風のささやき 俳句のblog

訪問ありがとうございます
オリジナルの俳句を中心にご紹介しています
詩や短歌も掲載しています

年越しに母の習いのお雑煮をこしらえ舌の忘れ得ぬ滋味【短歌】

2024年12月31日 | 短歌

年末は一人だったので食生活も適当でした
何かを作る気もしなかったので
昼はインスタントラーメン
夜はハムやチーズ、パンなどを肴に
お酒を飲むだらけた生活

年越しそばにも魅力を感じず
最低限の物を買ったのですが
雑煮を作りたくなって
その材料も買いました
食べる人もいないのにと
思わず苦笑いをしながら

大晦日の夜には母が
正月に食べる雑煮を作っていたので
その習わしに従いました

その雑煮ですが
出来上がったところで
鍋に腕を引っかけて
全て台所の床にぶちまけました

その瞬間は頭が真っ白になり
何が起こったのか分からない状態

雑煮を作った自分への
怒りが沸々と湧き上がってきました


境界の朧や冬の陰と陽【季語:冬】

2024年12月28日 | 俳句:春 時候

弱々しい冬の陽射しに
木々の影も弱く
その間からこぼれる陽ざしも弱く

明るい部分と陰の部分が
入り混じったようで
その境界線もあいまいに
混ざり合っているように見えます

もともと暗い部分に引き立てられて
明るい部分もあり
二つは切れ離せない物なのでしょうね

まるで人の心にも明るさの陰に暗がりがあって
生と死も切り離すことができないように

冬の陽射しに佇みながら
地面に映る木蔭を眺めながら
そんなことを感じていました


冬の午後に【詩】

2024年12月26日 | 

「冬の午後に」

冬の午後は暮れるのが早い
陽射しは淡い化粧のように
顔の濃淡を塗りつぶす

みんなこの世のくびきから
解き放たれたようだ
悔いも捨てやることを終え
空に帰る準備をした顔だ
もう焦ることもない
身ぶりもゆったりとしている

きっと指先を空に差しだせば
シャボン玉のように体が泡立ち
空に昇ってゆく

 ようやく帰れるね
 寄り添うように、鳥が見送ってくれる

  でも、君たちの羽ばたきは
  空に限られているから
  もうお別れだ

 それなりにここは、楽しかったよ
 でも、もう戻ってくることは
 ないと思う

  でもあなたには会いたい
  その顔にこの手で、もう一度触れて
  頬をなぞりたい、まだお覚えている
  黒子の位置も、その涙をぬぐったことも

未練を残さないものは
やはりいない
それでも満足をした
穏やかな笑いが空に木霊する

夕映えはますます赤らんで
ささやかな悔いを一緒に燃やす

やがて今日の悔いの薪も尽きて
境目なく空と地上とが闇で一つになる

明るい星を見上げ 白い息を吐いて
昨日と今日と
何を変えることができたろう
何を身に収め 何を捨てたのか
自分の出入りも もう分からないで
後悔を貯めるばかり
空にはとても昇れそうにない

