新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

HTLV-1キャリアの方(もしくは調べに来た方)への説明(アンフェタミン版)

2012-01-13 21:28:43 | 医学系

こんばんは

 

少し前に帰ってきました。今日は午後から休みをいただきました。

 

明日からうちの両親と相手の両親を呼んで顔合わせをするのですが、婚約指輪が出来上がるのが今日の17時以降。19時半に店が閉まるということで、仕事が終わってからでは回収できない可能性があったので、休みをいただきました。

 

今はそういうこともできるのがうれしい。

 

指輪は非常にきれいでした。はい。

 

さて、今日は気になる記事がいくつもあります。

最初にこちらの記事を紹介します。

 

 HTLV-1キャリアからの相談体制をめぐり議論した協議会(12日、厚生労働省内)
 成人T細胞白血病(ATL)などの原因ウイルス「HTLV-1」への総合対策の推進を図る「HTLV-1対策推進協議会」(座長=渡邉俊樹・東大大学院教授)は12日に会合を開き、同ウイルス感染者(キャリア)が医療機関などに相談する体制をめぐって議論した。委員からは、キャリアの不安を取り除くために相談体制を強化すべきとの意見があった一方、HTLV-1の症例が少ない地域で十分な対応をすることに「限界がある」という声もあった。

 厚生労働省によると、HTLV-1キャリアからの相談窓口が、保健所や保健センターなど622か所(2011年11月1日現在)に設置されており、同年4月から10月にかけて、236件の相談を受けたという。

 12日の会合では、自身もキャリアで、現在はキャリアに向けた情報発信などを行っている畑由美子氏からヒアリングを実施。畑氏は、キャリアだと分かった時のことを、「余命宣告を受けたような気持ちだった」と振り返った。その後、医療関係者に相談したが、HTLV-1に関する見識を持った人がおらず、インターネットで調べた結果、協議会に委員として参加している菅付加代子氏が代表理事を務める「日本からHTLVウイルスをなくす会」を見つけた。菅付氏から「出産は可能」と言われ、長女を産むことができたという。
 畑氏は、「キャリアは病気ではない」と述べ、HTLV-1の正しい知識を普及することで、キャリアの不安を取り除くべきと主張した。また、出産や授乳での母子感染に関する相談支援の充実や、HTLV-1に見識の深い医師を紹介するシステムの必要性を訴えた。

 山野嘉久委員(聖マリアンナ医科大難病治療研究センター准教授)は、「大きい不安を抱えたキャリアの質問に答えられる人は少ない」と述べ、現行制度を改善すべきと強調した。一方で森内浩幸委員(長崎大大学院教授)は、相談を受ける保健師などが、講習で説明方法を覚えても、症例が少なく、実際に相談に応じなければ、忘れてしまうと指摘した。

 HTLV-1は、ATLや関連脊髄症(HAM)などの疾病を引き起こすが、それぞれの発症率はATLが約5%、HAMは約0.3%と低く、キャリアでも未発症の人が多い。ウイルスの活動領域は九州地方など西日本が中心だったが、近年、全国に拡散する傾向が見られている。主な感染経路は母乳とされており、国は10年10月から、妊婦のウイルス抗体検査を公費負担にするなど、全国規模で予防対策を進めている。

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僕も昔HTLV-1の妊婦健診(全員やれと・・)の話を書いたときに少しHTLV-1に関しては触れたと思います。

 

前も書きましたがHTLV-1感染者(キャリア)からの生涯発症率は2~5%(血液専門医テキストより抜粋)、平均発症年齢は60歳とされています(50~60年の潜伏期がある)。

 

血液内科の外来をやっていた時、一時期HTLV-1関係の相談が増えた時期があります。浅野前宮城県知事が治療されていた時期ですね。

キャリアだったのだが、どうしたらよいだろうか…という話です。もしくは、兄弟がHTLV-1に感染していたのだが、私は大丈夫かというような質問。

 

この手の患者さんが一番時間を必要とします。

 

とりあえず、僕は全員に「HTLV-1」というウイルスの性質、特にこの「生涯発生率」と「年間発症リスク」に関してです。50歳以上の方が多かった(というか、全員50歳以上だったはず)ので、妊娠したら…という話はしませんでした。母乳の話もしていません。

