風のささやき 俳句のblog

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古ぼけた顔に 【詩】

2020年08月06日 | 
「古ぼけた顔に」

随分と古ぼけた顔だ
何十年も世の中の芥にまみれてきた顔だ
毎日見てきたから見慣れて気がつかなかったが
良く見ればあちらこちらが煤けているようだ
蜘蛛の巣が張っていても
誰も不自然には思わないだろう

いつの間にか刻み込まれた皺は
何の証の刻印だろうか
例えば苦しみの刻印だったとして
どの苦しみかも忘れてしまうほど
波の数ほどに苦しみは押し寄せてくるから
僕の顔はその都度 皺を
これからも増やしていくのだろう

剃り残した長い髭が
顎の下から伸びている
まるで自生している植物のように
いつの間にか僕の意志では制御できないものが
僕の顔の上には住み着いてしまったらしい

そうしてまだ血の跡の残る
切り傷は今朝のもの
何度肌を切っても回復する
この面の皮の厚さはどうだい

良く見ると赤く血走った目は
落ち着きなくあたりを伺っていて
一時も警戒に休むことがないじゃないか
この鼻も良く見るとおかしなものだ
何を出しゃばって顔の真ん中に居座っているのか
そうしてこの言い訳と泣き言に饒舌な口と

見れば見るほど奇妙にも思えてくる顔だが
それでもずっと
付き合っていかなければならない大切な顔だ
せめて笑った時は心から楽しそうに
悲しみの時には涙を浮かべて
自分の心栄えが素直に映る顔であればと
またこれからもよろしくな

何もなき壁に絵飾る寂しさは埋まるはず無しあなたを思う 【短歌】

2020年08月05日 | 短歌
一人で過ごしていると
部屋が随分と広く感じられる時があります

白い壁も妙に寒々しく思われてきて
思わず空いたスペースを
何か華やかな飾りで埋めたくなります

もちろんそこに何かを飾ったからと言って
心に巣食う寂しさが埋まることもなく

ただ大切な人の面影を胸に描いて
破れそうになっている
心の上に貼り付けていました

何憂う苦行の果ての干しみみず 【季語:みみず】

2020年08月01日 | 俳句:夏 動物
お昼時
いつもの道を歩いていました

その日の陽射しは随分と強く
クールビズということで
ネクタイを外してはいたのですが
シャツまで脱ぎ去りたい気分でいました

汗を拭いながら歩いて行くと
道端に干からびたミミズの死骸が一つ

何故この暑い最中に
アスファルトの上に
飛び出して来てしまったのだろうと
考えていたのですが
それらしい答えもでず

何かを憂いた
苦行の末なのかなと
そんな馬鹿げたことを考えていました