新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

医療の安全弁を作るために

2012-01-25 09:05:37 | 医療

出発前に一つ紹介したい記事を見つけました

2012.0124navi.jpg

ヒヤリハット、9割が経験
http://www.47news.jp/feature/medical/2012/01/post-613.html

医師千人に調査

 医師の9割が、医療事故につながる恐れのあるミス、いわゆる「ヒヤリハット」を過去1年以内に経験し、月に1度以上の頻度で経験していた医師も3割に上ることが、医師向け情報サイトを運営するケアネット(東京都千代田区)のインターネット調査で分かった。
 昨年12月、同社の会員医師を対象に実施、千人から回答を得た。
 ヒヤリハットの頻度は「週に1度程度」が7%、「月に1度程度」が26%で、合わせると3人に1人が月に1度以上経験していた。「なし」は13%にとどまった
 どんな場面でヒヤリハットを経験したか、複数選択で聞いたところ、最も多いのは「薬剤の処方・投与」で56・5%、次いで「治療・処置の誤り」25・7%、「患者の転倒、ベッドからの転落」24・2%、「検査」12・0%の順だった。
 具体的な出来事を記述式で尋ねると、薬の処方や投与については「小児に成人量を処方しかけた」「散剤(粉薬)の含有量計算を1桁間違いかけた」「自分が処方したものと違う薬が使用されていた」―といった回答が寄せられた。
 また、診療内容を電子情報として編集・管理する電子カルテに絡んで「複数の患者の画面を開けていて、別の患者に処方してしまった」「似た名前の薬剤を押してしまった」という医師も。「電子カルテになってミスが増えた」という意見もあった。
 転倒・転落については「患者の高齢化で事故は増加傾向にある」「認知症患者の転倒事故は、環境整備や監視体制の改善を行っても、なかなかなくならない」と指摘する声があった。

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教育をどのように変えるべきか(追加小咄:医療ミスは隣りあわせ)
という記事でも書きましたが、やはり薬に関することは多いと思います。逆に13%の経験したことがない人はすごい…というか不思議。ちょっとでも「あぶねっ」って思わなかったのかと。

9割もそんなことを経験しているのか…と思う方もいると思いますが、人間なので「危ない」と気が付き訂正するのはよくあることだと思います。それが訂正されずに行かないようにするには複数の安全弁が必要です。

 

そのためには医療従事者の数がもっと必要です。患者さんの処方に関して「数」の間違いを確認することはできても、中身が間違っているかどうかを確認できるほどの体制は確立できる状況ではないです。

 

「日本の医療は日本の医師の聖職者的貢献で成り立っている」とクリントン国務長官が以前(1990年代)日本に来た時に言ったわけですが、全てを完全にこなせる人はいないにもかかわらずそれを要求し、システムの改善に向かっていかない日本の医療

 

ヒヤリハットはなくなりません。ただ、ヒヤリハットで済むか、大きな事故(悲しむ方が大勢出るような)につながるかはシステムの問題だと思います。

 

今の日本の医療ではヒヤリハットが一定確率で事故につながってしまうのではないかと思います。これがどのようなシステムにするとよくなるかと言えば、その患者さんのことを医療にかかわる全員が共通の認識をしていて、お互いにチェックできる…ということなのだと思います。

それを作るためには医療従事者の数はもっと増えなくてはならないし、おそらく情報や認識を共有するためのネットワーク整備も必要になるのではないかと考えています。

 

僕はこの記事に関して「ヒヤリハット9割経験」に関しては・・・そうですねくらいです。別に「おっと危ない」と思うことがあるのは人間ですので、仕方がないところです。しかし、そのことに対して「医者、もっと注意しろよ」ではなくて「システムを改善させなくてはならないな」という話だと思います。

 

この記事を読んだ方々が「医者、しっかりしろ・・・」と思われるかもしれませんので、いやこの記事は「医療のシステム改善が必要」という話だと思うと紹介したくて、記事にしました。

 

それでは、そろそろ式場見学のほうに行きます。式場見学って概ね午後なんですかね・・?

