わざわざ「訳あり」と名乗って客を呼び寄せる手がある。
「あぶない刑事」「怪しい三兄弟」「不運の方程式」などの題名も似たようなものだ。
訳ありリンゴというのがあって、枝すれによるキズ、日焼け、サビ、色ムラ、ひょう害、軸割れとその訳が並んでビラに書いてある。
「いわくリンゴ・セクステット」だ。
一つひとつの訳を順に見ていく。なかにこれはなんだろうというのがあった。
「サビ」である。
たずねてみると、「サビ」は、世界的にも最も生産量の多い品種の「ふじ」がいちばんかかりやすい病害とのことだった。
ケロイド状のサビが出て、ひどくなると全面に広がってしまう。毎年同じ枝に発生し、次第に他の枝にも拡大していくという。
原因がよくわからず、かかれば治らない。かかった太枝を切り落とすとほかの枝に転移することもあって始末が悪いらしい。
ちょっとしたキズぐらいの訳ならよいが、木の病いという難病もあるから、「訳あり」を逆手に取るのにも、いろいろ苦労があるものと思う。
リンゴ屋さん、ごくろうさま。