物やサツの厚みは見てわかりやすいが、人の厚みはつかみにくい。
何かの拍子に耳にした言葉から、あれ、この人はこれぐらいの厚みしかなかったのかと落胆することがある。
人の厚みは言動に現れるが、言動そのものの厚みではない。
人の厚みの要素はいろいろで、時の見方もその一つである。
その時どきの身の処し方しか考えてなさそうな、時の厚みを持たない人が組織の中心にいたのでは、その組織に属する人は、ことあるたびに右往左往、場合によっては足が縮んで右往左往もままならないという惨めなことになりかねない。
その組織が大きなもので、たとえば国家のような大組織の場合は、安心、安全のお題目も、冬支度に入った虫の声ぐらいにしか聞こえない。
きりぎりす 鳴くやこの世の暗闇に
ころもからげて ひとりかもねん