みんな同じなのかな
冬空に一人立っていると
人がやけに温かいことを知る


忘れ去る楽ふえたけど年かさね失くしてもいる大切なこと【短歌】

2024年12月24日 | 短歌

年を重ねた分だけ
自分との折り合いをつけることが
上手くなっていくようです

一つには嫌なことを上手に忘れること
そうして忘れてしまったことが
どれぐらいあるでしょう

そこには本当は忘れてはいけない
大切なこともあったはずなのですが
それすらも思い出せません

いまでは忘れてしまったものたちの感触が
胸に湧き起こることもなくて
その感触をなぞろうとする筆も
先に進むことはありません


柚子湯にて柑橘系の肌のはり【季語:柚子湯】

2024年12月21日 | 俳句:冬 人事

昨日近くの温泉施設に出かけたら
柚子湯のサービスをしていました

小さな風呂に柚子を沢山入れたもので
良い香りが漂ってきました
入ると肌がさっぱりとして
今年一年の芥の禊をしたように
すっきりとした気分になれました

そのさっぱりした感じは
しばらく肌の上に続き
いつまでも柑橘系の爽やかさが
肌の上に残るようでした


克己心【詩】

2024年12月19日 | 

「克己心」

筆で描かれた克己心の目標
剣道部の寒稽古を
高い所から見守っている

僕も胸に克己心を刻み
ひりひりとその文字
熱かったときがある

いつの間にか
自分に負けて全敗のこの頃
敗戦の弁ばかりが上手になって
中学生を見ていると不甲斐ない
乗り越えるべき
自分さえ見失っている

誰でもいいから
僕の面に一本
鮮やかに脳天から
響くやつをくれ


繰り返す悪夢が心を踏み荒らす寝ても覚めてまざまざと見る【短歌】

2024年12月17日 | 短歌

嫌な夢を見て目が覚めました
ゆっくりと休んだ気分になれず
不快な重さが頭に残りました

二度寝しようにも眠れずに
肝心の悪夢の中身も覚えてはいません

けれど嫌なことは
目を覚ましてもあります
身の回りにもテレビの画面からも
信じられない話が届いたりします

寝ても覚めても悪い夢が続き
どこに心を休めれば良いのか
煩わずにはいられません


冬晴れの木の影等しき淡さかな【季語:冬晴れ】

2024年12月14日 | 俳句:冬 天文

冬晴れの日に
三男を連れて近くの公園に行きました

自転車が借りられる公園で
たまに三男を連れて来ては
練習をさせています

楽しそうに自転車を走らせる
三男を横目に眺めながら
背の高い木々と
それが地面に落とす影を見ていました

影は冬の日差しの弱さに比例するように
どれも淡い色をして
日向の部分との差異も
あまりはっきりとはしないほどです

そんな淡い色彩の風景の中で
三男の自転車だけが
疾走していました


冬の夕日に【詩】

2024年12月12日 | 

「冬の夕日に」

あのときの冬の夕日は
まだ心を濡らしている
病院の帰り道
少し震えながらハンドルを握り
放心したように運転をしていた

淡い橙色に車も濡れた
対向車は音もなく
違う世の乗り物のようだった

地球はそのとき
一つの橙の実であった
その表皮を上る坂は
空につながる道だった

そのまま走って
夕日に溶けてしまえと思った
炭酸水に浸かるように
体がピリピリとしびれていた

きっともう長くは生きない母
それを否定する言葉を心は否定し
その予感は3日後に
その通りになった

その夜は何を食べたのだろう
笑いを浮かべもしたのかしら
笑わせようと力むテレビを眺め

思ってもみなかった
どれだけの心象が
心を飲みこむのだろう
身の丈以上に慌て
棚から牡丹餅の幸いに酔い
たくさん過ぎて抱えきれずに
涙をもって誰かに届きたい
「分かって欲しい」と

ああ、あの時と同じ
冬の夕日だ
真っ直ぐな道は橙の鏡
夕日が落ちるその先にまで
僕は歩いたよ

少しは優しい人に
なれているのかしら

「頑張るよ」 と
誰に向かってでもなく言い

「器が大きくなくて
 でも 僕なりに」 と


秘密基地いつから襤褸の雨ざらし君の胸だけ安心して寝る【短歌】

2024年12月10日 | 短歌

子供たちが家の中で
布団やらテーブルを組み合わせて
秘密基地を作ります
何が楽しいのだろうと思うのですが

その秘密基地に入りながら
テレビを眺めたりするのが楽しいようです

確かに自分も子供の頃は
押し入れに隠れて秘密基地だと言ってみたり
その自分だけの隠れ家の中で
本を読んだりと楽しんでいました

そんな自分の逃げ込む秘密基地を
いつからか僕は失ってしまったのでしょう
逃げ込んだとしても雨ざらしのボロボロの物
心休まる物ではとてもありません

せめて大切な人の横で安心したいと
誰かを探してしまうのかも知れませんね