すっかり山から遠ざかってしまい、暇な毎日をダラダラと過ごしている日々ですが、昔の山の先輩筋のS氏から突然電話がかかって来た。暇だったら明日の夕方、仙台の文化横丁まで出て来いとのお達しで、特に用事も無い身の上なので思わず「ハイ承知」と返事をした。
実はこの方はとんでもない酒豪の人で、山岳会に在籍していた頃には「酒の嗜み」を死ぬほど叩き込まれた方。かつて仙台の国文町でサシで呑んでいた時には、胃液を出し切ってからもハシゴを強いられた思い出が有り、どちらかと言うと恐怖感さえ伴う人。しかし「岩と雪」の希少本を多量に譲り受けた関係上、断る理由など無くノコノコど出かけた。
S氏今では私と違って潔く山からは遠ざかり、青森あたりでブリのルアー釣りを極めた名人の様な人。かつて素晴らしい登山歴を持ちながら、すっかり山を廃業出来る潔さには何か尊敬出来る興味深い人でも有る。でも今回は是非聞いてみたかった事が有った。酔っ払う前にメモを取っておいた理由は、S氏が黒伏山南壁 中央ルンゼ開拓の頃を知る人で、殆ど知られていない初登攀争いの張本人だったからである。
中央ルンゼルートは今や全国的にメジャーなルートとなり、首都圏からも多くのクライマーを迎える東北では異色の人気ルートとなっている。確かにあのブッシュだらけの壁に刻まれた一本の急峻なルンゼは、登ってみて初めて体感できる感動がある。乾いた安山岩のフリクションは抜群で、日本でも特異と思われる井戸の底の様な、美しいクーロアールを大胆に攀じて行く。全てをフリーで完登出来るクライマーは尊敬に値する。
しかしこのルートの初登攀者はいったい誰なのか?そう思った人も多いと思いますが、残念ながらその当時の記録は殆ど残っていない、いや、殆ど記録を残さなかった。現存する記録と言えるのは「日本登山大系」白水社、「日本の岩場 改訂版」白山書房、「岩と雪」山と渓谷社しかない。しかし「日本登山大系」「日本の岩場」の解説と記録には開拓期の記録はすっかり抜け落ちており、しかもそのいずれも、基本的な誤りや見過ごされた記録なども見られる。また、仙台RCC 相沢氏による、「岩と雪」の黒伏山の詳細な岩場特集が有るが、やはり肝心な開拓期の記録は無く、記述内容には正確さが足りない部分も見られる。また、この本は今となっては入手困難で、中央ルンゼを訪れる現役のアルパインクライマーには殆ど知られていない。
しかし当時の話を聞いてみると、今では有り得ない様な初登攀争いがあって、東北の片田舎であっても熱く燃えるような時代が有った様です。つまりこのルートが完登されるまで、あるいは冬季に初登攀が成されるまでのドラマが有り、知られざる多くのクライマーが活躍していた。特に冬季の初登攀はレベル的にも高く、難易度では谷川岳の冬季登攀を凌駕するレベルの記録とも言われている。
これだけ素晴らしく価値有るルートでありながら、その素性がまったく知れないと言うのは残念で、いずれ少しづつ紐解きながら明らかにしたいと思う。
結局S氏とは寿司や・ホルモン屋・高級居酒屋?・フランス料理店の4軒をハシゴさせれられ、ようやく無罪放免してもらった。
山菜のミズには青ミズ・赤ミズという2種類有る事をご存知ですか?一般的に「ミズ」と言われているのは赤ミズの事とで、直売店などに出回っている根元が赤いやつ。青ミズは取れる場所が限られており、一般的に出回っていない様だ。
しかしこの「ミズ」は直売店でもあまり売れ行きが芳しくない。理由はミズ自体癖無くアク抜きの必要はないが、面倒な皮むきをしないと食べられなく、手間がかかるので敬遠されているからだ。どちらかと言うと田舎のバンツァンの得意料理という代物。手っ取り早くテンプラ・胡麻和えで食べられるタラノメ・コシアブラの高級品とは別格で、何となくB級山菜の扱いを受けている。
しかしこの青ミズなら柔らかくて皮を剥く必要が無く、葉っぱのままでも食べられる。青ミズは茹でると鮮やかな緑色となり、おひたしなどでも程よいサクサク感とヌメリがあり、殆ど野菜感覚で食べられるので気に入っている。裏山の元桑畑だった杉の植林地は一面ミズの畑となり、山に行けない親戚・知人などの年寄り衆がやってくる時期となる。