ATLLの年間発症リスクです

ちなみに参考までにこちら「http://www.nih.go.jp/niid/HTLV-1/yamaguchi2010.pdf

ちなみにおまけですがHTLV-1の針刺し事故による感染は確率的には非常に低く、ほぼ0です。去年、ATLLの患者さんで針刺し事故があり、相談を受けたのを思い出したので、おまけ情報です。

 

ともかくお伝えしていたのは一生に発症する確率は2~5%、年間発症リスクは0.1~0.2%である。

これが一つ目。

 

2つ目に検査をしに来た人に関しては

「仮にHTLV-1のキャリアだとわかっても、予防する手段はありません。僕も九州出身ですが調べてはいません。調べたから予防できるのであれば、調べるべきですが○○さんが心配してるHTLV-1のキャリアかもしれない…という心配よりも、キャリアだった場合に『発症するかもしれない』と心配する方が精神的に良くないかもしれません。言い方は悪いですが、仮にキャリアだったとしても95%の人は発症しません。そうかもしれないのに、一生心配し続けるかもしれません。僕は検査をしてほしいといわれたら、検査をすることはできます。ただ、そのことをどうおもいますか。検査をしますか?検査をするかしないか決めきれなかったら、一度考えてから来てはどうですか?」

と、伝えました。少なくともその時に検査はしませんでしたし、僕の外来には来ませんでした

 

3つ目にHTLV-1のキャリアであった人に対して、上記の説明に加えて「sIL-2R」を測定しました。sIL-2Rは悪性リンパ腫の腫瘍マーカーの一つです。しかし、必ず上昇しているわけではありません。IL-2Rは基本的にT細胞に発現しているものです。B細胞性悪性リンパ腫で上昇している場合は、異常な細胞(癌化)になったため本来持つはずのないものを持ってしまった。だから上昇しているのです

しかし、ATLLなどのT細胞系の腫瘍であれば必ず上昇します。僕の知っている限りでは発症した時の最高値は10万を超えていました。まぁ、同じ急性型でも2万代の方もいましたが。いずれにせよ、桁外れに上昇します。

それを説明し、経過観察はsIL-2R を使用すること(理由も説明して)、そして申し訳ないがうちの大学病院では経過観察まではできないから(朝から晩まで40人以上の患者を診ているのに、患者ですらない人を診る余裕はなかったわけです。一人見始めたら、全員受けなくてはならないので全員断りました)、きちんと紹介状を書きますので、近くの病院で診てもらってください。上昇したらすぐにこちらに紹介するように書いておきます…と言って、全員紹介しました。

 

最後に若い人は僕の外来にはきませんでしたが、以前も書いたように「妊娠する可能性のある人」や「妊婦さん」に関しては全員調べるべきであるというのは変わりません。それは昔も書いたと思うのですが、余計な心配要因を増やすかもしれないが、未来のある子供たちのために、キャリアになってしまう子供を増やさないために協力していただきたいと思っています。

 

まとめますと、

HTLV-1は生涯発症率2~5%、年間発症率0.1~0.2%の確率でATLLを発症します。HAMはもっと低いです。

そういう意味ではキャリアの方は心配しすぎても、何も起きない可能性が高いと思います。それ故、高齢の方で心配する可能性がある方には検査は僕は勧めません。しかし、若年女性の方に関しては、子供たちのために調べてほしいというのが僕の考えです。

 

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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それでは、また。


追加です。この記事を全面修正はしませんが、現在はキャリアの方は対応が決まっています。この記事を書いた時にガイドラインを確認していなかったのが悪いのですが、認知度がその時は低かったように思います。

誠に申し訳なく思っております。

 

基本的に上のような対応をすることになっています。

記載の通りですが、有病率が低い地域では「偽陽性」が多くなります。要するに東京では75%は偽陽性になっているということです。

 

コメント欄にもいくつか質問が来ておりますので、それに対するコメントなども参考にしていただければと存じます。

 

 

 

 

 

コメント (13)
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