珍味には魚の卵が多いことにあらためて気付くと、その親の大きさを知りたくなります。
現存の魚で最大のものは、体長 14m 近くにもなるジンベエザメのようです。
どこかに同名の日本人がいそうなこの名は、体の模様が着物の甚平に似ていることから付けられたという説があります。
しかし、ジンベエザメと説明臭い呼び方をするのは、TV、画集、水族館だけでしょう。
海人の呼び名ではなさそうで、鹿児島では「くじらぶか」と大きさが名前に、千葉から静岡あたりでは「えびすざめ」と姿かたちが名前になっているようです。
ベトナムで呼ぶ「カー・オン」は、「魚の翁」という尊称の意味をもっていて、これが呼び名としては最上でしょう。
ジンベエザメのヒレは、最高級のフカヒレで、天頂翅と呼ばれて珍重されるそうです。ゼニスの翼、天に羽ばたくような優れものという意味でしょうか。
ジンベエザメの類は、生物個体ではいちばん小さく弱そうなプランクトンが主食で、小さいものを食べて生き延びると、大きい生きものとして種が保存されていくという、自然の摂理を違えない生き方のように見えます。
強いものに立ち向かうのは、別の意味でよいとしても、欲望を満たすために同じ種を食いものにすることを始めたとき、その生物は、「大きい生きもの」としての資格をすでに失っているのでしょう。