毎日がちょっとぼうけん

日本に戻り、晴耕雨読の日々を綴ります

原発事故・大震災と中国の若者   2011年5月1日(日)  No.122

2011-05-01 21:05:43 | 中国事情

 先日、大阪の知人から「中国の学生は原発のことどう考えているの?」と尋ねられた。
それは私も知りたくて、この間、何人かにさりげなく聞いたりしてみたことだ。しかし、彼らは政治に少しでも関連しそうなことへの発言は非常に慎重である。さらに、日本人老師という立場の私に対する遠慮が邪魔してよけいに口が重い。それでも、少しだけ、自分の意見ではなく世間の評判という形で話してくれたことがある。
中国の学生とはくくれない。江西省のある大学の日本語学科に在籍する学生たちの感触だ。

 原発事故と地震・津波への反応ははっきり明暗を分けている。
地震・津波の被害者には圧倒的な同情を寄せている。テレビやパソコンの映像をみんな見ている。とてつもない規模の大災害であることはみんな知っている。3年前の四川省汶川の地震は学生達が浪人か高校生の時のことだ。記憶は生々しい。親戚や知り合いの家族が犠牲になった体験を持つ子もいる。
多くの中国メディアが、東日本の被災者の行動を「我慢強く秩序正しい」、日本人を「精神的に強い民族」と積極的に讃えたこともあって、被災者のがんばりには100%賞賛の声をあげている。インターネットで、被災者のエピソードはたくさん伝えられているので、年老いた人が歩けない老母をバギーに乗せて、必死で高台をめざしたこと、昨日まで共に暮らしてきたお兄さんを失いお母さんの太ももにしがみついて、「お兄ちゃんは?どこに行ったの」と泣く女の子のこと、鉄道沿いに何日も歩いて娘を捜し、とうとう出会えて、号泣した60代のお父さんのこと、e.t.c.… 作文にたくさん書いている。

 しかし、原発事故と政府の対応には、私に遠慮しながらも批判的だ。
このテーマは教室では話題にもできないので、個人的に話したのを拾うと次のようなことだ。
「山東省では、風評被害にあって野菜が売れなくなった農民が自殺しました。」
「中国各地の放射能値を測定したら、1箇所を除き、全てプラス反応が出たそうです。」
「政府が中国国民に、いくら基準値以下だと言っても、国民の不安は解消されません。買い控えは国民の自衛手段です。」
「日本の政府は事故のレベルをじりじり、後から上げましたね。あれはひどいですね。初めから本当のことを伝えるべきでした。みんな日本政府は嘘つきだと言っています。」
「日本の原発事故は、中国を始め、世界に迷惑をかけています。日本だけのことではありません。」
「日本に留学するため、数年間必死で頑張ってきたのが、水の泡です。家族はもう絶対許してくれません。私も原発事故の犠牲者です。」
  ・・・・・・。
 風評に乗りやすい傾向は感じるものの、日本政府批判などはその通りだし、原発事故の影響についても、日本の責任について遠慮がちではあるが、はっきり述べている。尖閣諸島問題でも日本語学科の学生達は、微妙な立場に立たされたが、今回の原発事故は、さらに彼らの将来にマイナスの影響を与えることが懸念される。日本語を学ぶ学生にとって、中日関係が良好であり、日本が元気でなければ困るのだ。彼らは中日友好の架け橋になりたいのに、その橋を架ける可能性がとざされてはどうしようもない。
 改めて、この原発事故は隣国中国を始め世界にとてつもない悪影響を及ぼしていると言える。

 今日、1年生を連れて遊びに来た3年生の楼さん・郭さんも、関係者だ。郭さんも日本留学を目指しているが、やはり家族に日本行きは止めるように言われている。そのストレスの所為か、この頃郭さんは急に物忘れが激しくなってきたと、楼さんは言う。数日前は、楼さんが頼んだ昼ご飯を買い忘れて「もう別れる!」と大げんかしたそうだ。今日、私の前で「郭さんは、留学のことでストレスが溜まっているのに、私はそのことを考えず心が小さかったです。」と謝る楼さんに、郭さんは「やっぱり、食べ物を忘れたことは良くなかった。ぼくが悪かった。」とちょっとズレた言葉を返していた…。

 中国の親だけではなく、どこの国の親でも、自分の子を安全・安心な環境で生活させたいと思うのは当然だ。日本留学を止めるように言う家族の言葉は、日本人である私にはとても寂しいが仕方がないと思う。(でも、関西とか九州、沖縄ならいいんじゃないの?)と心でボソボソつぶやくけど、外国から見たら福島も大阪も沖縄も同じなんだろうな。

 (写真は廬山登山の途中。歩幅の合わない要らん石段のせいで登り辛いの何の…。この写真の段はまだマシ)

 

コメント
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