台湾史の解釈や台湾と中国との関係については様々な意見がある。独立派あるいは本土派の主張の一つは「内戦で敗走した国民党政権は台湾に専制を敷いて居座った。中華民国の統治が不当なのであれば独立という言葉自体がおかしい。また中華人民共和国は台湾を統治したことがないので北京政府からの独立というのもおかしい。本来は独立ではなく台湾住民が自らの意志によって建国しなければならない」である。
それに対して統一派の主張の一つは「中国とは一種の文化圏である。台湾に住む人々も、世界各地に住む華僑もすべて中国人である。中国人は一つの国家を造らなければならない。台湾は世界で認められた中国である中華人民共和国政権に吸収されるべき」である。若い世代の一般的な意識としては「台湾」は自国名、「中国」は中国大陸、「台湾人」は現在台湾に住んでいる全住民、「中国人」は中華人民共和国民のようだ。(写真は4月6日・小金井公園にて)
台湾の総統選挙とアメリカの大統領選挙は毎回同じ年に実施されている。前回2012年の総統選挙は国民党の馬英九候補が得票率52%で、民進党の蔡英文候補の46%を上回り再選された。選挙のときの馬英九氏の主張は「中国と台湾は一つの中国であることを認め、統一せず、独立せず、武力行使せずの原則維持で中台交流を拡大」だった。蔡英文氏は「中国との関係は台湾人の総意で民主的に決める。対話を通じた平和で安定的な関係構築をめざす」だった。
ところで昨年の統一地方選挙では国民党が歴史的敗北を喫した。蔡英文氏は党主席として台湾中部を精力的に回るなどして民進党を大勝に導いた。台湾の政治の関心は来年2016年1月の総統選挙だ。蔡英文氏が党の総統選候補に改めて選ばれる可能性が高く「台湾初の女性総統」への再挑戦が注目されている。中国と対立してきた民進党を引っ張る蔡氏には対中関係を安定させる政策の確立が課題となると言われている。