ある日、すこし遠くまで歩きたいと思った。いつもなら自転車でゆくところを歩くとどのぐらいかかるだろうか。そして、どこかに歩数計もあったはずだ。リチウム電池を入れ替えると歩数計が動いた。この電池が歩数計のためのものだと知った。歩数計だの時計だの、あまりにも計量に気持ちが傾き過ぎている。そこで毎日新聞の近藤勝重のコラムを探して、つぎの達意の文章に再会した。
「心は内に閉じ込めるものではなく、外に連れ出すものかもしれない。そう気付いて始めたのは、外に出て自然に触れ、くつろぐことであった。事実、心が自然の中で生き生きと動き出すと、心身が前向きになれた。精神の勇躍である。木を眺め、その上の空を見上げ、木の下の大地の感触を得ると、木は木で生きているといったことをはじめ、自然を成す一つ一つがそれぞれに役目を果たしていることも、今さらのように納得できた」
この日は都立小金井公園を目指して歩いた。玉川上水沿いの緑道だけを歩く絶好のコースだ。歩き方について同輩のアドバイスを受け、そのことに留意して歩く。外に出て自然に触れ、くつろぐというのとは大違いだ。心の解放というよりも、身体に負荷をかけるというのが一番の目的という歩きである。公園にある「さくらの園」のベンチに腰をおろすまでに、ひたすら歩きで1時間だった。(写真左はコゲラが好むマユミの実)
しばしの休憩の後の後半の歩きでは、足が張った感じになり、汗ばんでセーターを脱ぎ、集中力に欠ける状態になった。地図上の計測では片道5㌔である。歩数計は往復で15000を示していた。。この程度のひたすら歩きを週に2回ほど行えれば立派なものだ。この日は公園のベンチの背もたれに付いているプレートに気付いた。2003年から東京都建設局が行っている「思いでベンチ事業」だと知った。15万円または20万円の寄付でプレート入りのベンチが新設されるという。