ディア・ドクターという映画をBSで見た。
医療とはどういうことか。
素直に思うことは、いちばん良いことであるはずなのに、どこかが捻じ曲がっていて、そのとおりにならないのが世の常になってしまった。
不当にも未開と呼ばれる地域の人たちには、勝手につけた先進という形容でくくられた国々のような医療制度はない。
文書に作り上げた法律などというものもない。
そこには長老がいて、病を得れば、その人が治すか、あるいは治すすべを心得た人に手伝わせるかということになる。
治す人の資格は、治せると人々が信じているということだけで、厚手の紙で作った免状も、それを手に入れるための検定制度も、もちろんない。
世界に冠たる医療保険制度を持っているという国でも、その制度を隅々にまで維持できないところもある。
そういうところに居ついた、治すすべを心得た人が、映画ディア・ドクターの主人公である。
信じられる資格は持つが、法律に基づいた資格を得ていない、偽医者という、呼ばれない呼び名のついた人である。
どんな悪路でも乗りこなせるバスドライバーがいて、乗客の誰もが、彼の無免許運転を知らずに毎日乗っているのに似て、知ってしまえば恐怖が背中を走り回る。
「医者とはなんや」「病を治す人か」「医師免許を待った人か」「どっちなんや」あのCMのせりふと、どこか重なるのが、おかしくて、そして悲しい。