毎日がちょっとぼうけん

日本に戻り、晴耕雨読の日々を綴ります

「文楽を観て泣いた日」 2014年2月20日(木)No.851

2014-02-20 20:35:29 | 日記

気風のよかった故スエミ姐さんの親衛隊みたいなのが大阪にはいくつも現存し、

私もその一つに寄してもらっている。

便宜上「太子GIRLS」とでもしておこう。

「太子GIRLS」は、元来、喋ることと遊ぶことが本職の面々で、

浪速の伝統芸能「文楽」が好きかと聞かれたら、(暇だからたまに文楽でも観よう)

という程度だと言えよう。

それが、橋下大阪市長の文楽への補助金カット方針を聞くに及んで、

「ええ?ユネスコの無形文化遺産の文楽に対してそーゆー扱い!?

大阪をカジノ賭博と文化不毛の町にする気かい??」と驚き、呆れて、

とにかく一月中に人形浄瑠璃「文楽」を観に行こうと決めた。

1月24日午後、スエミ姐さんのお骨が収められている一心寺にお参りに行き、

そのまま徒歩で国立文楽劇場に向かった。

その日午後の演目は、

「面売り(めんうり)」

「近頃河原の達引(ちかごろかわらのたつひき)」四条河原の段/堀川猿回しの段

「壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)」阿古屋琴責の段

正直、「面売り」でちょっと寝た。

しかし、次の「近頃・・・」の堀川猿回しの段で、私はすっかり目が覚めて、

人形遣い・語り・三味線の三位一体の技に心を奪われ、

(まるでロックコンサートみたいやなあ)と思った。

で、最後の演目だ。

これが凄い。あまりにも凄い。

この写真は、阿古屋という遊女に、恋人である平家の落ち武者景清の行方を吐かせようと、

源氏の役人畠山重忠が責めをする場面だが、

責めの方法として楽器を演奏させるのである。

ウソをついているか否かが、演奏の乱れなどで判るからだそうだ。

琴、三味線、胡弓を次々と弾かせ、阿古屋の三曲とも一糸乱れぬ演奏に

判官畠山重忠が無罪を言い渡すというストーリーで、

ま、単純と言えばそうなんだけど、これは江戸時代、上方庶民の娯楽だったのであるから

(文楽の歴史は16世紀に遡るが)、そんなに複雑な物語である必要はない。

見せ場は、演奏シーンである。

人形である阿古屋が本当に演奏しているかのごとき人形遣いの技!

で、一般的には人形遣いは顔を見せているのが一人、あと二人は黒子であるが、

この阿古屋だけは、三人とも顔を出している。それだけの芸を見せているのである。

あまりの音の良さにボーっとなり、目から勝手に涙が……。

後からチラシを見ると、まず、しょっぱなの三味線を「ベン」と鳴らしたのは、

人間国宝の鶴澤寛治師匠だった。

イヤ、魂を吸い取るような演奏とはこのことなり。

これは「文楽ライブ」と言ってよい。

しかも、鳥肌が立つ演奏と、義太夫(唄みたいな語り)、人形遣いの鬼気迫る技の饗宴である。

 

この「壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)」阿古屋琴責の段は、

必ずもう一度、観たいものだ。

否、一度と言わず何度でも。

皆さん、大阪日本橋の国立文楽劇場に一度行ってみてください。

鳥肌演技が待っていますよ。できたら、今年度内(3月末まで)にね。

 

資料:朝日新聞デジタル2014年1月15日                                       

大阪市は今年度の補助金について、

国立文楽劇場の入場者数が年度内10万5千人以上ならば満額、

それ未満なら入場者1人につき約1930円ずつ削減、

9万人以下ならゼロという指針を示していた。

1月15日現在の合計入場者数は約8万8千人。

 

 

 

 

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