南無煩悩大菩薩

今日是好日也

ティー・ピー・ピーなるもの。

2013-07-18 | 古今北東西南の切抜
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参加を決めた日本はこれからタフな交渉はじまりそうなのは解かるが、いろんな立場の人が言っている「国益」というものがなんであり、どこに収束させるつもりなのかがどうもよくわからない。

そんなことを思っていたら、アメリカの経済学者でノーベル賞も受賞しているジョセフ・スティグリッツ氏の興味深い発言に出会った。

以下抜粋してみるが、少々長いので、興味のない人はTPP(The Pool Picnic)でプールに行ってもらってかまわない。

「世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉ドーハラウンドが空中分解したのは、米国が国内の農業補助金の廃止を頑なに拒否したためだった。開発途上国の国民の70%は、農業に依存して生活している。従って開発問題を扱う交渉ならば、本来、先進国側の補助金廃止は絶対必要な条件である。しかし、米国の姿勢は信じがたいものだった。米国が2万5000戸にも満たない裕福な綿花生産者に補助金を支給していることについて、WTOは既に違法との判断を下していた。これに対して米国は、この件を提訴したブラジルに資金援助を約束し、問題をそれ以上追及しないよう抑えたのだ。その結果、米国の裕福な農家は保護を受け続け、綿花の価格は抑えられ、安値に苦しむサハラ以南のアフリカやインドの無数の貧しい綿農家は見捨てられた。こうした歴史を踏まえてみると、米国と欧州、そして米国と太平洋諸国との域内自由貿易交渉の目的が、真の自由貿易体制の確立ではないことは明らかだと思われる。本当の目的は、欧米の貿易政策を長く支配してきた特殊な権益を守るための管理された貿易体制を作ることにある(一般的なポイントとして、貿易協定は通常、通商権益をほかの価値より優先する。つまり、健康な生活を送る権利、環境保護といった価値より優先しがちである)。交渉に参加する国にはぜひ、留意しておいてほしい基本原則が複数ある。第一は、どのような貿易交渉であれ、その合意内容は対称的でなければならない(例えばTPPにおいて米国が日本のコメへの補助金の廃止を求めるとしたら、米国も米だけでなく-米国での米はそれほど重要な農産物ではない-他の農産物に対する国内補助金の廃止を提案しなければならない)。第二に、貿易協定は、大きな国益よりも通商上の権益を優先させるものであってはならない(例えば米国の製薬業界も、米通商代表部(USTR)に対して大きな影響力を持っており、ジェネリック医薬品を使いにくくする不均質な知財制度を他国に押しつけることに成功した。これは人命よりも利益を優先しているということだ)。第三に、交渉の透明性を確保する必要がある(例えば、USTRはこれまでも、米連邦議員にさえ、交渉上の立場を明かそうとしなかったように、透明性をなくすことに懸命になっている)。普通の市民が少なくとも業界の圧力団体と同じ程度、重視され、公共の利益を第一に考える真の自由貿易体制が創出されるのであれば、その交渉の結果は経済を促進し、社会福祉を向上させると楽観的になることも出来よう。しかし、現実に存在するのは企業利益を第一に考える管理貿易体制であり、非民主的で透明性に欠ける交渉プロセスである。これから始まる交渉の産物が、米国の一般市民のためになる可能性は低い。ほかの国の一般国民にとって、見通しはさらに暗いと言わざるを得ない。-ジョセフ・スティグリッツ Joseph E. Stiglitz /Project Syndicate 日経ビジネス2013.7.15号-」
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