自分に酔う、そのとき、そこに自分はいない。
酔いを保つ空気があればよい。
一緒に酔う人がいればなおよい。
酔いを保つ空気は、実は淀んでいるのに、それを流れのように感じてしまう。
酔った人は、自分が定まらずにふらふらと動いているのを、流れの中にいると勘違いしている。
心の定まっていない人が、政治の場に放り込まれたとき、まず感じ取るのがその場の空気、小才の効く鋭敏な人ほど、いち早く自分に酔う。
既成の自酔クラブに吸い込まれる人もいれば、酔人同士が意気投合して新たな自酔クラブが作られたりもする。
こういうありさまを冷徹な目で眺めながら、舌なめずりをしている悪党どもが海のすぐ向こうに居ることは、自酔の境地に漂ううつろな眼にはなかなか映らない。
自酔を覚ますサプリメントは、腹の脂肪を減らすものより需要が薄いから、出回ることがないだろう。
けだし、難題である。