風のささやき 俳句のblog

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器楽的な夜【詩】

2025年01月23日 | 

「器楽的な夜」

丸や直線
三角や四角の幾何学模様が
描き出す高層建築物は
人を押しつぶすすり鉢

手の上に錯綜する
ユングの元型や
ギリシャの哲学
相対性理論が描き出す生命線を
見る易者の予言する明日は
誰にも もう分からない

密売人が魂を売買する街角の
暗がりに羽ばたく少女を
乗せるエレベーターが
夜空に高速で吸い込まれ星になる

時計台の鐘の音は
街に滅びを告げるよう
ショーウインドーのマネキンの見上げる
大画面の映像に移り変わる
世界のニュースは
花火のように爆ぜ続ける

露天商が売る水たばこの道具は
心を煙にまき
売り言葉に変わる信号に
青いギターをかき鳴らす
震える六本の弦と
張り上げる声がしわがれて
その訴えは誰も聞かない独り言

酔っぱらいの笑い声は
ビルの合間のご機嫌なこだま
もてはやすネオンサインが
点滅する都会の夜は
たくさんのくだをまき散らし垂れ流し
ブリキの玩具の
でたらめなオーケストラのように
頭の芯に器楽的な金属音を鳴らし続ける


起きぬ子や声かけ続け寒き朝【季語:寒き朝】

2025年01月18日 | 俳句:冬 時候

見たい番組があるので
早く起こしてと子供から言われ
目覚ましをかけ
休みの日に早起きをしました

声をかけても
ぐっすりと眠る子供
起きてくる気配もありません

何度か声をかけたのですが
布団に入ったまま

結局、1時間程後
欠かさずに見ている番組が始まるので
布団をはいで起こしました

寒い朝、布団の中は温かく
見たいテレビよりも魅力的なのでしょう
その気持ちは良く分かりました


(Haiku)
My call fades, unheard,
Child snug in futon’s warm hold,
Frosty winter morning.


子供たちへ【詩】

2025年01月16日 | 

「子供たちへ」

右手にはありがとうの言葉
ぎゅっと握って歩くといい
力なく見えるかもしれないけれど
その手を開いて
ありがとうを言ってみて
みんなの顔に笑顔が咲くから
それで君も嬉しくなる

左手にはごめんの言葉
間違ったら
素直に謝り心軽くするといい
そうして君が言われたごめん
文句も言わずに受け取ってあげて
その人も苦しんでいる
許せば心も慰められる

口には優しい真っ直ぐな言葉
君の心の一番の武器にして
毎日磨いて心に確かに届くように
沢山の人が幸せな気分になれる

人の良いところしか見えない
目を持って欲しいな
人のことが好きでしかいられなくなるから
人と人との間にある暮らし
きっと楽しいものになる

耳はすべての言葉や音に開いているといい
心を込めて聞けば
本当に無数の温かな音色で
この世界は充ちている
君の知らない言葉が
遠くまで君をきっと運んでくれる

鼻では嘘の匂いを嗅ぎ分けて
遠く離れて進むことを覚え
両足では怠け心と
欲しい欲しいという思いを蹴飛ばして

頭にそろえる沢山の知識
君が自由に利用できる図書館で
その知識で君の生き方
輝かせるといい

そうして一番
扱いの難しい心
知らぬ顔を次々と見せる
けれど恐れずに
勇気を持ってのぞめばいい
自分を信じて晴れやかに
囚われないようにして

上手く行くことも行かないことも
すべてが君の栄養になる
やがてたくさんの人に分け与える
君の大きな心の力

きっと何も恐れることはない
君として進めればそれで良い


青く澄む涙のたまり独り咲く青い薔薇だ純なあなたは【短歌】

2025年01月14日 | 短歌

優しすぎて一人で苦しむ人
苦しみを自らに引き受けてしまう人

人に見られないように
さめざめと涙を流して
そのたまりに身を潜め咲く
気高い青い薔薇のようです

苦しむ必要のない人が
苦しむ世は理不尽に満ちていると
感じられるのですが

止められない歩みのなかで
その花に慰めが注ぎ
更に気高く花開きますようにと願います

 

(Tanka)
In a limpid azure tear’s hold,
A lone blue rose blooms lofty,
Pure and true you are,
In solitude, you blossom,
Regal, gentle spirit.


手をつなぐ【詩】

2025年01月09日 | 

「手をつなぐ」

少しだけ手を伸ばして
手をつなぐ
それだけの事なのに温かい

誰とでも手はつなげる
その気になれば

大人の大きな手
赤ん坊の小さな手
ふっくらした女の人の手
骨ばった男の人の手
涙をふいた濡れた手も
悴んだ冷たい手でも

さようならと振った手
星空を指差した手
怒って握りしめた手
笑う口元を押さえた手
子供の頭を撫でた手

最初は戸惑いながらも
手のひらを重ねて
指先に僅かばかりの
勇気と力を込めれば
お互いを包みこむ
つながれた手

春の陽射しを握るように
心が温かくなって
自然と笑顔になって
歌いたい気分にもなって

一人で歩く不安を
和らげてくれる
こんなにも足に力をくれる

そこに会話はうまれ
歌もうまれる
明日を夢見る希望もうまれ
優しくもなれる

少しだけ勇気を持って
手を伸ばし 手をつなごう
恥ずかしくて後ろ手を
組んでしまいそうになるけれど
子供の素直さを学んで

つながれた手の先には
きっとまた
温かい人たちが繋がれてゆく


寂しさに濡れるあなたの胸一杯 優しい陽射しの花束あげたい【短歌】

2025年01月07日 | 短歌

あなたが一人 寂しくないようにと
いつもあなたのことを思います

一人の夜はとても長く感じられ
重い闇がのしかかって

あなたが苦しいときにも
何もできないことのもどかしさ

せめて暗い闇を内から照らす
優しい陽射しの花束を
思い描き贈ります

あなたは決して一人ではなくて
沢山の人の温かさに包まれていること
胸一杯に感じて欲しくて