雨宮智彦のブログ 2 宇宙・人間・古代・日記 

浜松市の1市民として、宇宙・古代・哲学から人間までを調べ考えるブログです。2020年10月より第Ⅱ期を始めました。

本と映像の森 194 野尻抱介さん著『南極点のピアピア動画』ハヤカワ文庫、2012年

2012年03月17日 20時11分26秒 | 本と映像の森
本と映像の森 194 野尻抱介さん著『南極点のピアピア動画』<ハヤカワ文庫JA>、早川書房、2012年2月25日、311ページ、定価620円+消費税

 発売日が2月25日の本を紹介って、早いですよね。実は、2月末に注文した本を本屋さんに取りに行って、そのお店をぶらっと見回って発見した本です。

 「本と映像の森 174 野尻抱介さん「歌う潜水艦とピアピア動画」」(2011年09月26日 05時27分52秒 | 本と映像の森)で紹介した作品のシリーズ4点が一気に読めます。

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 第1作「南極点のピアピア動画」は、日本の月探査機計画の一員・大学院生の蓮見省一さんと恋人の奈美さん、省一さんの友人で自己増殖ロボットの開発をしている川瀬郁夫さんの3人が主人公です。
 
 時代は近未来、月探査計画が月にクロムウェル・サドラー彗星が衝突したために月の空が晴れるまで当分停止、という状態で恋人にも逃げられた蓮見省一さんを主人公に、彗星の月への衝突で生じた粒子の流れを利用した宇宙旅行計画に応募することから始まります。

 つまり南極からロケットを打ち上げて2人乗りの飛行船がその流れに乗るわけです。

 省一さんはそのプランを、現実に存在する「ニコニコ動画」をモデルにした「ピアピア動画」にアップして、一気にファンを獲得、現実化していきます。

 そして「ニコニコ動画」のなかの仮想少女歌手「初音ミク」をモデルにしたボーカロイド「小隅レイ」さまが、もう一人の主人公です。

 省一さんは、宇宙にいけるのか?それも、奈美さんといっしょにいけるのか?

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 2作目は「コンビニエンスなピアピア動画」。「ハミングマート二本木店」に勤務する上田美保さんが主人公です。「ハミマ」は国内に9000店あります。

 美保さんの勤務するお店から始まった入店チャイムと新曲PRをリンクする試みが成功して、小隅レイの新曲が大ヒットします。

 その仕掛け手・ピアピア動画の桑野隆が見掛けた二本木店の蜘蛛(クモ)から宇宙計画が動き始めます。

  <ネタバレ、以下、読むな>

 なお、この連作では、1作目も、2作目も、4作目に至る伏線が張り巡らしてあって、1作目の「目標 自己増殖工場」も、2作目のコンビニ配送システムも、4作目で、ひとつにつながって、見事に生きています。

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 3作目の「歌う潜水艦とピアピア動画」は「本と映像の森 174」(2011年09月26日 05時27分52秒)で紹介したので省略

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 さあ「星間文明とピアピア動画」です。

 3作目の直接の続編で「2月18日、午前1時、沼津沖」に浮かび上がった「船」、あきらかに「潜水艦」から、3人が上陸するところから物語は始まります。

 これは、「小隅レイ」をモデルにした宇宙からの美少女「あーやきゅあ移動体」=「あーや」が人類と接触(コンタクト)し、人間たち一人ひとりに、個別に受け入れられていく物語です。

 つまり「宇宙との接触」は代表者と代表者ではなくて、一人とひとり、という、これまでの「コンタクト」概念をひっくり返す画期的理論だと思います。

 それと、もう一つ。野尻さんは、p278からp279で、郁夫さんと「あーや」の会話のなかで、生命体つまり生成物だけの文明、あるいはロボットか創作物だけの文明ではなく、両者が平等に入り交じって、同等の権利を持つ文明を考察しています。

 つまり、アシモフさんのアイデアを借りるなら、C>Feでもなく、C<Feでもなく、C+Feです

  ☆

 土曜の夜で、安心して酔っ払ってるので、紹介になったでしょうか。あとで見直して、気になったら修正します。
  

 

