「白い街並みに」
# 1
その小さな
手を引き引かれ
初めて歩く
異国の街並み
登って行く坂道は
青い空の先にまで誘うよう
白い時計台は
後どれ位の時を刻み
僕らの歩みを
祝福するのだろう
あなたが手にしたお土産は
とぼけた顔の人形で
その顔に笑いだす
いつまでも楽しい
僕らであるようにと
# 2
白い街並みは
大きな花入れのようで
花は鮮やかに咲く
その色彩が良く映える
例えば太陽に燃える赤い花
それは隣を歩く
あなたの黒い髪にも
手折って飾りたい
あなたにお似合いの
賑やかな花飾り
# 3
木漏れ日のベンチ
口にした珈琲が
少し濃く苦く感じられた舌は
言葉を探す
葉書を埋める指先が止まり
そのまま手を止めて
空を見上げたその人は
また珈琲を飲んで舌を休めた
# 4
つないだ手のひらから
流れて来る温かさ以上を
必要としないのならば
言葉はどれだけかもどかしく
風のようにただ
流れるものを心に
受け取るだけの幸いは
知らない風景の先に足を進める力
青空の先に消えて行く
石の坂道の終わりまで
# 5
いつからか僕の手の中に
あなたの指先は
深く根を生やしたのだろう
そこから吸い上げられるものと
そこから流れ込んで来るものと
あなたの手を
もう離せないでいる
その小さな手を引き引かれ
初めて歩く
異国の白い街並み