風のささやき 俳句のblog

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都会 【詩】

2023年02月23日 | 
「都会」

顔がある
その向こうにも顔がある

 〇

昨日を過ぎて今日に来る
来てみたところで同じ
心を楽しませはしない
今日へ

 〇

灰色の街並みは
来る日も来る日も
変わり続ける
あわただしく
いらだたしげに

 〇

刺激物にしか
反応しなくなる
微生物のような心だ

 〇

今朝の新聞
死者五名

 〇

何事にも
無関心でいられる
心だ

 〇

逃げ去る場所がない
めまぐるしい感覚が
ふりかかる
ビルの谷間のベンチに
痛む頭を抱えて
うずくまる
彫刻を見るよう
誰も気にしない

 〇

どこからか紛れ込んだ
小さな蟻が
あわてふためいて
めくら滅法に
ホテルのロビーの
白い大理石を滑る
誰も気にしない
いつか踏まれそうで

 〇

あなたは逃げる
電話ボックスの棺桶

 〇

脳裏の奥から
ひどく寂しい風景を
ひきだしてきて
凍り付くような
憤りに震えている

 〇

夕暮れ
鉄筋コンクリートのビルに
ハサミを入れられたような夕日
風景が血を流しているようだ

 〇

誇りに汚れた側面は
夕日に照らされ
電車がホームに入ってくる
疲れた人々を吐き出して

 〇

夜の街は
まるで花火のようだ

 〇

街の明かりに
目をやられてしまい
都会の真ん中で一人
暗闇の中を歩いている

 〇

目にうるさい
仮装行列の集団
素顔の方が
もっと醜いのに

 〇

眺めてみるのが
こわいんだ

 〇

重く疲れた心を背負った
不機嫌な顔の列が
繋がれて歩く
囚われ人のように
都会の風景を
殺風景に通って行く