小学校の国語の時間に、歌をつくる授業がありました。
歌題を出して作りやすく、気に入った作があればコンクールになどと、心のどこかで思っている成績栄誉大好き先生ではなかったので、何でもよいから歌にしろというものでした。
何でもよいといわれると、現代のネット・キッヅたちは、作り方がわからないから教えろと、すぐに質問をばらまきます。
考える前に聞くという怠習惰慣のしみ込んでしまった子らは、かっこいい歌はありませんかなどと書き込んで、それを恥ずかしいとも思っていません。
宿題提出の前日にちょうど雪が降ったので、窓一面の銀世界などという、どこかの雑誌の片隅で読んだような文句を入れたら、先生に一喝されました。「銀世界」などという借りものの言葉を使うな、とやられたのです。
そのときは、銀世界のいけない意味がよくわからずにいましたが、先生のその言葉は、半世紀を超えた後のいまでもまだ忘れません。
近ごろ歌われる新しぶったつもりの歌詞に「銀世界」が出てくると、急にその歌が古臭く聞こえます。
決まり文句は吸い込むだけのもので、吐き出せば空気を汚します。葉巻の煙と逆なのでした。