風のささやき 俳句のblog

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あなたの誕生日【詩】

2024年10月31日 | 

「あなたの誕生日」

あなたの誕生日も祝えない、あなたに会えなくて
一年前からずっと、今日の日のために
何度も頭の中で、練習をして来たのに
贈るプレゼント、そのタイミング、かける言葉も
その先のあなたの笑顔さえ、何度、思い浮かべたか分からない

あまりにもつまらなくて、布団の中で、不貞寝する
けれど、眠り過ぎて眠れずに、またあなたの笑顔で
胸いっぱいになっている、気が付けばもう
夕方の匂い、空に漂う時間で

あなたの喜ぶ顔に、花束も添えたいと思っていた
花束の種類も考えていた、赤い大振りの薔薇のブーケ
黄色・オレンジを中心とした、小ぶりの花束
ブルー系は、ちょっと寂しくて、あなたには似合わないから、と

それを考える時間も、楽しく速く過ぎたこと
僕も透明な花の、贈り物を、毎日のようにもらっていること
春風に揺れる、甘い香りで一杯の、胸、温かくする
そのお返しにと、あなたの誕生日に
会って、伝えたかった、心からのお祝い

仕方なく、メールにしたためて、送る
言葉はやっぱり、もどかしい


深手負う心の傷を知りもせず君が語るな僕の痛みを【短歌】

2024年10月29日 | 短歌

心に感じる痛みは人それぞれ
自分はどちらかと言うと敏感なようで

そんなことでは傷つかないことにも
落ち込み、心を掻き毟られるときがあります
だから、人と話すことに
ちょっと億劫になったりもします

そんな自分に助言をくれる人もいて
けれど、どこか心がこもらず嘘っぽく
共感ができません

僕の痛みが分からない癖に
勝手なこと言うなと
反発する気持ちも強くなります

せっかくの親切心で
言ってくれていることは分かるので
自分の心の狭さに嫌悪もしますが


柿灯り墓地に今年も供え物【季語:柿】

2024年10月26日 | 俳句:秋 植物

子供と電車に乗って
車窓を眺めていました

すると墓地の横になにやら
綺麗な色合いが見えて
最初は紅葉かと思ったのですが
よくる見ると熟れた柿でした

誰が植えたのかは分からないのですが
なんとなく、故人への手向けに
柿を植えたのではと勝手な想像をして
その人の優しい気持ちを思ったりしていました

子供はそんな風景には関心も寄せず
年を重ねる毎に、見えてくる風景もありますね


雨 【詩】

2024年10月24日 | 

「雨」

雨傘の向こうであなたが笑っている
雨は、思い通りにはならない
僕とあなたとの間にも、透明な雨がある
今は10月の夜、冷たい雨粒
あなたの傘を握る手も冷たい

雨がどうにもならないこと
それは子供の頃から知っていたこと
叶わない物があることを
てるてる坊主に祈ってみても
叶えてくれないことがあること
自分はお天気男だからと
比較的の確率に縋ってみたりして

雨よ、降ることを止めろと、命令ができない
雨はそんなこと知らんぷりで
酔っぱらっている人の群れに行きあたると
その合間を縫うために、僕らは一列になり
傘の合間に、あなたの傘は挟まれて、一瞬たたむことになって
あなたの肩が、雨に濡れた

それでも笑っている、酔っ払いには少し
腹を立てて、でも、誰にも悪意は
ないことは知っていて
傘は邪魔だ、あなたが顔を伏せて
傘に隠れて、その横顔を見逃してしまう

こんな夜に、雨など降らなければ良いのに
今日は、僕の気持ちが荒んでいた日
色々な事柄が重なって
あなたの顔を見てほっとしていたかった
そんな気持ちは、考えることなく雨は降る

あなたとの間に降る雨は、僕とあなたとを雨傘の分、遠ざけて
それを、鬱陶しく思う僕、雨を好む
木々もいるというのに、それはどんな我儘なのだろうね

どうにもならないことを、どうにかしたいこと
それを我儘というのか、頑張りと言うのか
欲深きというのか、希望というのか
その中身にもよるし、人それぞれが
名付ければ良い事だけれど

上手くいかないことに、人は振り回されて
やがて降りやまない雨を諦めるように
それは、叶わないものだよと、寂しい微笑みを浮かべる
ここからはもう、逃れたくなって
あなたにもっと、寄り添いたくなる