最近まとまった買い物などしていないが、とうとう役目を終えたデジカメを買い換えた。オリンパスのμ770SWと言うモデルだが、「10m防水・耐衝撃性・耐低温」という売りが気に入り、さんざん迷ったあげく大英断の末購入。山スキー&沢登り愛好者にとってはヨダレ物だったのです。
デジカメは1台めが6年前に買ったオリンパスのキャメディアで、2台目は中古で譲り受けたソニーのサイバーショットだったが、何れも3回の修理を経ていよいよ昇天召された。自分では「数打ゃ当たる方式」の為、使いが荒い為か故障・トラブル(メーカークレームも含めて)が多い。しかし保障期間を過ぎると修理する気持ちは失せ、同時に機能の劣化も現実的になる。流石に最後に残ったオリンパスは、シャッターボタンを押してから切れるまで、スキーヤーが30~50m過ぎ去っているという状態で、山スキーにはまったく向かない代物で、カメラに対する愛着も薄かった。
しかしもう基本的機能では成熟したと思われるデジカメだが、フィルムカメラと違ってなぜこんなに短命なのか。仕事で使う現場用のデジカメもしかり。おそらく今売れている一眼レフも同じか?ユーザーの撮影テクニックのレベルなど無関係に、ハード面の技術革新はとどまるところを知らない。肝心の耐久性の向上などまるでお構いなく、ユーザー不在のまま買い替えを強いられる。さんざんユーザー志向を自認するメーカーさん、そこの所何とかなりませんかね?マジに。
それにしても販売店の競争の激しさを感じた日でもあった。何時も出入りしているYカメラで説明を聞いて値踏みし、その後激安ライバル店のY電気で価格交渉したが、結局後の店で 購入した。表示価格で「他店を圧倒!!」と有って当初5000円の開きだったが、10分間待たされた後にはYカメラと同様にしますとの返事。まるでライバル店に張り付き調査アルバイトでも居るのか、スムーズに指摘どうりの値引きに応じてくれた。Yカメラの商品知識の豊富な店員から情報を仕入れ、殆ど無知のY電気の店員から買うという、「ずる賢いお客のお手本」で少し気が引けるが、最後の決め手は5年保障の内容で決めた。1回の保障で終了してしまうYカメラさんでは困るんですよ。どうしてもデジカメは信用できないので・・・。
今回は山菜取りの終盤戦となるフキ取りに早朝出かけた。場所は毎年まとまった収穫の出来る、扇状に斜面の広がった杉の植林地で、1時間半で12.0kgをむしり取って満足感に浸る。杉の木が生長するに従って勢いは落ちてくるが、土の養分が集まる下部では太くて長く、斜面が湿潤な為柔らかくて上物が揃っている。
そんな気分で植林地を登って行くと驚いた。樹齢80~100年位になる杉の木が8本程、途中で折れたり弓なりになって裂けている姿だった。ここは長伐期のそろった良木揃いで、中でも自慢の大切な林だった。折れた木は無残な光景で、大きく裂けた弓なりの杉は鋭い悲鳴を上げ、まるで何かを訴えているようだ。
今年は7年前の雪害の時とは異なり、60~100年位の木に被害が多く、その殆どは東斜面の上部に集中している。7年前の同時期の雪害の原因は積雪150cmのドカ雪だったが、今度のケースは12月の後半に雪が60cm降り積もったのみだが、その雪は今までに無い様な湿った雪だった。その時は西風が重い雪を東斜面に運び、それに耐え切れなくなった木が幹から折れたと思われる。もともと杉の木には雪への防御能力が有り、寒くなると水分は少なくなって幹が硬くなり、雪の重みに耐えて冬を乗り切る。しかし今シーズンはその備えが整わないまま、突然の雪から守るすべがなかったと思われる。流石に85歳になる年寄りも始めて見る光景で、驚きとと共に大きな落胆を味わう結果となった。
今、地球温暖化が全世界的にクローズアップされているが、殆どは50~100年後の心配事として我々にまり実感はない。しかし山林を守る為に手入れを行ってきた立場からすると、どうしようもない自然の変貌が身に迫っている様に思える。100年以上も手を掛けて立派な木に育ててもそれを失う時は一瞬で、大自然の猛威にはまったく対処のしようがない。これから叉同じことが繰り返されると、雪国の山林は本当に困った事になってしまう。