春風が誘うように
重たい心の扉を開けてくれた人は
僕の黴臭い煤けた心に入り込んで
その風に吹かれると
自分の心にため込んでいた物が
全てつまらない意地から捨てられなかった
ガラクタのように思えてきて
心が軽くなることを覚えていました
春風が誘うように
重たい心の扉を開けてくれた人は
僕の黴臭い煤けた心に入り込んで
その風に吹かれると
自分の心にため込んでいた物が
全てつまらない意地から捨てられなかった
ガラクタのように思えてきて
心が軽くなることを覚えていました
三男の熱が高かったので
その日は休んで看病をすることにしました
もっとも熱があっても
大抵はテレビを見たりYouTubeを見たりと
余裕をかまして休みを楽しんでいるのですが
その日は熱も高く少しぐったりとして
僕のスマホで遊びながら
いつの間にか眠ったりしていました
その熱のある三男ですが
熱でちょっと弱って目が少し潤んでいて
頬っぺたがいつにも増して赤らんで
不謹慎ですがいつもよりも可愛く見えて
嫌がられながら
無理に抱き付いたりしていた自分です
「川縁にて」
君の小さな手が僕の手の中から離れ
君は風の中に立ち止まった
風は潤んで眩しくて
(凍える湖水に陽射しが溶けた
その淡き青を舐めてきたからだ)
目を細めて君を見た僕だ
君はすると
一本のアンテナのように
すっくり、空と直角に立って
風のなかに何かを感じていた
その遠くへ放たれた眼差しを
僕も知っている
鴎も届かない青い水平線に向け
当てもなく投網を打つ心持の
それは僕の眼差しでもあった
手を引けばずっと
ついてくる君だと思っていたけれど
君の中の何かが足を止めて
そこから動けなくなった
君は確かに、君だけの重力に足止めをされている
直ぐに来るのだろうと思って
君を見ていた僕も
真似ることにして
立ち止まって風に吹かれた
君が感じる物を見極めようと
透視をする人を真似て
目を細めて見たが
直ぐに諦めた
胸に湧いた君だけの何か
君の深いところで、ずっとそれは
口をつぐんで、芽吹きを待っていた
その気付きを届けた風に
驚くように、嬉しくなるように
君は足を止めた
君は君の肌で風を感じ
君の目で春の色合いを見る
きっと僕の空とは違っているその色合いを
君は君だけのものとして
向き合うことが
これから君がずっとやって行くこと
(そこに君の幸せがあることを)
おごらず、たかぶらず
時々はしみじみとした沈黙に
人と思い分かちあって
君の見上げる空が
いつでも君の心を引き付けて
力づけ、またその先の一歩に
背を押してくれるものであることを
僕はもうただ、見守るしかない・・・・・
少し遠まわりをして夜桜を見に行きました
それはその人を誘うための些細な口実で
本当は一緒に歩いていたいだけのこと
街灯に照らさた桜は満開で
僕ら以外にも沢山の人が
その夜桜に誘われて集まっていました
僕は桜を一瞥しただけで
桜を見上げるその人の横顔を
気づかれないように眺めるばかりでした
昼間外出して
郊外に向かう電車に乗っていました
時間帯のせいもあるのでしょうが
随分と電車も空いていました
途中で幼稚園の子供たちが乗ってきました
恐らく年長さんでしょう
大騒ぎすることもなく
先生の言うことをきいて
一列になって行動していました
外は明るい陽ざしで
寒さもあまり感じずに
外出するのにはちょうど良い感じでした
冬の間は教室で閉じこもっていた子供たちにとっては
明るむ季節は外出するのにも
良い機会だったのでしょうね
子供たちは僕よりも先に電車を降りると
また一列に並んで
先生の後について歩いていきました