 

 

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アンフェタミン流チーム医療戦術シート:実際は難しいかな、人が足りなくて

2012-01-25 08:01:19 | 医学系

おはようございます

 

今日は式場見学目的でお休みをいただきました。冠婚葬祭関係ではしっかり休みをいただけて、ありがたい限りです。

 

昨日、一昨日と僕の中にはなかった知識をいろいろ教えていただいきました。医療に応用できそうだと思ったので、僕なりに医療に応用するとどうなるのかを考え、アンフェタミン式チーム医療戦術という形で書いてみようと思います。

あくまで個人の考えであり、僕が自分の理解を深めるために書いているだけですのであしからず

まぁ、あえて書かなくても多くの医師は頭の中でやっているのですが…チーム医療をするならばチーム全員がその患者さんに対して気持ちを一つに、そして方向性を見定めて治療は行うと思うので。

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1、この患者は何を目的として入院(外来)してきたのか(例:胃癌の手術、骨髄移植、腹腔鏡下手術・・・)

2、状況は(治療に関係しない純粋な状況)?

(1)患者の背景、家族、経済的背景

(2)治療施設の背景、スタッフ(自分たちのこの患者の治療をする上での背景、再生不良性貧血の免疫抑制療法で入院の患者と骨髄移植の患者では状況は異なると思います)

(3)患者さんの身体の問題(既往歴などもあるが、既往はなくとも問題があるところ、実は治療前にBNPが上昇しており・・とか)

(4)一般的な治療経過とその際に起きる対応(例:急性白血病の地固め療法、治療スケジュールだけでなく、何日ころに白血球が低下し、このくらいで輸血が始まり、このくらいの時期に感染症の可能性があり・・・と全員が確認し、その際の対応も確認する)、起きてほしくないけど・・・こういうことも起きるかもということの重要なところ(転倒リスクのある人の転倒、感染制御できなかった場合の敗血症性ショック、消化管悪性リンパ腫などで初回治療で穿孔するなど)

3、治療に関すること

(1)今回の治療に関して(例:何月何日をDay0として血縁間同種骨髄移植を実施)

(2)治療が終了して無事に退院するまでに行うことリスト(例:前処置、輸注、免疫抑制剤を安定させる、感染制御、疼痛管理、消化管障害の管理、生着後の対応(GVHD含む)・・・など、細かくするとさらにこまかくなっていきます)

(3)そのなかでも重要な本質はなにか(前処置、骨髄採取と輸注、免疫抑制剤の適切な投与、感染予防と対応、生着するかしないか、GVHD・・・)

(4)この患者で特に重要なことは(心臓が弱い人の輸注+その後の心機能とか、ハプロ移植なら免疫抑制剤+GVHDとか)

4、治療達成のために必要なことは?(3を考慮して)その処置はやらなくてはならないのか、やったほうが良いのか

5、制限事項は?(医師に対して要求すること、禁止すること、看護師さんに対して要求すること、禁止すること)

6、現時点で分かっていることの確認(事実として~~、おそらく~~であり、確認を要する)

7、上記を認識したうえで、現時点で行うべき物事のリスト(現在持っている情報と知っておきたい情報の差を確認)

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ですかね。

とりあえずチーム医療をやるうえで、上記を主治医(チームリーダーの医師)、研修医など(チームに所属する医師)、看護師、薬剤師・・・などなどが治療開始前に確認していればチームとして成立するだろうな~と。

 

逆にそのくらいできていなくてはチーム医療ではないなぁ

 

こんなことをやっている暇はないといわれそうですが(一人一人の患者さんに関してチームとして当たるためには作成時点で、みんながいる必要があります)、全員が一人の患者さんに対して同じ認識をしているからチームなんだと思います。そのために全員が共通して上記の情報は最低限必要かな…と思います

こんな話だったような~ではなくて、事実とその可能性がある…という問題点をすべて共有し、目指す目的地に向けて全員が歩いていける

 

このポイントは「どうやって行うか」は書かないところ。

 

最初のイメージと目指す最終のイメージを共有する。そこに向かうやり方に関しては無数にある。状況によっては自分が判断しなくてはならないこともある

その判断のためには全員が最低限知っておかなくてはならない情報は…これだろうな~というところです。

 

実際にはおそらく主治医に関してはこの程度のことはやっていると思います。ただ、全員が同じ認識をしてなくてはチーム医療ではないし、チーム医療でなくても治療にかかわる人はやはり最低限の情報というのが必要なのではないかと思ったりしています。

 

あくまで私見ですのであしからず~w

 

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