かぐしわしきあなた くちなし 沈丁花 金木犀より 胸 甘くなる【短歌】

2024年10月22日 | 短歌

甘い香りがして
花の存在に気がつく時があります

普段は地味な沈丁花も花を咲かせれば
途端にその甘い香りで存在感を増します
思わず香り漂う方へ足を向けます
一年に一回のことですが

花屋でのぞくクチナシ
金木犀は時期になると
花が待ち遠しくなります

大切な人も香り高い花のよう
人混みにあっても
かぐわしさに直ぐ分かります

いつまでもその香りが
胸を甘くするようにと願います


雨強し金木犀も終の香か【季語:金木犀】

2024年10月19日 | 俳句:秋 植物

会社帰りのこと
天気予報が見事に当たり
強い雨が降っていました

折りたたみの置き傘を開いたのですが
雨脚は予想以上に強く
駅まで歩くとズボンがびっしょりと濡れそうです

けれど予報では一時的な雨ではないので
仕方が無く雨の中を歩きだしました

すると鼻には予想をしていなかった
金木犀の微かな香り
こんな雨の中でも香るのだと
その香りの強さに少し驚くとともに

きっとこの雨で散ってもう
これが最後の香りだと
僕に伝えるために匂って来たのだと
そう確信めいたものを感じていました


合唱祭(とある中学校で) 【詩】

2024年10月17日 | 

「合唱祭(とある中学校で)」

中学生になると
小学生とは随分と違うものだと
一年生の発表を見て思っていたが
二年生、三年生とその期待が更に
嬉しい方に裏切られた、僕の思う以上に
上手になって行ったから

何が違うのだろう
体の大きさも、そこから来る声の響き
特に男の子たちのテノールやバスは
芯がしっかりと音が通るようになり

けれど一番はきっと
真面目に向かい合う姿勢
一生懸命なこと、その真剣さを
大事に思えるということ
もうそこまで、一人前になっているということ

僕の子供はと言えばまだ一年生で
どこか、恥ずかしさとか、おどけを見せて
(僕も、そうだったことを思い出す)

けれど、喧嘩ばかりに使っていた声を
いつのまにか合わせることを覚え
人の声を聞き、その音色に合わせ、響かせようと

解きほぐせば、一つ一つの声
その特徴のある声が、聴けば自分の子供だとわかる
重なりあい、束ねられて、大きな声の調べに溶け込み
響き合う、肌にもその声の震えを感じる

心も重なり、あわせているのだね
それぞれの悩み、ちょっとした不仲
勉強への不安、怠けたい気持ち、恥ずかしい気持ち
それらは一瞬、心の裏側に押し込めて
一生懸命に声を振り絞る

そんな真剣さは、僕はしばらく
忘れてしまっている、むしろ打算ばかりで、不真面目だ
だから君たちがとても羨ましくて
少しこそばゆいのか
ちょっと自分を揺すぶられている
素敵な時間をどうもありがとう

そうして、君たちにとっても
とても大切な時間だったこと
後から、きっと、気が付くのだろうね


毟りあう生は競走でたらめを盲従してまた毟りにゆく君【短歌】

2024年10月15日 | 短歌

子供たちの喧嘩は
本当に浅ましいです

誰が多く食べただとか
あいつが悪いのに俺が怒られたとか
人に譲ったり、ちょっと我慢をしたりすることが
損をしていることだと感じるようです

お互いに譲り合えば
喧嘩もなくなると教えるのですが
すんなりと腑に落ちないようです

確かに大人の世界でも
同じようなことをやっているので
子供にだけ理想を押し付けても
いけないのかも知れません

それが当たり前だと思い
人からも毟り取ろうとする浅ましさは
持たないで欲しいと思います


暗闇やしるべ鮮やか金木犀【季語:金木犀】

2024年10月12日 | 俳句:秋 植物

夜の街灯のない暗い道を歩いていました
曇り空だったので月明かりもなく
光がわずかな場所では視覚は随分と役にたたない物ですね
僕は何となく不気味な感じを覚えながら歩を進めました

するとそこに金木犀の甘い香りが漂ってきました
その香りがどこから流れてくるのかが
まるで一筋の道をたどるようにわかります

視覚が頼りなくなる場所では
嗅覚がこんなに頼りになるのかと
ちょっと驚いたほどだったのですが

香りを辿っていくと
確かにオレンジの花を咲かせた
金木犀に辿り着くことができました

それは暗闇で迷っている僕を
導くために香りを届けてくれたようでした


苦笑い【詩】

2024年10月10日 | 

「苦笑い」

いつでも心は尖った針の筵に
不安なのだ ちょっとのことで
心が動く 慌てすぎる

そんな様子 君は見て笑う
無邪気はときに罪だと
噛みしめたい唇を閉ざして
誰にも向けられない怒りに
苦笑う