数奇屋(すきや)と名づけられた白い椿が咲いている。
紅侘助(わびすけ)と名づけられた赤い椿が咲いている。
数奇屋は、茶室のことをあらわす。
原義は「好き家」だという。
それはまた、「空き家」でもあるという。
侘助は、文字通り侘びの好きだという。
贅でなく飾でなく饗でなく、素にして富、寂にして応。
簡素純潔を重んじる茶人に愛された花々だ。
岡倉天心さんの言うところによれば、茶道は道教と通づる処多々だという。
つまりそれは、
「浮世をかかるものとあきらめて、この憂き世の中にも美を見出そうと努める」
ことであり、
「精進思慮することによって、自性了解(じしょうりょうげ)の極致に達しようとする」
ところにあるという。
ひとはそれぞれにそれぞれが、数奇な運命を辿る者だと思う。
椿はポロリと首が落ちるからと、歓迎されない向きもある。
しかし、あえてその生態に潔さを見出せる花でもある。
じっとみていると、わたしもおもう、此花、好きや。