新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

頭痛の患者さんへの説明

2012-06-21 21:25:12 | 医学系

さて、続けます。

 

ちょっと前に頭痛に関して職場の方が相談に来ました。その時の会話を使って、簡単にどう説明しているか書いてみようと思います。

いつもの医学系、説明シリーズです。

---------------------------------------

「先生、おはようございます」

「○○さん、おはようございます。どうしました?」

「いや、頭痛がひどくて・・・。たまにあるんですよ、こういうズキズキした頭痛が」

「なるほど、ズキズキした頭痛なんですね。どんな感じで起こりましたか?きっかけとか・・・。あと、他には吐気とか他のつらいところはないですか?

「いや、ないですね。起こったというか・・・たまにある・・・いつもの頭痛です」

「たまにあるとおっしゃいましたが、いつもと同じくらいの頭痛ですか?いつもより強くて、今までには経験したことのないような頭痛ですか?

「いつものやつです。先生、薬をもらえませんか?」

「薬をだすのはよいのですが、薬によって大事な何かを隠してしまわないかの判断だけ先にさせてください。まず熱を念のためはかってください。その間に少し話をしましょう」

「はい。」

「いつもということでしたが、どのくらいの頻度で起きているのですか?」

「だいたい・・・2,3か月ごとくらいだと思います。」

「何時間くらいつづきますか?」

「1日は続かないですが・・。結構つらいですね

日常生活に支障はありますか?

「少し生活に支障はありますが、仕事ができないほどではないです。」

「○○さんは強いですからね。普通の人はダウンじゃないですか(笑」

「(笑)」

「先程ズキズキと言いましたが、脈打つ感じなんですかね?」

「そうですね・・・。そんな感じだと思います」

「吐気はないといっていましたが、なんか頭痛の前にサインみたいのがあったりしますか?目の前が暗くなるような(結構片頭痛に的をし追っている)」

「いや、ないですね」

「多分、違うと思うのですけど・・・頭痛の頻度が増えたり、痛みがどんどん強くなったりはしませんか?

「いや、そういうのはないですね。高校とか大学くらいからありますよ」

「なるほど、体温は…36度で平熱ですね。少し診察をさせてください。それが終わったら薬を飲んでいいですよ。診察の後、もう少し質問させてください」

「はい」

------------------------------------------------

こういうと問題があるかもしれませんが、僕は「ファーストインプレッション」がもっとも重要だと思っています。多くの先生もそう思われていると思いますが・・・。

あとは危ないものを除外する。基本的に頭痛で怖いのは「くも膜下出血」「脳腫瘍(慢性だが、徐々に増悪。朝型が一番症状が重い)」「髄膜炎」などでしょうか。これらを除外するために必要なのは「急性発症か、否か」「痛みの程度は?」「徐々に悪化する頭痛ではないか」「発熱などを伴っていないか」などでしょうか。

 

あとは話している間に手足の動き、顔全体…いろいろ見ながら「麻痺はない」とかを判断します。

危ない頭痛ではなさそうだと考えたら、あとは機能性頭痛(慢性頭痛)である「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」などを判断します。

そういえば、群発頭痛と言えばこんな記事がありましたね

ハリポタ役ラドクリフさん「群発頭痛」 「目の奥がナイフでえぐられる!」」

http://www.j-cast.com/2012/06/21136612.html

 

片頭痛は…簡単にいうと「日常生活に大きな支障を与えうる慢性頭痛」であり、多くは片側性(両側もある)、拍動性(ズキズキ)で、気持ち悪くなって吐いたりすることがあります。日本人は20%以下と言いますが前兆をともなう場合があります。頻度は様々ですが連日ではなくて、1両日くらいで収まることが多いです。

いっぽう緊張型頭痛は連日続くようなタイプの頭痛です。痛みは非拍動性で、両側に痛みが出ることが多いとも言われています。

群発頭痛は数分から2,3時間の持続時間で、痛みのあまりのた打ち回るほどと言いますが…どうやら動いた方が痛みが良くなるというのが理由のようです。痛みが出やすいのは「上」の記事にもありますが夜中に起きることが比較的多く(片頭痛が寝たら治るタイプとは逆ですね)、目の奥がズキズキするといわれます。あと流涙をともなうと言いますね

