元旦の正午ごろは近くの小川寺に行く。その前に、青梅街道をはさんで真向いにある小平神明宮の初詣の善男善女の長蛇の列を見物に行く。お参りはせずに神社の裏口から境内に入り、拝殿前の行列を眺めながら甘酒をいただき、焚火にあたる。それでもまだ、この不届き者への天罰はくだっていない。
小川寺に行くのはその後である。こちらは殆ど人影がない。除夜の鐘をつくために並ぶ人は大勢いるのだろう。だが、それをこの目で確認したことはない。小平の開拓者である小川九郎兵衛が勧請して開いたのが小川寺で、本人も境内の墓地に眠る。(国分寺の殿ヶ谷戸庭園入り口にて)
臨済宗円覚寺派の寺院である。季刊誌「円覚」の正月号が置かれているので、毎年持ち帰る。それを開くと今年は釈宗演老師の百年忌とあった。老師の「菜根譚講話」にまつわることが書かれていた。菜根譚は中国の古典。記事の主旨は大自然と人の心は一体ということだった。私が菜根譚で教わるのは「小過を責めず、陰私をあばかず、旧悪を思わず」である。
釈宗演について調べてみた。日本人の僧として初めて「禅」を「ZEN」として欧米に伝えた禅師として知られている。師に福沢諭吉、弟子に鈴木大拙、夏目漱石などとある。円覚寺派管長や東慶寺の住職を務めて、東慶寺にお墓がある。北鎌倉の東慶寺は昨年の夏に訪れた。そこでは鈴木大拙と小林秀雄の墓所に参った。