風のささやき 俳句のblog

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松の葉が落とす昨夜の雨ひやり 夏の青空 肩の時間差 【短歌】

2023年08月08日 | 短歌

自転車で走っていた時のこと
昨晩までの雨で道路も少し濡れていたのですが
空はもう綺麗な青空

松の林の中を走ったのですが
松の葉はその雨粒をためているようで
時間差の雨のように
時々、僕の肩に落ちてきました

まるで想定していないタイミングで落ちてくる
その冷たさに驚かされて
一瞬、ハンドルを変な方向に
切りそうになりました


爆ぜ続け子の目焦がして花火かな 【季語:花火】

2023年08月05日 | 俳句:夏 人事

以前見た花火大会は
息もつかせぬように大玉の花火が空に上がり
最初はあまり期待していなかった子供たちも
息を呑むように空に描かれる鮮やかな色彩に
釘付けになっていました

子供の瞳にはその花火は鮮烈な印象だったのでしょうね
そうしたものに見慣れている大人でさえ
感心して夜空を見上げていたのですから

夏のこの時分になると
その時の花火大会の話しが話題に上り
あまりにも鮮烈な物をみてしまったせいか
ちょっとした花火には
心惹かれなくなっている子供たちです


夏の遺跡 【詩】

2023年08月03日 | 
「夏の遺跡」

夏の遺跡には
昔となんら変わらない
大きな白い雲が浮かび

強い日差しがじりじりと
まとわりつく大理石の柱は
沢山噛んで疲れてしまった
年老いた歯のように
かみ合わせ悪く
隙間をあけて並び

雨風がその外郭を崩した
煉瓦色の建物を
わずかな合間から顔を出す
夏草の色合いが柔らかくする

浴槽を大きくしたような池には
白いつぼみ一つだけの蓮
小さな庭園を匂い立ち
飾る薔薇は今はなく
不協和音の蝉の声が
休む間もなく木陰には鳴く

どれほどの長い間
繰り返し鳴くその声は
頭のとれた彫刻の胸にも
まだやかましく響くのだろうか

泡のように消えて行くのは
この体や生きてきた僕の
記憶だけではない

街もさびれて
やがてはその骨格だけを
この地に残した

けれど
僕の休む石のベンチには
今日のような夏の日
ちょうどこんなふうに座って

気持ちを高ぶらせて誰かが
眩しい空を眺めていたのだろう
そこに描かれた夢はまだ
空の深い所を静かに流れて

だからこの遺跡の上の空は
こんなにもきらきらと
輝いてみえるのだろう

今は住む人もいない
夏の遺跡
大きな雲が時間を
ゆっくりと流す
汗ばむような真昼時

昔と変わることなく蝉だけは
緑の濃い林に休みなく
太陽に命を
捧げ尽くすように鳴いている


引く波は泡立ち 残る貝殻に 誰かの足跡 それも弔い  【短歌】

2023年08月01日 | 短歌

浜辺に吐き出された沢山の貝殻
その上に、足跡がついていました

過ぎ去っていくものは
やがて忘れられていき
その上を新しい人たちが歩いて行くことは
きっと人の習い

自分もそうして
先人たちが築いてくれたものの上を
歩いていることを思います

せめて感謝の気持ちを忘れずに
いられればと思います