2つの事業会社で計27基の風力発電が計画され、既に宮城県による開発許可が下りて経済産業省の環境影響評価手続きが行われています。これは、事業会社が通産省に計画段階環境配慮書を提出し、経済産業省からこれに対する意見書が交付され、何度かのやり取りの末に承認するという経緯を辿っています。県の開発許可については、「特段の事由がなければ許可しなければならない」という建付けになっており、実質的な許認可権は経済産業省が握っている様です。
しかし、この文書のやり取りを見ていると、(1)騒音及び風車の影による生活環境への影響、(2)動植物及び生態系に対する影響(3)景観に対する影響(4)鳥類に対する影響などの内容については通り一遍の内容の審査に思え、日本国内の山岳事情に則した現実性・具体性に欠ける、大変緩い規制しか行われていない様に感じます。この内容は単なる営利目的の事業者主体と国とのやり取りだけで、地元の地権者や住民の立場を尊重する保護的な議論は殆ど感じられません。つまり、特段の事由が無ければ殆どが許可される事態となっている様です。
許可を与えた宮城県知事には許可を取り消す権限も実質的に無いと思われ、ただ単に意見を述べる事に留まっています。しかも、地域住民への説明はこの間為されることはなく、意見書が交付された後になってから着工前に説明会を行い、形だけの地元の理解を得るという努力義務が明記されているにすぎないのです。
どう考えてみても法律や規制の不備が大きな原因と思われますが、日本政府が脱炭素に大きく舵を切っている以上、この大きな流れを食い止めることは容易な事ではない。
また、自然エネルギーという魅惑的な市場に参入する国内外の企業は後を絶たず、その中で全世界中で風力・メガソーラー発電を展開する巨大外国資本(シンガポール系 株式会社グリーンパワーインベストメントやアメリカ資本など)が食い込み、日本の全土にわたって巨大な風力発電設備設置を展開しようとしています。
既に、加美町の 薬莱山の麓にはJRE宮城加美町ウインドファーム(エネオス系)が既に10基の風車建設工事に着手しており、この他加美町・大崎地域では他に最大160基ほどの計画が有ります。
しかし、これらの計画は全国でのごく一部に過ぎず、経済産業省の風力発電所一覧を見ると、風力・メガソーラー発電計画又は工事着手の計画は膨大な数に上ります。このままこの計画が実施されたら日本の国土は広範囲に侵食され、住民の健康が脅かされ、美しい山岳の景観が失われ、広範囲にわたり土砂災害による環境の破壊が起きると予想されます。
最近になって関西電力による蔵王の風力発電が中止に追い込まれましたが、住民の地道な反対運動と共に宮城県知事などが反対表明をした事も一因と思われます。
この成功事例がこの巨大な潮流に歯止めをかけ、先駆的な事例となる事を望みます。
通産省 風力発電所一覧
https://www.meti.go.jp/.../sangyo/electric/detail/wind.html