 

雨宮日記 3月16日(金)の2 3・11特集のテレビを見てラジオを聴いて

2012年03月17日 18時22分01秒 | 雨宮日誌
雨宮日記 3月16日(金)の2 3・11特集のテレビを見てラジオを聴いて

 ここ1週間くらい、もう少し前もあるかな、3・11関連のテレビを見てラジオを聴きました。

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 まず、NHKラジオの深夜便。夜中に運転しながら聴きます。この前、聴いたのは、気仙郡に住むお医者さんで、3月11日に自宅の1階が津波で壊れ、その時、自宅から避難しようとして奥さんが2階にいて「なにしてるんだ!逃げるぞ」と言いにいった瞬間、津波が来て命をとりとめました。

 「ケセン語」の辞典を作った方で、クリスチャンで「ケセン語訳 福音書」を訳した方です。この山浦玄嗣(やまうら はるつぐ)さんが番組で、ギリシャ語「アガペー」を「愛」と訳したのはまちがいで、これは「大切」「大事(だいじ)」という意味だと言っていたのが「そうか!」と納得しました。
 
 「汝の敵を愛せよ」というのは「お前の敵でも、人間として大事にせよ」つまり「敵の権利も守れ」という全人類的な発想だったわけです。

 ご著書も新たに出ましたので、手に入れて読んだら報告します。

  ☆

 数日前にラジオで聴いたのは、声楽家の佐藤しのぶさんが師匠の団伊玖磨(いくま)さんのことを語ったインタビューです。これも団さんの作曲した過激「夕鶴」を見るか、聴きたくなりました。

 「夕鶴」で思い出したのが(演劇を見ました)、仲むつまじいつうと与ひょうの夫婦を金の力が引き裂いていく、つうが予ひょうの「声は聞こえるが意味がわからない」と悲痛なセリフ。

 金や権威や権力に毒されると、もう人の声や自然の響きは聞こえなくなります。

  ☆

 テレビでは、いちばん感覚的に良かったのは3月11日の「報道特集」です。雪の大熊町にキャスターが防護服で入って「人ひとりいない町」「時のとまった町」「放射線アラームが鳴り出す町」をさまよっていました。「ブックス アトム」という名前の本屋さん(なんて悲しい名前の本屋!と思ったけど、もしかしたら「鉄腕アトム」?)がありました。

 港町の復興をするのに市民の意見を聞かず、高い堤防の建設を決めてしまう自治体。

 地元の若者が集団で書いた市民プランに「復興資金は使い道が指定されているので堤防を建設しないなら返さないといけない」とにべもない自治体担当者。
  
 ようするに何にも変わってはいない。

 復興するとは建物や施設を建て直すことではなく、市民生活と人間の心の復興でなければ…。
 
 浜岡原発の防潮堤もそうですが、とにかく大量の鉄とコンクリを使えば、大建設会社がもうかるから、でしょうか。

 私たち浜松市民もそうですが、一人ひとりが自立しないように、心をテレビや新聞などのマスコミで縛り、生活を国の予算と大企業の製品で縛り、いいようにコントロールされていると感じました。

 埼玉県に非難したままのある町長さんは「私はだまされた」という自分抜きの傍観者で、福島県に残っている町民から県内への役場の帰還を求められて「町民の決めることだ」と。

 そして、被爆地だけではなく避難民のいる所でも、時間がのろのろと耐え難く過ぎていく状況がレポートされました。数ヶ月先さえ、未来が見えないのです。
 
  ☆

 3・11で何も変わっていない政界や財界や科学技術者やマスコミは、人間の心もなく、ただ「決めたこと」「上から言われたこと」をやっているので、責任感もないのですね。

 もちろん政界でも財界でも科学技術者でもマスコミ記者でも、この事態に「絶望」し、なんとか「希望」をつくりだそうと努力し始めた人たちが、たくさんいます。

 そういう、誰にも何ものにもコントロールされない、自分で考える人たちと共に歩みたいと思います。