新・本と映像の森 82(映画3・アニメ2) 片渕須直・アニメ映画『この世界の片隅に』
片渕須直監督・脚本、こうの史代原作、2時間9分、2016年11月12日封切り
主人公は呉の高台に住む北條すず、旧姓浦野、結婚前は広島市に住む。かなり有名なアニメ映画なので、人物紹介やストーリイ紹介はしなくてもいいだろう。
ここ数年いやここ数十年でも傑作のひとつだと思う。平和映画としてではない。そういうレベルを完全に越えている。
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物語のなかば、「戦争があっても蝶は飛ぶ、セミは鳴く」というセリフが語られる。すずの独白?
そして物語の要所要所でトンボが飛ぶ。
最初にヤンマ、次にシオカラトンボ(?)、そして赤トンボの群舞。
いちばん印象的なのは日々の食事の描写だ。
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後半ですずとめいの晴美が空襲を受け、晴美は爆死、すずは右手を失う。右手を失ったすずがそれでも婚家の家事を片手でしている。
原因は脳出血で違うが、同じように右手・右足が動かないボクとしては、すずに対する態度として同情やかわいそう目線では、あり得ない。
やはりすずさんに同じ立原からエールを送りたい。
そしてすずさんやボクのような個体にやさしい社会をつくっていきたい。それは、まだまだずっと続く。
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タイトルの「この世界の片隅に」は原作マンガのタイトルだ。なぜ「この世界の片隅に」でとし「この世界の片隅で」はないのか、という話を友人とした。またいつか語る時もあるような気もする。
以下、マンガ版の感想を以前の「雨宮智彦のブログ」から引用しておく。
戦争と平和の本 2 こうの史代さん著『この世界の片隅に 上』<アクション・コミックス>、双葉社、2008年2月12日第1刷~2009年8月10日第8刷、定価648円+消費税
戦争中の広島、海苔をつくる家で育った、絵の好きな主人公・浦野すずさんの少女時代からの物語マンガです。
昭和9年1月の設定の「冬の記憶」に始まり「大潮の頃」「波のうさぎ」と少女時代を描きます。
昭和18年12月から「この世界の片隅に」が始まり、すずさんは、広島から30キロの呉市の北条周作さんに嫁ぎます。
戦時下ではあるけれど、上巻では、夫と両親、義姉と娘の幸せなくらしが続きます。
戦時下の非常食用の草花をすずさんはスケッチして書き付けます。
「たねつけばな 辛い」「たんぽぽ にがい」「かたばみ 酸い」「はこべ 甘い」
「楠公飯」というのも、しんどいというか、切ないですね。
こうの史代さんの、優しい描線、ほのぼのとした感じが好きです。
けなげな主人公のすずさんは、こうのさんの性格の投影でしょうか。
少女編の「波のうさぎ」も切なくて好きですね。
すずさんの同級生の水原さん(男性)の兄が海で水死します。
美術の時間、校外で絵を描けというテーマに、海岸で座り込んでいる水原さん。
水原「うさぎが跳ねよる。正月の転覆事故の日もこんな海じゃったわ」
すず「いまのんはどういう意味?」
水原「えっあ 言わんか?ほれ白い波が立っとろう。白うさぎが跳ねよるみたいなが」
すずさんは、水原さんの代わりに海の絵を描いて、その絵に、たくさんの波ウサギを描き込みます。その結末が最高にいいですね。
こうのさんの『夕凪の街 桜の国』は、映画化もされましたが、ぼくは原作マンガの方が好きです。
(ミール)