毎日がちょっとぼうけん

日本に戻り、晴耕雨読の日々を綴ります

「領域を越境されることに私は寛大じゃない」 2014年2月26日(水)No.855

2014-02-26 14:15:31 | 日記

 

昨年(2013年)、春節休み中に昌北の財大宿舎に戻ると、

財大購物広場(スーパー)には、しなびた蜜柑が少し転がっているだけで、

新鮮な野菜は全くなかった。

仕方がないので、干しシイタケを水でもどしたりして細々と暮らしていたら、

劉思婷さんが故郷樟樹から

香菜や小白菜や揚げ餅やらてんこ盛りカバンに入れて持ってきてくれた。

 

今年は、何と、大根、ニンジン、白菜、蓮根など、たくさんの重い野菜を

江西科技師範大のヤギ先生が、まるでカサコ地蔵様のように運んでくださった。

ありがたや。

そのときの大根が、葉だけになってまだ元気である(写真)。

 

しかし、今年、財大購物広場の傍のもう一つのスーパー「全家百貨」に行くと、

あら?野菜や果物、肉など、ほぼ普段通りに売ってるじゃありませんか。

去年は財購にしか行かなかったのだが、おそらく全家百貨では何でも売っていたのだろう。

(何故私は、昨年、全家百貨に足を向けなかったのか)と自問した。

 

で、領域の話になる。

当時、私は、あることで全家百貨の店員に腹を立てていたのだ。

ある日、私は野菜など少量の商品を買うためにレジに差し出し、

「大きい袋を1枚ください」と言った。

大は小を兼ねる。大きいのを1つ買っておいて、

これから何度もその袋を再利用しようと考えたからである。

しかし、店員は品物を指さし、

「アンタはちょっとしか買わないくせに(と聞こえた)、小さい袋でいいんだよ」

と、私が拙い普通語で「我要大袋子!」と繰り返すのを無視して、

小さい袋しか売ってくれなかった。

後に、学生たちにこの話をしたら、学生は必ず、

「その店員さんは小さい袋が2角、大きいのが4角なので、

親切な気持ちで小さいのにしたのでしょう」

と言う。そうかも知れない。しかし、その判断は間違っている。

大か小かを選ぶ権利は、お金を払う客の私にある。

客は客の算段があるのであり、店員がそれを覆す権利はない(大袋がないならともかく)。

明らかに越権行為であり、自分の領域を侵されたと感じた私は、

二度と全家百貨には行くまいと決めた。

(その割に一年経ったら、すっかり忘れているんですケド(笑))

 

領域を勝手に乗り越えてこられたと感じることは、他にもある。

以前に書いたが、他のクラスの先生が課題を学生に出して、

「その課題はブルーはーと先生に見てもらってもいいです。

先生は日本人だから日本語が上手ですから~」

と学生に言い、先生自身はそれ以前もその後も私には何の打診もしてこなかったこと、

また、学生たちが気楽に、

「先生、これは○○先生のクラスのスピーチ原稿なんですけど、チェックしてくださ~い」

と、持ってきたり、逆に私が出した課題を、

「もう、△先生に見てもらいましたから~」

と言ったりするとき、私の頭は活火山状態になる。

 

ずっと以前、アメリカの大学で学生だったとき、こんな体験をした。

ライティングクラスのレイトン先生が、名詞節の文をいくつか作ることを宿題に出したが、

その名詞節というのが、いまいちスッキリ分からなかった私は、

レイトンを一生懸命探した。2日間ウロウロしたが運悪く見つけることができなかった。

ちょうどその時、別のクラスのC先生を見かけた私は、仕方なく、

名詞節についての解説を頼んだ。

「お門違いなのは存じていますが、あいにく、レイトンを見つけることができなくて~~」

と、事情を説明して。

C先生は「他にも名詞節について尋ねてきた学生が何人かいたよ。どれどれ…。」

と言って説明してくれた。

私はホッとして、それで終わったと思っていた、が、

しかし、次のライティングの授業後、

「君たち、僕ではなくてC先生に名詞節について質問したんだね。

C先生が僕に、メチャクチャ怒ってきたよ」

とレイトンが言ったとき、全てを察したのだった。

自分が義務と責任を果たすべき範囲、自分の裁量で判断するのが当然な範囲があり、

それを自分の領域として人は暮らしている。

一般に、アメリカ人は、多くの日本人より、領域を侵害されることに非常に敏感である。

それもまた、自分の属する集団の思考傾向や習慣で異なってくる。

私が領域を侵されたと感じることの多くは、

ここの人々には、そう感じられない。

何故なら、領域そのものが実に曖昧なのだ。

しかし、人々がバスにきちんと並ばないことよりも、

バスが時間通りに来ないことよりも、

自分の領域と思うところを乗り越えてこられることに、私は慣れない。

おそらく、これだけは今後もずっと慣れないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする