雨宮家の歴史 2 『落葉松』の2 序文
落葉松
私が自分史の標題を「落葉松」とした理由は、ちょうど私が生まれた大正十二年に、生家の浜松市東伊場町十八番地を発行所として、父が短歌の同人詩「落葉松」を発行した。それを記念として命名したのである。(「Ⅰ 8 アララギ」参照)
落葉松(唐松)は、別名富士松ともいい、富士山・八ヶ岳・上高地・日本アルプスなど上信越の本州中部、主に信州の山岳地帯を代表する針葉樹である。
大きいものは高さ三十米ぐらいになり、針葉樹としては、珍しく晩秋黄葉して落葉する。早春、芽吹きと同時に花をつけ、秋に松ボックリができる。
カラマツは植え付けて二、三十年で利用できるので、戦後、国土再建の復興材として脚光をあび、植林は一九四十年後半から、六十年前半に及んだ。このため信州の山々は、カラマツの一大樹林地帯となった。
先日、出直し選挙で当選した、田中康夫長野県知事が記者会見した北アルプス南端・朝日村の「あさひプライムススキー場」ゲレンデ周辺も緑深いカラマツ林であった。
長男の所有する山荘のある、長野県白馬村のみそら野高原から、北アルプスを望むと、北から白馬岳・杓子岳・鑓が岳と白馬三山が見える。標高千五百米の蓮華温泉から、白馬山頂に向かう途中の樹林帯を抜け出た、天狗の庭(二千米)の岩場には、しっかりと根を張った天然のカラマツが金色に輝いている。三山につづいて唐松岳が見渡せる。その名の通り、ここにはカラマツが群生しているに違いない。
白馬の山々の落葉松に恥じないよう、私の自分史「落葉松」を完成させたい。
本書(戦前編)は、NHK浜松文化センター(アクトタワー浜松八階)において、平成十三年四月より十五年三月までの二年間、月二回の「自分史を書こう」講座の作品に加筆・訂正したものです。途中、病気入院のため八回ほどの欠席がありましたが、どうやら傘寿の八十歳記念として纏める事のできましたのは、ひとえに講師の藤田安彦先生のご指導と、受講生諸氏の声援のおかげと深く感謝しています。
(平成十五年三月記)