玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

出産前後

2006年05月22日 | 捨て猫の独り言

 独居の折はレシピ片手に料理に励んだ。台所で調理していると楽しかった。何とも濃厚な時間であった。生活はもとに戻り、今はあの頃のことを懐かしく思い出すだけである。なぜ料理にのめりこんだのだろう。独居が短期間限定であったことや、娘が大きなお腹を抱えて転がり込んできたことなどがその理由として思い浮かぶ。

 娘から5月11日に診察を受けたらそのまま入院となり促進治療を受けているとの連絡が入る。2週間早い。夕方に様子を見に行く。エキサイティングだと青年は病院の廊下を弾む足取りで私達を手術室に案内した。その日の日付けが変わった午前2時に 「産まれました」 とほっとした様子の声に起こされた。手術を受けて2時間後の本人からの直接の電話だった。事も無げに何でもやってのける印象のある彼女らしい電話だった。

 翌日の夕方病室へ行くと娘の友人、友人夫婦の3人が来ていた。彼はベイビーに帽子をかぶせてほっぺをつついていた。出産に立ち会った彼は自分の妻に 「頭が出てきた」 などと逐一報告したらしい。人が死ぬ思いをしているのにコン畜生と蹴飛ばしたかったなどと娘が冗談めかして見舞い客に話す。女性達は生まれたての赤ん坊を交互に抱きかかえた。私はそれを遠まきに見ている。青年はさりげなく私に赤ん坊を手渡してくる。

 誕生直後の日は2人とも寝かせてもらえなくて疲労困憊だったらしい。青年はオムツの取替えなど手際がいい。娘よりも上手である。彼は一週間の休暇をとることができてまめに赤ん坊の世話をした。娘は今更のように彼に感謝している様子である。私も一区切りがついて安堵した。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする