ギヨオテとは、俺のことかとゲーテ言い。
鴎外はんの、「ギヨオテ伝」によると、「窓を一つ開けてくれ。明かりがもっと入るように。」といったのが、臨終の折の最後の言葉であったという。
もっと光を。という有名な台詞はこれに基づいているらしい。
72歳になって、17歳のウルリーケに真剣な恋をしたというゲーテだが、83歳の生涯の最後は末期の水ではなく、末期の明かりを求めた。
ゲーテが亡くなったとされるのは、午後11時30分である。
功なし名なりえ長寿をも全うしたゲーテを持ってしてである。
なんと申してよいか私にはわからない。
もっと光を。
私もつぶやいてみる。
公衆便所の中、電灯煌々、天光差込み、黒光る禿頭。
もっとかみを。