実は片頭痛や緊張型頭痛は大勢診ていますが、群発頭痛の患者さんに出会ったことはまだありません。比較的まれな疾患です(くも膜下出血とか、脳腫瘍の方が数回あるから・・・)。

 

ちなみに片頭痛は若い時期(20代くらいまで)に発症する方が多く、あまり高齢発症というのはありません。そういったこともチェックしながら話を聞いていきます。

 

---------------------------------------

「診察結果と今までの話の内容からは片頭痛でよさそうですね。今まで病院を受診したりしたことありますか?」

「いや、市販の頭痛薬で対応していました」

「片頭痛には特効薬があります。実は片頭痛はズキズキしますけど、これは血管が広がったときに起こる痛みなんです(絵をかいて説明。僕は必ずA4の上を使用して絵をかいています)。だから、血管を縮こまれさせれば痛みは改善するわけですね」

「なるほど」

「これらをトリプタン製剤と言いますが、同系薬剤の片頭痛の特効薬が数種類あります。値段が高くて、だいたいどれも1錠1000円からします。痛みが非常に強ければ…使う価値がありますね。使用して80%の人に効果があるといいますが、効かない人も当然出てきます。また、血管を縮こまらせるということは…ある種の病気には病気を悪化させる可能性があるわけです」

「なんですか?」

「心臓ですよ。狭心症とか心筋梗塞とか。そういう副作用がります。だから普通の痛みどめで対応できるなら、無理に特効薬を使用する必要はないです。ただ、痛みのために日常生活が大きく支障をきたすなら使用するべきでしょう。薬物治療によるメリットがデメリットを超えるときに常に内科医は薬物治療を考えます

「今のお話を聞く限り、普通の痛み止めで大丈夫です」

「話しているうちに少し顔色が良くなられましたね」

「そうですね。薬ありがとうございました」

-------------------------------------------

これでだいたい20~30分くらいです。

意外と時間かかるものですよ。

 

 

和田秀樹医師に伝えたいですね。内科医だって説明や治療の同意はしていると

和田秀樹医師の「内科医が説明・同意取得を怠っているのは怠慢」発言に対して

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

http://blog.with2.net/link.php?602868

人気ブログランキングへ←応援よろしくお願いします

なかのひと

blogram投票ボタン

それでは、また。

 

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

和田秀樹医師の「内科医が説明・同意取得を怠っているのは怠慢」発言に対して

2012-06-21 21:25:02 | 医療

こんばんは

 

本日は披露宴の最期の打ち合わせに行ってきました。自分でいうのもなんですが「想定」以上にいい披露宴になると思っております。酸化していただける方にはぜひ楽しんでいっていただきたいと思っております。

 

さて、本日はたまたまTwitterでしった和田秀樹医師のBlogに対してコメントさせていただきたいと思います。

 

ちなみにBlogの記事はこちら。

医者という名のリフォーム詐欺師たち

http://ameblo.jp/wadahideki/entry-11282138402.html

 

内容に関しては

『(略)しかし、リフォームしなければ家が壊れる確率が10%で、リフォームしても元の家ががたがきているので6%は壊れるという場合はどうだろう?

しかもその業者が、リフォームしなければ100%家が壊れるような口ぶりでリフォームを勧めたり、本当はリフォームしても6%も壊れるのに、リフォームすれば大丈夫といういい方をした場合はどうだろう?

