本と映像の森 247 福岡伸一著『フェルメール 光の王国』木楽舎、2011年8月1日第1刷~2012年1月30日第4刷発行、254ページ、定価本体2200円+消費税5%
生物学者福岡伸一さんの「美術書」です。この本を読まなかったら、静岡の「フェルメール、複製画展」にも行かなかったと思います。
福岡さんが「光の画家」フェルメールの絵を実際に見て回る本ですが、並の美術書を越えて、その絵の置かれた美術館やその都市のたたずまい、あるいはその都市に生きていた人々、たとえば野口英世、エッシャー、ガロアなどにも触れ、フェルメールの絵の「絵解き」「謎解き」をしていくのが推理小説のようにおもしろいです。
何よりの魅力は、たんなる美術評論ではなく、一つ一つの絵が、どうして魅力的なのかという分析・推理ですね。
そしてその分析・推理で一歩一歩、フェルメールの謎を解明していきます。
旅の最後は、フェルメールと同じ街デルフトで同時代に生きていた科学者(顕微鏡制作者)レーウエンフックが雇った画家がフェルメールではないかとの「推理」で終わります。
ぼくはさらに推理すると、レーウエンフックが使った(作った?)顕微鏡は、同時代に生きていた哲学者でレンズ磨き屋のスピノザがかかわっているのではないか、と空想します。いまのところ、根拠はないのですが。
第1章 オランダの光を紡ぐ旅
第2章 アメリカの夢
第3章 神々の愛でし人
第4章 輝きのはじまり
第5章 溶かされた界面、動き出した時間
第6章 旅の終焉
第7章 ある仮説