11月5日トランプが大統領に当選した。派手な装丁の Saku Yanagawa 著の「どうなってるの、アメリカ!」を読んだ。トランプに決まる直前の10月20日の出版だ。著者は13年前に渡米し、シカゴに住む現在32歳でスタンダップコメディアンの柳川朔という。略歴を見ると国立市にある桐朋中学・高校で野球部の主将を務め、大阪大学の文学部を卒業している。一人でステージに立ちマイク1本で笑いを取るのは簡単なことではない。
その彼がこの本で紹介したトピックの中で私にとって目新しいもの3つを取り上げる。まずは「オピオイド」で、これは非常に強い鎮静剤だ。国内のオピオイド中毒者は200万人を越えると言われておりCDC(アメリカ疾病予防管理センター)の発表したデータによると昨年アメリカで8万人がオピオイド中毒により命を落とした。これは交通事故で亡くなる人の2倍にのぼる。また現在アメリカの成人の5人にひとりがメンタルヘルスに問題を抱えているというデータも出ている。
ベトナム反戦や公民権運動が盛んな頃の1969年の6月に、ニューヨークのゲイバーで警官との乱闘の暴動が一週間続いた。この一件を経て各地でLGBTQの権利獲得に向けたデモや運動が起こった。シカゴ市は1997年ボーイズタウンをアメリカで初となる公式なゲイタウンとして承認。1999年クリントンは就任演説の際に「アメリカでは6月はプライド月間だ」と宣言した。シカゴでは毎年プライド月間の最終日曜日にプライド・パレードが行われる。街の道路は前夜から封鎖され沿道はレインボーの旗を振る人々で溢れる。スピーカーからは爆音で音楽が流され、曲に合わせて参加者が豪華な山車とともに行進すると人々は大歓声をあげて応える。
「批判的人種理論」とは、社会の差別や不平等は人の心の問題ではなく、制度や法律、政策が生み出しているという考え方である。この理論の提唱者は黒人弁護士で法学者でもあるデリック・ベル。大きな注目を集めるようになったひとつの要因は2019年ニューヨークタイムズが行った連載「1619プロジェクト」だろう。この連載はアメリカの建国を1619年、つまり最初の黒人奴隷がバージニア州の海岸に降りたった日と定め、黒人の歴史にスポットを当てながらアメリカの歴史を見つめ直そうとする企画だった。この理論が学校現場で教材化されてゆくと、保守派は「白人の子どもたちに無意味な罪悪感を与えかねない」「分断を煽る」とその導入に反対した。
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