実は日本の医者は似たようなことをしている。(中略)

おそらく日本中の医者が、この手のリフォーム詐欺のようなことをやめて、薬を飲んだ時と飲まなかった時のエビデンスを示したうえで、患者に薬を飲むか飲まないかを選ばせるようにしたら、国民医療費ベースで2-3兆円は毎年浮くだろう

少なくとも患者の側は医者に、「この薬でコレステロールが下がるのはわかりました。でも、それで死亡率が下がるエビデンスはあるのですか?別の薬でもいいのですが、死亡率が下がるエビデンスのある薬を下さい。NIHのHPなどに出ているでしょ。私は素人だから、その手のデータを読んでもわからないけど、あなたはプロなんだから、そのくらい調べて薬を出すのが当たり前でしょ」くらいのことを言う権利はある。外科の手術の場合は、その危険を説明して、受けるか受けないかの患者の同意をとるのが当たり前になっている

内科系の医者がそれをしないのは明らかな手抜きだ

もちろん、それをするのに割があわないくらい診療報酬が低いのも事実だ

医者に説明責任を持たせる代わりに診療報酬を上げたほうが、薬屋に儲けさせて国民の健康を害するよりよほどましだと思うのだが』(引用終わり)

------------------------------------------------

内科系の医者がそれをしないのは明らかな手抜きだとある

 

怠慢でそうしているのか…とまず聞きたい。

 

僕は大学時代に外来日以外に隠れて外来をしていた。それは昼食は確実に抜いて、患者さんの診療に全てを当てたとしても1時間以上は遅れてしまう。外来日は初診の患者の説明(ある程度の)に加えて、予約の患者が40~50名きている。それはすべて血液疾患の患者で急性白血病や悪性リンパ腫の経過観察の患者さんであれば短時間で終わらせられるが、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群や再生不良性貧血など外来治療をしている患者さんたちへのそのたびの説明に10分以上は必要だと考えているからだ。

 

そうすると新患が数名来たら必ず遅れてしまう。新患、急性白血病は入院可能であれば即入院だから後でもいいが(簡単な説明はしますよ。白血病が疑われて、それが緊急性を伴うものであることなどを伝え、すぐに入院してほしい旨を伝えます)、悪性リンパ腫や骨髄腫などに関しては検査Planなども含めて説明が必要。しかも、告知ではないにしても簡単に済ませられる話ではない。30分は必要なのだ

 

その状況下で他の患者さんに説明できることには限りがある。

 

僕は「生活習慣病の患者さんに最も必要なのは生活指導」と考えているので、基本的に時間が足りないから「大学病院の血液外来」では血液疾患に限定して診療している。そうでなくては自分の守備範囲の説明ができなくなるから。

 

確かに一部の内科医は説明不足の人間がいる。どう考えてもおかしいという人間はいると思う。

 

しかし、ここで書いているような「この薬でコレステロールが下がるのはわかりました。でも、それで死亡率が下がるエビデンスはあるのですか?別の薬でもいいのですが、死亡率が下がるエビデンスのある薬を下さい。NIHのHPなどに出ているでしょ。私は素人だから、その手のデータを読んでもわからないけど、あなたはプロなんだから、そのくらい調べて薬を出すのが当たり前でしょ」と言われるほどの状況がそれほど多発しているのだろうか?

 

であれば何のためのガイドラインなのかと思う。例えば・・・「高血圧治療ガイドライン2009」など定期的にガイドラインは改善されていると思う。その合間に確実にこれが正しいという国際的コンセンサスが出ることもあるかもしれないが、確実にそれが示されていないのであれば一つの根拠でどこまでやるのかは各自の判断になると思う

 

和田秀樹医師は「内科医がそれをしないのは明らかな手抜きだ」という。本人はよほどすばらしい診療をしているのだと思うが、内科医が誰も説明していないといいたいのだろうか?

先程も書いたが説明時間が足りないから「別の曜日」に隠れて外来をしている。それに伴い入院患者さんの対応に問題が所持ることもある。入院患者さんやその家族に説明するのはそれに伴い、いつも21時過ぎまでやっている

 

和田秀樹医師が「内科医が不足していて、それらの説明ができないほど過密な診療体制である。それゆえ診療報酬を上げて、それらができるようにするべきである」と書くのであれば、理解はできる。しかし、この文章は「あなたは何者ですか?」と思わざるを得ない。

 

初めてこの方のBlogを読みましたが、こんなことを毎日書いているのであれば辞めてほしいと思います。これ以上読む気にはなれませんが。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

http://blog.with2.net/link.php?602868

人気ブログランキングへ←応援よろしくお願いします

なかのひと

blogram投票ボタン

それでは、また。

 

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする