妄執の雲晴れやらぬ朧夜の恋に迷いし我が心
-長唄「鷺娘」より-
表現の世界というものは、つくりてとうけてとの間合いにおいて成立するある種の虚構との一期一会でもあるらしい。
でも、その虚構は、無意識の現実の実感を反映しているようでもある。
「みなまでいわんでよろしいがな。」という部分がかならずあって、それが艶やかさと豊穣と深遠さを醸し、その時々における思慮を導くようだ。
幾重もの時間という風雪に耐え、生きながらえてきたものには、万感に資する何かがある。
「それをいっちゃあおしめえよ」という野暮はないのである。