光格子時計は、特定の周波数の光を吸収するという原子の性質を利用した時計であり、その精度向上に適した特徴を有するストロンチウム原子などを用いて実現される時計です。セシウム原子を用いる従来の時計の100倍以上の精度で、300億年に1秒ほどの誤差しか生じないとのことです。
レーザー光(注:この波長は"魔法波長"と呼ばれるものに設定)で作った格子状の微小な容器(光格子)にストロンチウムなどの原子を閉じ込め、それぞれに特定周波数のレーザ光を照射し原子が吸収する周波数を測定することにより、精密な時間を導き出すようです。
高精度なことから、これまで不可能であった以下のような応用が可能になると言われており、注目が集まりつつあります。
【高精度の時刻標準】GPSなどにおける高精度な時刻同期システムの実現。
【一般相対性理論の検証】重力による時間遅れの精密測定によるアインシュタイン理論の検証。
【地球物理学】地殻変動や火山活動の監視、重力場の精密測定など。
【測地学】地球の形状や重力場の精密な測定。
光格子時計は、2001年に東京大学の香取秀俊教授(当時助教授)によって、基本原理が提唱され、2003年には同教授の研究グループが世界で初めて光格子時計の開発に成功したようです。その後、ストロンチウム原子を用いた光格子時計の開発が進み、高精度化、小型化、可搬化が進められているようです。
なお、香取教授は、2022年、「シリコンバレーのノーベル賞」とも呼ばれる米国の「ブレイクスルー賞」の基礎物理学分野の受賞者に選ばれており、最近では、ノーベル賞候補にも挙げられているようです。時間の「秒」の再定義(注:従来はセシウム原子の性質に基づき定義されている)にもつながる可能性があるようで、注目されます。
参考サイト
"時計の概念を巻き直す「光格子時計」正確な時計の先に"、
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/f_00063.html(東京大学、2015.2,10公開)